先週のドル円は米利下げ観測の急速な高まりから、108円を割り込み、107円80−85銭のレベルを4度ほど試しましたが、その前の週まで軟調だった米株式市場が、利下げを好感し連日高騰したことで、108円台半ばまで押し戻される展開でした。108円50銭近辺で迎えた5月の米雇用統計では、雇用者数が予想を大きく下回ったことで、利下げ観測が一段と高まり、米長期金利が1年9カ月ぶりとなる2.05%台まで低下しています。市場では6月の会合で、利下げの地ならしをおこない、7月会合で0.25%の利下げに踏み切るといったストーリーがメインになりつつあります。
個人的には、それまでの動きは、市場がやや前のめりになっているといった印象を持っていましたが、今回の雇用統計を経過し、もはや利下げ路線は動かず、あとは利下げが今年1回なのかあるいは2回になるのかといった段階になってきたと考えています。雇用者数の下振れは5月分のみならず、3月、4月分も大きく下方修正されています。一方で失業率は過去最低水準の3.6%を維持し、さらに平均時給も前年比で3.1%と高水準になっており、雇用者数だけを見て米景気が「リセッション入り」の可能性が高まったと考えるのは早計かもしれません。
ただ、それでもトランプ政権の「アメリカ・ファースト」が国内景気に微妙な変化を与えてきたことは想像できます。今後米中貿易戦争がさらに深刻さを増すようだと、労働市場にもジワリとその影響が押し寄せ、好調な賃金や失業率にも変化がでてくるかもしれません。先週土曜日から福岡で行われた「G20」でも、貿易戦争の影響を懸念する声明分が採択されています。声明文では、世界経済は「成長が低位で、リスクは依然として下方向に傾いている」とし、「貿易・地政学的緊張の高まりなどのリスクに引き続き対処し、さらなる行動を起こす用意がある」と宣言されています。「G20」の形骸化が指摘されて久しいですが、今回も米中貿易戦争に一定の歯止めをかける行動はなく、日本としても「直ちにやらなければならぬという情勢にはない」と麻生財務財大臣は述べています。
米中通商協議の再開について「G20」に出席したムニューシン財務長官は「予定は今のところたっていない」と述べています。今月末には「G20」サミットが大阪で開催され、ここでの米中首脳会談に事態打開の期待が集まりますが、現時点では合意に向かう可能性は決して高くはありません。今週も引き続き一進一退の展開が予想され、貿易戦争に関する報道と、米長期金利の推移に目配せが必要です。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
