先週は、FOMCに日銀政策決定会合、それに週末には米雇用統計と、重要イベントが盛りだくさんでした。ドル円は109円台を回復し、一時は109円28銭前後までドル高が進んだ後、108円を割り込むなど、このところの動きとしては値幅の大きな動きがありました。米景気の好調さが確認できたことで、株高、債券安が進み、おおむねリスクオンの展開だったと言えます。
FOMCでは市場予想通り25ベーシスの利下げを決め、これで、7月、9月に続き3会合連続の利下げとなり、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は1.50〜1.75%になりましたが、これに対してトランプ大統領は相変わらず非難のツイートを行っています。「パウエル議長とFOMCに国民は非常に失望している。」とした上で、「われわれはドイツや日本など、他の国のどこよりも低い金利とすべきだった。 米国は現在、間違いなく最も強大な国だが、FRBのせいで競争上、不利な立場に置かれている。われわれにとって問題なのは中国ではなくFRBだ。」と発信していました。
ここまでは想定通りでしたが、日銀会合では今回も、フォワードガイダンスの変更はあったものの、マイナス金利の深堀りなど、さらに緩和政策を強める政策変更はありませんでした。ドル円が108円台で安定的に推移し、出遅れ気味の日本株も急速に上昇している中、あえて手持ちの少ないカードを切ることはしなかったということでしょうが、今回は動くと予想していた筆者ははずしてしまいました。
本来、この動かない日銀は「円高材料」でしたが、先週末の雇用統計が円高を阻止したように思います。10月の非農業部門雇用者数は12.8万人と、市場予想を大きく超え、9月分と8月分も大幅に上方修正され、労働市場の堅調さが確認された格好です。確かに、米労働市場は、新規失業保険申請件数や、失業率を見ても依然好調です。労働市場の堅調さが個人消費につながり、米景気を支えていると言ってもいいと思います。金利低下は住宅市場をも活性化させており、製造業などの先行きに不安材料は残るものの、ドイツなど、欧州諸国や日本に比べると、頭一つも二つも抜きん出ていると言えます。11月に入り、今年も残すところ2カ月を切りました。例年年末にかけてはドル高が進む傾向がありますが、予断を持たずにドル高をイメージしておきたいと思います。
今週は前週と異なり重要イベントは少なく、日米の株価がどこまで上値を伸ばすのかを見極めながらの展開を予想します。中国の景気指標が一つの鍵を握っていそうです。ドルの急騰はないものの、108円台は固めてきた印象があります。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。