先週のドル円はほぼ108円台前半から半ばでの狭いレンジで推移し、値動きはなかったと言えます。FRBによる利下げ観測が高まり、米長期金利が一時は2.1%を割り込む水準まで低下し、これがドル円の上値を抑えました。一方で、利下げ観測の高まりから株式市場では金利低下を好感し、主要指数はともに大幅高となり、これがドルの下落を抑える結果となって、上へも下へも動けない状況になっています。ただ今週はそのドル円もある程度の値動きが期待されます。明日から始まるFOMCと来週には大阪で、世界中の投資家が注目する「G20」が開催されるなど、重要イベントが相場を動かすと見られるからです。
今回のFOMCでは利下げはなく、米中貿易摩擦を含めた外的リスクの分析を中心に、7月利下げに向けた「地ならし」になるだろうと予想しています。一部には利下げを予想する向きもありますが、先週末に発表された小売売上高や鉱工業生産のように、底堅さを維持している経済指標も多く、直ぐに行動を起さなければならない状況ではありません。ただ一方で、5月の雇用統計に見られたように、景気鈍化を示唆する経済指標も見られることから、7月利下げへの準備といったところでしょう。パウエル議長が7月利下げを示唆する発言を行えば、教科書的にはドルが売られることになりますが、市場は利下げをかなり織り込んでいるため、その内容が連続的な利下げにつながらないような発言であれば、ドルがそれほど下げないことも予想されます。
市場が徐々に織り込みつつある「年内利下げ2回から3回」という想定も、今後の米中通商協議の成り行き次第では大きく修正されることがないとは言えません。G20での米中首脳会談を巡っては、トランプ大統領が、首脳会談に応じない場合は直ちに3000億ドル(約32兆5500億円)相当の中国製品に25%か、それ以上の関税をかけると明言しています。この状況の中、習近平中国主席が会談に応じない選択肢はないと考えていますが、それでも仮に首脳会談が開催されたとしても、ロス商務長官が米紙とのインタビューで答えたように、「G20では、よくても前向きに協議を再開するという合意にとどまりそうだ」と思われます。すでにボールは中国側に投げられており、中国はそのボールをどのように「投げ返すのか」、あるいは「投げ返さないのか」、今年前半最大のヤマ場といっても言いと思います。
ドル円は米長期金利が下げている割には底堅い動きが続いており、健闘していると言えます。ただそれでも、現時点では依然として下値リスク、つまり、ドルが下落するリスクの方が高いと見ています。これまでに107円台後半を何度か試したものの、全て押し戻されており、この水準が強いサポートになってはいますが、それだけにこのレベルを完全に下抜けした場合には、ドルが大きく下落する可能性があるのではないかと思われます。ドル円が109円台を回復し、再び110円に向かうことも全くないとは思いませんがそれにはよほどのサプライズがあり、ドルショートが切らされる事態にならないと考えにくいと思います。
注意したいのは、ユーロドルの動きです。ユーロドルは先週1.13台半ばまでユーロ高が進みましたが、上値は重く、再び1.12を窺う水準まで戻ってきました。今後何かの理由で、ユーロドルが1.1割れを試すような展開になるようなら、ドル円も109円台を回復する可能性があるかもしれません。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
