ドル円は、長い間続いた107円での動きのない相場展開が、米中関係の新たな緊張の高まりから、ようやく方向性が出てきました。すでに何度も述べたように、ドル安傾向が鮮明になったようです。
先週の金曜日、ドル円はNY市場でこれまで重要なサポートと見られ、事実、何度か突破を試みても抜け切れなかった106円前後の水準を割り込み、105円68銭までドル安が進みました。週明けの東京市場でもその流れを受け、昼頃にはNYでのドル最安値を下回る105円45銭前後までドルが売られています。ドルはユーロに対しても売られ、東京時間には昨年9月以来となる1.17台前半までドル安が進み、「ドル全面安」の様相になっています。ドル安の要因は言うまでもなく、米中関係の悪化です。
トランプ大統領は、4月以降米国内で急速に拡大した新型コロナ感染を巡って中国を非難してきました。「中国がコロナ感染を隠蔽したことでパンデミックがおこった」として、「中国はこの責任を負うべきだ」と何度も制裁方針を警告してきました。香港国家安全保障法の成立や、新疆ウイグル自治区での人権侵害問題がこれにさらに拍車をかけ、トランプ政権としても、大統領選を有利に戦うという意味でも行動を起こす必要があったのかもしれません。トランプ政権は23日、テキサス州ヒューストンにある中国総領事館を閉鎖することを決め、翌24日には中国側も対抗措置として四川省成都にある米総領事館を閉鎖するよう要求しました。これまでのトランプ政権の対中国制裁とは異なった決定で、米中関係がさらに悪化する可能性が高まっています。世界最大のヘッジファンド運営会社ブリッジウォーターのダリオ氏は「貿易戦争で始まった米中の対立は、テクノロジー戦争を経て地政学的戦争となり、場合によっては資本戦争になる可能性がある」と語っています。(ブルームバーグ)
重要な節目を割り込んだドル円は緩やかな「円高ドル安」を志向していくと見ています。注目すべき点はまず、ユーロドルがどこまで上昇するのかという部分です。すでに1.17台まで買われており、このままでは1.2に届く可能性も出てきました。そうなるとドル円の105円割れは必至と思われますが、このところのユーロの上昇はややスピードが速すぎるため、1.2を前に調整と、利益確定の売りが出ることも十分想定されます。また、木曜日には米第2四半期GDPが発表されます。既に「マイナス34.5%」と、記録的な落ち込みが予想されていますが、さらにマイナス幅を拡大させるようだと、ドル安を加速させることも考えられます。いずれにしてもドル安傾向が具現化した今、ドルの戻りを売るスタンスが有効かと思います。急激な円高はないとしても、緩やかな円高が進み、レンジも、これまでの106円〜108円から104円〜107円程度に下方にずれ込んだと考えます。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
