急激な円高が進んでいます。ドル円は週明け月曜日には106円を割り込み、105円79銭(8月5日13時時点)まで円高が進んでいます。先週の31日のFOMCで25ベーシスの利下げを決め、その後パウエル議長が「今回の利下げは今後の連続的な利下げの始まりではない」と述べ、市場の利下げに対する前のめりの観測に警鐘を鳴らしたような発言で、109円30銭台までドルが買い戻されましたが、そこを頂点にドル安が急速に進んできました。きっかけは、トランプ大統領による中国製品に3000億ドル(約31兆8000億円)に対して9月1日から10%の制裁関税を課すとの突然のツイートでした。休戦状態だった米中貿易戦争が再燃し、さらに深刻な状況になったことで、金融・商品市場はリスク回避の動きに走り、これが米長期金利の低下を招き、急激な円高につながっています。
ドル円は106円を割り込んだことで、次の下値のメドは105円を含め、今年の正月3日の「フラッシュ・クラッシュ」で記録した104円台後半ということになります。これまでのドル円の動きと異なり、動きも急激になっており、値幅も拡大する傾向にあります。そう考えると、105円近辺が当面の節目とはいい切れません。1日で1円以上の円高が進む可能性もある足元の相場展開では、100円から102円程度まで一気に円高が進むこともないとは言えません。
そこで気になるのが、日銀の動きです。先月の会合では政策変更はなかったものの、6月会合辺りからは追加緩和の環境が整いつつあるとの認識がエコノミストの間では高まってきました。FRBが利下げを行い、ECBも次回会合では利下げが見込まれています。それ以外でも、オーストラリ準備銀行は6月に続いて7月の会合でも利下げを行い、その後の同中銀総裁の講演内容では、さらなる利下げも示唆しています。このままでは金融政策スタンスの差からも円高に振れやすくなり、9月の日銀会合では何らかの緩和策を発表するといった見方が高まってきました。もっとも105円を割り込んだからといって、日銀が動くかどうかは不透明です。さらに円高が進み、例えば100円割れのように、急激な円高が進んだ時のために政策変更を温存することも考えられます。また、トランプ政権に「円安誘導を行っている」と受け止められるリスクもあり、そう簡単には動けないといった事情もありそうです。ただ一方で、急激な円高が加速すると金融政策を発動しても止まらないことは、2011年のあの75円台まで円高が進んだ際に経験しています。タイミングを逸すると効果もなくなり、投機筋の餌食になる危険性もあります。日銀がどのような判断を下すか、注目されます。さらに、急激な円高は企業業績の悪化につながり、10月からの消費税率引き上げにも影響を与えることがあるかもしれません。もっとも消費税率引き上げについては、時間的な問題もあり、変更すれば混乱も予想され、景気対策の導入で対応することが予想されます。
市場は株価の大幅下落と共に「円高モード」に入ってきました。105円を割り込めば一旦は反発することもあるかもしれませんが、それでも上値の戻りは限定的と言わざるを得ません。ドル買いには慎重な対応が求められます。夏の暑さは気温だけではなく、為替市場にも及んできました。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
