先週110円台半ばまで戻ったドル円は週末にかけて再び109円台前半までドル安が進みました。中国がこれまでの友好的な態度を一変させ、米国批判を繰り返したことで、米中通商協議の合意が遅れ、長期化するとの見方からリスク回避の流れが広がり、株価の下落と長期金利の低下から円高が進んだものです。
今週土曜日からは、先日中国が打ち出した米国への報復措置である、米国製品600億ドル(約6兆6000億円)に対して25%の関税が発動されます。米国もこれに対して制裁関税第4弾の検討も始めており、現在の歩み寄りの見られない状況が続けば、こちらも6月末に発動される可能性があります。まさに関税引き上げ合戦となり、貿易戦争といえる状況です。
IMFは先週23日、米中貿易戦争が激化すれば世界の経済成長率が0.3%下振れするとの試算を発表しました。IMFは先月、世界経済見通しを下方修正したばかりです。今回の試算は、米国が中国企業ファーウェイ問題を取引材料にするなど、米中の対立が続けば世界成長率の好不況の境目とされる「3%」ぎりぎりまで落ち込むリスクがあると指摘しています。報告書では「世界経済の回復シナリオを危険にさらしかねない」と警鐘を鳴らしています。
先週末に来日したトランプ大統領は本日、安倍首相との首脳会談に臨むことになっています。貿易問題は「7月の選挙後まで待つ」と述べたことから、本日の議題には含まれないと思いますが、ここにきて新たな懸念材料が出てきました。米商務省が、「補助金相殺関税」の計算手法を見直すと発表したことです。米商務省が、どの程度の補助金を受けているかを計算する際、政府の為替介入による通貨切り下げを考慮に入れることを検討するとしています。日経新聞では「日本は長く為替介入を実施していないが、将来の介入余地を狭める可能性がある」と論じています。
ドル円は米中通商協議の先行きに「暗雲が」立ち込めてきたことで、円買いが強まり、13日には109円01銭まで円高が進みました。その後も再度109円割れをテストしましたが、現時点ではその水準は底堅く、109円割れは回避できています。 今後のドル円ですが、全ては「米中貿易問題の行方次第」と言ってもいい状況です。心配なのは中国側からの批判のボルテージが上がっていることです。25日には、中国銀行保険監督管理委員会の郭樹清主席が、米国による関税引き上げはたとえ最大限に引き上げたとしても、中国経済には「非常に限定的な」影響しか及ぼさない上に、米国も同程度に傷つくだろう」と述べています。(ブルームバーグ)軟調な地合いが続き、先週も1.1台割れを試したユーロドルでしたが、結局1.1を割り込むことなく、先週末には1.12台まで押し戻されて越週しましたNY市場が本日休場だということもあり、ポジション調整の買い戻しかと思います。ユーロドルについては、まだ戻りは限定的と予想しています。
今週は週末に、中国のPMIが発表されます。中国景気はようやく底入れの兆しを見せてはいますが、先月の経済指標では再び軟調な気配も漂っています。米中貿易問題への懸念が高まる中、PMIには注目が集まりそうです。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
