107−109円のレンジ相場が続いているドル円は、先週からはさらに膠着感が増し、先週1週間はほぼ107円台での取引に終始しました。日米とも株価が落ち着きを取り戻し、今回のコロナ騒動で大きく売り込まれた底値からはほぼ半値戻しを達成しています。その分、ドル円もリスクオフの円買いが起きにくい状況になっています。一方上値の方も、米財政赤字の拡大や長期金利の低位安定から110円を超えてドルを買いに行くにはリスクもありそうです。
今週は日米欧で金融政策決定会合が開かれます。トップを切って本日(27日)、日銀が1日だけの会合を開き金融政策を決定しました。短期金利の「マイナス0.1%」と、長期金利を「ゼロ」近辺に誘導する施策を据え置き、年間80兆円をメドに国債を購入するというこれまでの予定額を撤廃しました。また、CPや社債の購入額を倍増することも決めました。ただ、この決定内容は先週日経新聞が報じていたため新鮮味はなく、決定内容が伝わるとドル円はやや値を下げ、107円20銭台まで円高に振れています。29日、30日にはFOMCとECB理事会が続きますが、今回はいずれも政策金利を動かす余地は乏しく、市場の関心は資金供給の規模やその内容に絞られそうです。結局今回の中銀による金融政策が為替に与える影響は限定的で、大きな動きにはつながらないと予想しています。
ただ株式市場の動きが為替に影響を与える可能性はないとも言えません。米国では1−3月期の決算発表がピークを迎えます。今週は、アマゾンなどのいわゆる「GAFA」が決算発表を行います。加えて、ボーイングやキャタピラーなどの決算発表も控えており、その結果次第では株価が大きく上下し、株式市場全体をどちらかにけん引する可能性があります。特に30日のアマゾンの決算内容は注目されているようです。アマゾン株は「コロナ効果」から、今年に入って株価はすでに30%程上昇しているようです。また中国関連銘柄の代表であるキャタピラーの決算にも注目が集まっています。値動きの少ない相場展開が続いていますが、107−108円のどちらが抜け切れるのか、注視して行きたいと思います。個人的には、動かない中でもやや円高方向に分があると予想しています。
実質的には今週から大型連休が始まったと言えます。この時期気を付けたいのが、日本が連休中に起こる可能性のある「フラッシュ・クラッシュ」です。特に、先週から動きの止まったドル円では、投資家の多くが「動かない」と決め込んでいます。このような時こそ、むしろ危ないと思われます。そういった想定外の事態が起こる可能性は低いものの、用心にこしたことはありません。今週から来週にかけては、ポジションと資金管理にはくれぐれも注意してください。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。