9月12日に108円台を回復してからドル円は底堅く推移し、ほぼ107円50銭〜108円50銭のレンジ内に納まっていました。108円台を割り込み107円台後半まで売られても、直ぐに108円台に押し戻される展開が続いていましたが、先週金曜日を境に水準をやや下げ107円台が続いています。急上昇していた米長期金利も再び低下傾向を見せ、サウジアラビアの石油施設が攻撃されたことで、中東の地政学的リスクが高まって来たことが背景ですが、その割にはリスク資産である株価は日米ともに堅調さを維持しています。これが、ドル円がなかなか下げない理由の一つと見られます。
先週までで日米欧の中銀政策会合は終わりましたが、結果がほぼ予想通りに終わったことで、為替市場への影響は見られませんでした。日銀が決定会合で政策据え置きを決めた後、ドル円は40銭ほど円高方向に振れる場目がありましたが、これが唯一の影響でした。しばらくは材料不足が続きそうな気配です。
10月7日の週から中国の劉鶴副首相がワシントンを訪れ、中断されていた閣僚級による米中通商協議が再開することになりましたが、協議の見通しは依然として明るくはありません。今回の協議で「合意」に至る可能性は低く、このままではトランプ大統領の鶴の一声で10月15日まで延期された2500億ドル(約26兆8800億円)相当の中国製品に対する30%の関税適用は実施されることになります。この関税率30%はこれまでになく高税率で、対象額も大きいことから、仮に実施された場合、いままで以上の影響が米中双方に出て来るのは必至です。ここは再び大統領選を意識した、トランプ氏の「一声」で再び延期される可能性や、中国との貿易戦争を「一時休戦」する可能性は残っていますが、その時の株価の水準なども重要かもしれません。いずれにせよ今後材料になるのは、この米中協議の行方と大統領選ということになります。
今週は重要なイベントもなく、経済指標でも相場を動かすと思われるものはありません。地区連銀総裁の講演で多少相場に影響がでるかもしれませんが、あとはユーロ圏とドイツの経済指標が発表されることから、ユーロドルの動きがドル円に飛び火する可能性があります。先週までの動きと異なり、やや下値をテストしそうな気配のドル円が、107円を割り込むのか、あるいはドルが底堅さを見せ、再び108円台に乗せてくるのかが焦点です。
著名投資家のジム・ロジャーズ氏が今月来日し、各メディアに頻繁に顔を見せています。同氏は、日本という国は好きだが、その将来性には悲観的で、日本株を含む円資産は昨年秋に全て売却したことを明らかにしています。人口が減り、財政赤字が毎日増えて行く日本では成長の余地が限られるというのがその理由で、効率的で「小さな政府を目指す」ということなどは、既に忘れ去られているようだと判断している点や、早急に人口減少を止めるべきだという点では筆者も全く同意見です。長期的に見れば円が弱くなるのは必然的とも言っています。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。