米中貿易戦争が泥沼化したことで、ドル円は再び下値を探る展開になってきました。先週最も注目されたジャクソンホールでのパウエル議長の講演は、市場へのインパクトはほとんどなく、利下げは示唆したものの、その利下げがどの程度継続されるかといった点についてのヒントはありませんでした。議長は、むしろ、進行している米中貿易戦争には金融政策に関する先例がなく、金融政策による限界に苦慮していることを打ち明けた格好でした。
米景気に対する見方の違いから、FRB内部でも利下げスタンスは一様ではありません。ジャックソンホールでの経済シンポジュームを主催したカンザスシティー連銀のジョージ総裁は利下げは不要との立場をとり、前回FOMCでの会合でも政策金利据え置きに1票を投じています。またフィラデルフィア連銀のハーカー総裁も、「現時点では行動を起こす必要はない」と述べています。一方でセントルイス連銀総裁のように、次回FOMCでは50bpの利下げ議論が活発になるだろうとの見方を示すメンバーもいます。ただ、今後米中が表明した「関税引き上げ合戦」が実際に行われた場合、その影響は決して小さくはないと見るべきでしょう。特に中国はその影響を大きく受けることになり、中国政府が景気刺激策を行ったとしても、景気後退を避けるのは簡単ではありません。同時に、その影響が米国に波及することも必至でしょう。
週明けのドル円は窓を開けて始まりましたが、その前にすでに105円を割り込み、一時は104円46銭前後までドルが急落しています。急落のスピードがかなり早かったことから、104円70−80銭前後ではストップロスが執行された可能性が高いと思われます。ドル円は、その後105円台で推移し、昼には105円79銭までドル高が進むなど、荒っぽい動きが続いています。
見方を変えれば、米中貿易戦争も行く着く所まで来たとも言えます。中国から米国に輸出されるほぼ全品目に対して課税される可能性が高まり、逆に米国から中国に輸出される製品についてもほぼ同様です。今後は「輸入制限」などの対抗策も考えられますが、関税に関しては来る所まで来たと言えます。今週もドル円は、やはり下値目線で見ておくべきでしょう。上記、関税問題もある程度峠を越したとも言えますが、米中問題は貿易だけに限らず、ロシアも含め、中距離核戦力問題でも緊張が高まっており、加えて日韓問題の悪化やイタリアの政局不安、香港の民主化デモなど、リスクオフがさらに高まる材料に事欠きません。ドル円の底値を探る動きが続きそうです。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
