先週は1日に発表されたISM製造業景況指数が予想を下回り、10年ぶりの低水準だったことを皮切りに、ADP雇用者数、ISM非製造業も市場予想を下回ったことで、米景気の急速な鈍化が懸念され、長期金利の急低下とともに、ドル円は106円台半ばを割り込む水準まで円高が進んできました。リスク回避の流れから、日米の株式市場でもリスク資産の株が大きく売られたことから今月末に開催されるFOMCでの利下げ観測が急速に高まり、金利低下から円を買う動きが強まってきました。
そんな中発表された9月の米雇用統計でしたが、結論からすると、米労働市場は引き続き拡大基調にあるということです。失業率は3.5%と、50年ぶりの低水準を記録し、非農業部門雇用者数も、9月分は市場予想を下回ったものの、7月、8月分がともに上方修正されました。この結果、今年1−9月の平均では約16万人と、昨年と比べると減少はしているものの、リセッションを意識するほど悪くはないと言えます。このため、急速に高まっていた今月末の利下げ確率も、やや低下しています。パウエル議長も講演で、「米経済はいくらかリスクを抱えているものの、総じて良好な状態にあると言えるだろう」と述べており、一部で高まっている景気に対する悲観的な見方には組みしていません。
ただ一方で、米製造業の鈍化を示す指標が相次いでおり、中でもISMが発表する製造業景況指数では、同指数が「48」を下回った過去7回のうち5回で景気後退が起き、S&P500は17%〜47%下落したというデータもあるそうです。(日経新聞「ウオール街ランドアップ」)今週からは市場の関心が、再び10日から始まる米中通商協議の行方に集まっています。週明け月曜日にはこの協議に関するネガティブなニュースが流れ、ドル円はやや円高方向に振れていますが、個人的には「合意」にはほど遠く、良くても「一時的な休戦」に留まるものと予想しています。
仮に「休戦」もないとすれば、トランプ大統領が9月11日に突然発表した「2500億ドル相当の中国製品に対する関税30%への引き上げ延期期限」が10月15日であることから、発動されてしまうことになります。この30%の関税率適用は中国とっては非常に厳しいものになりますが、米国にとっても個人消費への影響は避けられないと思われます。
今週は、米中通商協議に注目ですが、それ以降も波乱要因が多く、今月の相場はこれまで以上に乱高下する可能性があると見ます。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。