米中首脳にとって、それ以外の選択肢はないと思われ、貿易協議の合意を予想していましたが、先週木曜日、ブルームバーグが「米中貿易協議がおおむね合意」と伝えると、市場ではリスクオンが急速に高まり、翌日の東京市場ではドル円が109円62銭まで買われ、その後の欧州市場でも109円71銭までドル高が進みました。株式市場でも株価が大きく上昇し、2万4000円の大台を回復し、年初来高値を更新して取引を終えています。
さらにこの日は、英国で行われた総選挙で、ジョンソン首相率いる保守党が圧勝したこともあり、市場は楽観ムードに覆われた格好でしたが、その後の報道では貿易合意に対する米中の認識の違いが明らかになり、楽観的見方にやや水をさされました。トランプ政権内でも「第2段階」の協議開始時期を巡り、トランプ大統領と交渉責任者であるライトハイザーUSTR代表の間での齟齬も明らかになり、市場では「今後も米中協議はもめる可能性が高い」との見方が広がっています。中国側は既に発動されている第1〜3弾の関税も引き下げることを望んでいるようですが、トランプ氏は、それらを「第2段階」の交渉の材料にすることを表明しています。今後も米中貿易協議の進展が市場の注目を集め続けることは容易に想像できますが、今回の合意に関する署名は来年1月に行われる予定で、それまでに米中の思惑が再び表面化することもありそうです。
堅調な米経済を背景にドル円は底堅いと予想していますが、一方で今回の米中合意や「合意あるブレグジット」が見通せる情況になってもなおドル円が110円に届かなかったという事実も気になるところです。2つの好材料でもドルの上値が重いということは、反対に今後2つの材料にネガティブな見方が出たとしたら、かなりのドル下落がありうるということにもつながります。そしてもう一つの懸念材料が香港の民主化運動の激化です。一時沈静化したようにも見えた香港のデモ運動は再び激しさを増してきました。 15日にはデモ参加者と警察が再び衝突し、繁華街の道路が封鎖されました。またニューワールド地区のショッピングモールでもデモ隊と衝突した警察が催涙スプレーを使用する場面も報道されています。先週末に北京を訪問した香港のラム長官は、過去半年続く抗議行動について習近平主席や中国高官らに最新の情報を伝える模様だと、ブルームバーグは報じています。米国ではすでに「香港人権法案」が成立しており、中国本土の出方次第では米国が同法案に基づいて介入してくる可能性も排除できません。その結果、第一段階の合意で改善した米中関係が再び悪化する可能性もないとは言えません。いずれにしても、今後も米中情勢が相場の波乱要因であることには変わりはありません。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
