安倍首相の突然の辞任表明に一時は105円20銭まで下落したドル円は、その後落ち着きを取り戻し、次期首相に菅官房長官が有力ということもあり、106円台半ばまでドルが買い戻されています。金融政策の変更がない上、政権交代に伴う混乱もないと見込まれ、自民党の主要派閥が菅氏支持で結束したことから、来週にも「菅首相」が誕生する見込みです。また、ユーロドルが1.20台を付けた後、ECBのレーン理事からユーロ高をけん制する発言があり、ユーロ買いポジションも過去最大規模に積み上がっていたことと相まって利益確定の売りに押され、一時は1.17台後半まで「ユーロ安・ドル高」が進んだことも、ドル円が106円台半ばまで押し戻された一因になっていると見られます。
ただ、依然としてドルの先安観は拭えていません。米低金利が長期にわたって続くと見られていることや、米中関係のさらなる緊張が続いていることがその理由として挙げられます。パウエルFRB議長は4日メディアとのインタビューで、「米経済の新型コロナウイルスからの回復は今後長い道のりとなり、金利が長期間低水準にとどまるだろうと」述べています。米金利が低水準で推移すると考えれば、日本の金利が現状からさらに大きく低下する余地は少なく、「日米金利差は縮小することはあれ、拡大する可能性は低い」と予想されています。少なくとも、金利差からドルが大きく買われることは考えにくいと思われます。また、トランプ政権が中国に対する制裁をさらに強めることを考えると、先日南シナ海にミサイル4発を発射したように、中国側の強い反発も予想され、ドル浮上のきっかけはなかなか掴みにくいというのが現状です。
今後の材料とすれば、2カ月を切った米大統領選の行方と、上でも述べたユーロドルの動きということになります。米大統領選では、当初バイデン氏が10ポイントほど差を付けてトランプ氏をリードしていると報じられていましたが、その後共和党が全国大会を開催した頃には差が数ポイントまで縮小してきたと伝えられ、大統領選の行方は混沌としてきました。ただ今朝の最新の報道では、その差は再び拡大している模様です。6日明らかになったCBSニュースの最新調査では、バイデン氏の支持率は52%で、トランプ氏は42%と、その差が10ポイントに再び拡大したと報じています。この調査は9月2−4日に全米の登録有権者2493人を対象に行われたもので、誤差率はプラスマイナス2.4ポイントとされています。(ブルームバーグ)
ドル円を見る上で、もう一つの材料であるユーロドルの動きですが、こちらは、再び1.2を目指すのか、あるいはユーロ高へのけん制が続き、1.17割れをテストするのかが注目されます。ECBは10日(木)に理事会を開催し、金融政策を発表します。基本的には政策金利の変更はないと思われていますが、ユーロ高が景気回復に水を差すことが懸念されることから、ユーロ高をけん制する発言は出て来る可能性があります。その意味で、理事会後のラガルド総裁の会見が非常に重要かと思います。ユーロドルが再び1.2を目指すようだと、ドル円には下落圧力が増すことになります。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
