中国では武漢を中心に新型コロナウイルスの感染拡大が続いていますが、中国財務相が、予想はされていましたが、感染拡大による景気減速をてこ入れするための追加刺激策の実施を表明しました。具体的な内容はまだ明らかにはなっていませんが、中国では1月の新車販売台数が前年同期比で18%も減少するなど、景気への影響が出ていることに対応するものと見られます。また、今週はサウジアラビアのリヤドでG20(20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議)が開催され、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う世界経済成長へのリスクについて話し合われるものと思われ、その会議に先駆けて中国は追加策の実施を決めたようです。
筆者の「アナリスト・レポート」でも連日のように新型コロナウイルスの話題に触れていますが、感染拡大が止まっていない以上、やはり相場を動かす「源泉」として触れないわけにはいきません。日本でも、横浜港に停泊中の「ダイヤモンド・プリンセス号」で、昨日新たに70人の陽性が確認され、これで感染者数は355人に増えました。また新たに東京都で5人、愛知県で1人の感染も確認されています。週明けの東京株式市場では、国内での感染者増加を嫌気し、日経平均株価が300円以上も下落する場面もあり、感染拡大が日本企業の企業業績の下振れにつながるとの懸念が株価を押し下げています。
日本ではこのように、新型コロナウイルスの感染拡大を懸念する声が日増しに高まっている印象ですが、米国に目を向けてみると、景色がやや異なるようです。NY株式市場では先週、ダウなど主要3指数が揃って最高値を更新し、先週末の市場でもダウは小幅に下げたものの、ナスダックとS&P500は再び最高値を更新しました。そのため、恐怖指数と呼ばれる「VIX指数」も「13.7」前後で取引を終えており、極めて低水準です。同指数は今年に入って危険水域と言われる「20」を超えたことは一度もありません。つまり、NY株式市場の動きを見る限り、新型コロナウイルスの感染拡大を問題にしていないということが言え、これがドル円でも「円高ドル安」に振れない理由の一つであると考えられます。新型コロナウイルスの感染拡大は中国など一部地域に限定されると予想されているのか、あるいは、少なくとも米国への影響は限定的だと予想されていることのどちらかと思われます。
NY株が堅調に推移し、中国が追加の景気刺激策を講じたことで、今回のウイルス感染がピークを迎えればドル円も上昇し、110円台に乗せることも十分考えられますが、それでもドル円が上昇基調に入り、昨年のドルの最高値である112円台に向かう可能性はそれほど高くはないでしょう。今回のコロナウイルス騒動で、米中貿易協議第2段階の交渉開始のメドはたっていません。またトランプ政権は、EUから輸入される航空機への追加関税率について、18日より現行の10%から15%に引き上げることを発表し、新たな貿易戦争の芽を増やしています。今後米国は、中国だけではなくEUをも敵に回して戦う可能性があります。貿易戦争の嵐が収まらない限り、ドルが無条件に上昇するフェーズがやって来る気配はありません。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
