先週後半は、ドル円が久しぶりに大きな値動きとなりました。先ずは、先週木曜日にFRBがインフレ目標をこれまでの「2%を上回るインフレ率を目指す」としていたものから、「2%を到達点とするのではなく、一定の期間の物価上昇率を平均で2%を超える」ことに変更しました。言い換えれば「2%を超える物価上昇率を容認」した形となり、足元のゼロ金利政策が当面継続されることを市場に伝えたものと受け止めることも出来ます。この発表を受けてドル円は105円台半ばまで売られましたが、その後106円台半ばへと反発しており、急激な円高も一時的な動きに終わった感もありました。しかし今度は週末に、安倍首相が健康上の理由から突然の辞任を発表し、ドル円は再び売りが活発化して、105円20銭まで下落しました。アベノミクスで株高ドル高が進んだ経緯もあり、安倍首相の辞任はアベノミクスの終焉を意味し、反対の動きが出たようです。ただ、アベノミクスも2018年以降はその効果も見られず、GDP成長率はほぼゼロ成長に留まっており、実際問題としては安倍首相の辞任で景気が大きく落ち込むものでもありません。その証拠に、その日の海外市場ではほとんど材料にはなりませんでした。新しい首相は来月半ばごろには決まるようですが、自民党総裁の任期が来年9月一杯ということもあり、次期首相はそれまでの「つなぎ」という側面が大きく、そうなると菅官房長官が就任する可能性が高いと言えます。
今週は上記次期首相を巡る動きが相場に影響を与えることになりますが、基本的には大きな動きにならないと考えます。注目すべきは米経済指標の結果でしょう。明日はさっそくISM製造業景指数が発表され、週末には恒例の雇用統計があります。いずれも重要度は高いと言えますが、特に8月の雇用統計では、4月の最悪期からどの程度労働市場が回復しているのかを見極める意味で重要です。市場予想では、失業率が前回の「10.2%」から改善して「9.8%」の予想。非農業部門雇用者数は前回の「176.3万人」から若干減少して「140万人」と予想されています。米国では新型コロナウイルスの感染状況は高止まりしており、その中でも経済の動きを止めるわけにもいかず、サービス業を中心に再雇用の動きが続いています。ただ新型コロナは州により感染状況が異なり、フロリダ州などでは鈍化しているものの、NY州ではバッファロー市などで急拡大しています。株高が景気を下支えしている側面がある一方、新型コロナの感染拡大は続いており、早期のワクチン使用開始が待たれます。
コロナによる影響以外でも注意したいのが「地政学的リスク」です。米中は南シナ海でのにらみ合いを続けており、米国の対中国包囲網は、オーストラリアやインドに加え、台湾、日本を交え、着々と構築しつつあります。このまま中国が静観することは考えにくいと思われ、何らかの報復措置に出て来ることも予想されます。またベラルーシでは大統領選挙の結果を巡って大規模な民主化運動が広がっています。仮に、ルカシェンコ大統領が辞任に追い込まれるような事態になれば、「アラブの春」の再現につながる可能性も否定できません。
このように見てみると、やはり緩やかなドル安傾向は続く公算が高いと思います。言えることは、これまでより遥かにドル円のボラティリティは高まっているということです。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
