ドル円はやや上値を切り下げ、クロス円はユーロ円を中心に総じて円高傾向を見せ始めてきました。動きの少ないドル円であることから、すぐに急激な円高が始まるとも思えませんが、周りを見渡せば徐々に「リスクオン」が後退していることも窺えます。金価格は約2週間ぶりに1750ドル台を回復し、再び高値圏で推移しています。また米10年債利回りも約3週間ぶりに0.7%を割り込んできました。米株式市場ではダウが3日続落し、調整モードも感じられます。
市場の「リスクオン」にブレイキを掛けているのは、コロナ感染の第2波が米国南部を中心に拡大していることです。特にフロリダやテキサスなど南部の州では過去最多の感染症例が確認されており、NY州などへの感染の広がりが懸念されています。また、トランプ大統領再選の可能性が低下していることも株価の重しになっていると見られます。トランプ氏の言動は内外から批判の声はあるものの、経済第一主義や、度重なるFRBへ利下げ圧力は株式市場にとっては「追い風」になっており、仮にトランプ氏が敗れるような事態になれば、一時的には株価の下落要因となることも予想されます。
ボルトン前大統領補佐官による暴露本は明日にも発売される予定です。トランプ政権の中枢にいた人物による暴露本だけに、その影響は決して小さくはないと思われます。ボルトン氏はABCニュースのインタビューに応じ、トランプ大統領は国家安全保障より自らの再選を優先し、機密情報のレクチャーに関心を示さず、国際問題と自らの決定の影響について無知だったと語っています。また英紙テレグラフとのインタビューでは、「2016年はヒラリー・クリントン氏ではなく、トランプ氏に投票した。この大統領を間近で見てきた今、再びこれを行うことはできない。私が懸念するのは国であり、彼は私が支持したいと考える共和党の理念を代表していない」と述べています。(ブルームバーグ)このように、自身の所属する共和党内部からも再選に反対する声が挙がっており、その象徴がブッシュ政権では国務大臣を歴任したコリン・パウエル氏です。同氏はトランプ氏の対抗馬であるバイデン氏支持を表明しています。
今週は主要国のPMIが発表され、コロナ感染により4月は過去最大の落ち込みを見せた同指標が、どこまで回復してきたのかを探ることになります。今週のドル円はやや下げ、下値を探る展開を予想していますが、それでも106円台半ばと106円前後は重要なサポートとして意識されます。週明けの月曜日、朝方には200円程のマイナスであった日経平均株価は午後にはプラスに転じるなど、東京タイムでは目立った動きはありません。投機筋の円のポジションを見ても、ここ2週間はほとんどどちらにも傾いてはおらず、積極的な取引を控えていることが分かります。彼らも、ドル円は動かないと予想しているということで、これもドル円が大きな値動きを見せない一つの理由になっていると考えられます。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。