中東情勢が一段と不透明になってきました。サウジの石油施設が大規模な攻撃を受け、サウジアラムコのおよそ半分の施設が被害を受けたことで、昨日の原油先物市場ではWTIや北海原油、中東ドバイ原油の価格が急騰しました。当初はイエメンからの攻撃としていたものが、調査が進むに連れイランが関与した可能性が高まってきました。現時点では、サウジや米国の報復攻撃の可能性は低く、この混乱がさらに拡大する状況ではないと思われますが、米国とイランとの関係がやや改善傾向を見せ始めていた矢先だけに、再び元の対立関係に戻りそうです。
それにしてもドル円は底堅い動きを見せています。上記事件が勃発してからは最初のマーケットであった昨日のアジア市場では、安全通貨の円が買われ、ドル円は107円台半ばまで下落しました。ここまでは予想通りでしたが、その後NY市場にかけては再びドルが買われ108円台を回復しています。連休明けの東京市場でもこの流れが続き、ドル円は108円36銭前後まで上昇し、先月1日にトランプ大統領が突然中国への関税引き上げを発表する前の水準まで戻っています。世界の資金が「債券から株式へシフト」したことで、金利が上昇し、これがドル円を支える構図になっています。とりわけ、上値の重かった日本株が連日上昇していることで、投資家のリスク許容度が増し、円売りにつながっていると見られます。
今後もこのような状況が継続されるのかどうかは、今週の日米政策会合の結果がカギを握っていると言えるでしょう。本日から始まるFOMCは、明日(日本時間19日午前3時)に政策発表があります。今回の会合は、前回7月の会合と同様、25ベーシスの利下げが実施されると予想され、この予想はほぼ確実だと思われます。筆者も含め、50ベーシスの利下げの可能性も考えましたが、このところの堅調な株価を考慮すれば、あえてこの段階で50ベーシス利下げする理由は見つけにくいということです。こうなると焦点は、今後年内に何回の利下げが見込めるのかという点になります。この点に関しても、今回の利下げも含めて「年内3回」という予想は急速に後退しています。トランプ大統領による執拗な利下げ圧力はありますが、ここは25ベーシスと予想するのが最も妥当な線かと思います。仮に予想通りの決定だとすると、市場への影響はニュートラルでしょう。
また、日銀の決定会合でも足元の堅調な株価と、108円台というドル円の水準からすると「無風」の可能性が高まってきました。先月のように急激な円高が進み、104円台で決定会合を迎えるのとは、状況が大きく異なります。急激な円高が進んでいる状況では、日銀が動かなければさらに円高が進む可能性がありますが、上述のように、ドル円が底堅く推移する状況ではあえて動く必要もなく、いざという時のカードは温存される可能性が高いと見られます。
今週20日には、中断されていた米中通商協議が再開されるとの情報もあり、上記中東情勢を除けばむしろリスクオンの流れが優勢となっています。日米の政策会合が予想通りだとすると、ドル円は107−109円のレンジを形成し、動きも限定的になると予想します。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。