今週のレンジ予想[毎週月曜日 更新]

今週のレンジ予想
9月9日 〜9月15日
ドル/円
105.00〜108.00
ユーロ/円
115.00〜119.00
豪ドル/円
71.00〜74.00

米中通商協議の日程が定まっておらず、そのためドルの上値が重い展開が続いていましたが、先週木曜日に中国政府が10月に協議を再開すると発表したことで、ドル円は1か月ぶりに107円台前半まで上昇しました。ドル円で円売りが強まったことから、クロス円でも主要通貨に対して円を売る動きが加速し、週末には、これまでの動きとは全く逆の流れが示現した状況で、8月の米雇用統計を迎えました。

雇用統計では、非農業部門雇用者数は予想を下回る13万人で、失業率は3.7%と、こちらは予想と一致。ドル円は30銭ほど売られましたが、平均時給が依然として高水準であったことから、ドル円は106円90銭前後で越週しています。

「逆イールド」が発生し、米景気の先行きに対する慎重な見方が増える中、ISM製造業景況指数や、上記雇用者数のように、景気の鈍化を示す指標が散見される一方、ISM非製造業景況指数や、ADP雇用者数のように、市場予想を上回り、景気の先行き懸念を払拭させるような堅調な指標もあります。このような状況下では、米景気について一方的な判断を下すのは難しく、これまでと同様、まだ先行きは五分五分と見るのかベターです。パウエル議長も先週末にスイスで行われた講演では、「米経済に最も可能性の高い見通しは依然として、緩やかな成長と力強い労働市場に加え、インフレ率が当局の2%目標に近づくという好ましいものだ」と指摘。ただ、「世界的な景気減速や貿易政策を巡る不確実性、持続的な低インフレなどを含む大きなリスクは存在するため、それらに注視していく」と付け加えることを忘れてはいませんでした。そして米景気は少なくとも「リセッション」の兆候はないことを強調しています。このパウエル議長の言葉が、今の米景気を言い表す適切な言葉であろうかと思います。

今週12日のECB理事会を皮切りに、いよいよ注目度が高く、相場にも大きな影響を与えると予想される金融政策会合が開催されます。ECBについては、ドラギ総裁の任期が10月末に迫っていることから、ドラギ氏最後の奉公と受け止められます。10月にも会合はありますが、任期満了が近いため、政策変更には手を付けにくいと見られ、今回のドラギマジックが余計に注目されます。景気減速に加え、ドイツやイタリアの政局不安も材料視されており、今回の会合では何らかの緩和政策の深堀が発表されると見られます。一方FOMCでの利下げはほぼ間違いないと見られます。注目は利下げ幅と、その後どの程度の利下げスタンスを維持するのかといった点です。そして今回は日銀の政策変更にも注目が集まります。仮に、これまで通り「必要なら、ちゅうちょなく適切に行動する」といった文言を繰り返すだけでは、円高がさらに進む可能性があるからです。今回は、日銀も「動く」と予想します。

ドル円は107円台を回復したことで、104円台がますます遠くなって来ました。出口の見えない米中貿易戦争、イタリアやドイツの政治的混乱、さらに混迷を続けるイギリスのジョンソン政権など、ドル売り材料が大きく見られる中、104円台どころか、足元では106円台を割り込むとドル買い需要が強まる状況になっています。このままドルが110円方向に向かう可能性は低いと見ますが、一方でドルの下値が徐々に底堅くなっているのも事実です。 今後のドル円の方向性を見る上で、FRBの利下げスタンスの度合いと、ユーロドルの方向性などをしっかりと見極める必要があろうかと思います。

今週の注目材料

  • 9/9(月)
    日 4−6月GDP(改定値)
    日 8月景気ウオッチャー調査
    日 7月貿易収支
    独 独7月貿易収支
    独 独7月経常収支
    英 英7月鉱工業生産
    英 英7月貿易収支
    米 7月消費者信用残高
  • 9/10(火)
    中 中国8月消費者物価指数
    中 中国8月生産者物価指数
    英 英失業率(5月−7月)
    加 カナダ8月住宅着工件数
    加 カナダ7月建設許可件数
  • 9/11(水)
    豪 豪9月ウエストパック消費者信頼感指数
    米 8月生産者物価指数
  • 9/12(木)
    独 独8月消費者物価指数(改定値)
    欧 ユーロ圏7月鉱工業生産
    欧 ECB政策金利発表
    欧 ドラギ・ECB総裁記者会見
    欧 国際エネルギー機関(IEA)月報
    米 8月消費者物価指数
    米 新規失業保険申請件数
    米 8月財政収支
  • 9/13(金)
    日 8月鉱工業生産(確定値)
    米 8月輸入物価指数
    米 8月小売売上高
    米 9月ミシガン大学消費者マインド(速報値)
  • 9/14(土)
  • 9/15(日)
 
※尚、このサイトは情報提供を目的としており、投資勧誘を目的とするものではございません。投資の最終判断はご自身でなさるようお願い致します。本サイトの情報により皆様に生じたいかなる損害については弊社及び執筆者には一切の責任を負いかねます。

外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和

邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。

・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。

※尚、このサイトは情報提供を目的としており、投資勧誘を目的とするものではございません。投資の最終判断はご自身でなさるようお願い致します。本サイトの情報により皆様に生じたいかなる損害については弊社及び執筆者には一切の責任を負いかねます。

外為オンラインのシニアアナリスト 
佐藤正和

邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。