米中貿易問題の手詰まり感を背景にドルの上値が重い展開が続いていましたが、それでもドル円はよく健闘して109円台割れを3回ほど回避する動きを見せていましたが、先週末の東京市場でついに109円を割り込み、NY市場では108円28銭までドル安が進みました。週明けの東京市場でも108円10銭までドル安が進み、108円台割れも時間の問題といった状況になってきました。
引き金を引いたのはまたトランプ大統領の武器である「関税引き上げ」でした。トランプ氏はツイッター投稿で、「メキシコが米国への不法移民流入を止めるまで同国からの輸入品に5%の関税を課す」と述べ、関税は6月10日に発効し、不法移民の問題が解決しなければ最高25%まで引き上げる可能性があると表明しました。トランプ大統領は自身を「タリフマン」(関税男)と称し、米国に対する貿易黒字国への攻撃の手を緩めません。
投資家は、このような米国の「自国第一主義」が続く限り貿易問題が長期化するとの連想からリスク回避の姿勢を強め、安全通貨の円を買い、株売り・債券買いを活発化させています。その結果、円は対ドルだけではなく、ユーロやポンドに対しても強含んでおり、円を除く他の主要通貨が対ドルで弱含んでいることから、「円独歩高」の展開になっています。また米長期金利の低下傾向も円買いをサポートしており、米長期金利は今週中にも「節目の2%」を割り込む公算が高いと見られます。
トランプ政権の貿易戦争に対して、中国やEUも対抗意識を強め、このままでは今月末の「G20」で、仮に米中首脳会談が実現したとしても「合意」には程遠く、物別れになる可能性もあります。こうなると、好調さを維持している米経済にも影響が出てくることも予想されます。そして、その先にあるのがFRBによる金融緩和ということになります。本日時点でのフェデラル・ファンド(FF)先物実効レートでは、7月の会合までには75%の確率で利下げが行われ、10月までの会合では86%まで利下げがあると予想しています。クラリダFRB副議長も先週行われた講演で、条件つきながら利下げの可能性があることに言及しています。
ドル円はなかなか浮上のきっかけを掴めません。日足だけではなく、週足でもドル円が下落基調にあることが鮮明になってきました。何かのきっかけでドルが反発することがないとは言えませんが、今週もドルの底値を探る展開が続くと予想するのが順当でしょう。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
