先週のドル円は、値幅はそれほどではなかったものの、値動きが早く乱高下した週でした。米2年債利回りが、10年債利回りを上回る「逆イールドカーブ」が発生し、米景気の先行きに黄信号が灯ったことで、NYダウが1日で800ドルも下げ、今年最大の下げ幅を記録しました。それでもドル円は105円台半ばを割り込まず、むしろ金利低下の割には「大健闘」だったと言えなくもありません。
ドル円の足元の基本レンジは105円〜107円といったところですが、ドルの下落リスクが高いことは衆目の一致するところです。それでも105円台半ばから下方ではドル買い意欲が強いと見られます。過激化する香港民主化運動への中国軍による軍事行動の可能性、中国人民元のさらなる切り下げリスク、中東イランとの軍事的緊張、あるいはドイツのマイナス成長など、ドルの下落材料には事欠きません。加えて、中国製品に対する10%の関税適用開始は10日ほどに迫っています。関税対象品目が減らされたとは言え、もし実施されれば米国に入って来る多くの中国製品に対して関税が課せられることになります。トランプ大統領はここ1週間から10日ほどの間に、中国の習近平主席と直接電話会談を行うことを表明しており、「中国とはうまく行っている、会話も進んでいる」と述べていることもあり、やや楽観的な見方をすれば、9月1日の期限を前に関税発動が回避される可能性があるかもしれません。 来年の大統領選を前に、全ての政策は「大統領選での勝利」を目的に進められているといっても過言ではありません。そのため、株価の大幅な下落はトランプ氏にとっても、望むところではありません。さらに株価が一段と下げるようだと、「経済政策の失敗」という評価につながり、大統領選には不利に働きます。トランプ氏の恣意的な発言が株価下落の最大要因であることから、発言にもブレイキがかかるかもしれません。
今週の注目材料は何と言っても、ワイオミング州、ジャクソンホールで日本時間23日午後11時に行われるパウエル議長の講演です。カンザス・シティー連銀恒例の経済シンポジュームでパウエル議長が講演することになっています。この中で、FRBの緩和姿勢を明確に示すのではないと予想していますが、もしそうでなかったら、株価が再び大きく下げ、トランプ政権に打撃を与えることになります。ナバロ大統領補佐官は、「年末までに少なくとも0.7%から1.0%引き下げなければならない」と、露骨に追加利下げを求めています。個人的には9月の会合では50ベーシスの利下げもあり得ると予想しています。
ドル円を予測する上ではやはり、米長期金利の行方と株価の動きから目が離せません。特に長期金利は先週末も1.55%台で終わっており、歴史的な低水準が続いています。2016年8月に1.35%台まで低下したことがあると記憶していますが、その水準に向かっているのかどうかが注目されます。今や日本だけではなく、スイスやドイツなど多くの先進国の国債利回りがマイナス圏に沈んでおり、相対的にも投資魅力の高い米国債ですが、やや「債券バブルの気配」も漂っています。米長期金利が1.5%以下で定着するようだと、ドル円も再び105円台前半をテストすることになろうかと思います。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
