先週月曜日には米長期金利の上昇に伴い105円65銭まで上昇したドル円でしたが、先週末には再び104円台半ばまで押し戻されました。一目均衡表でいう、日足の「雲」を抜け切れずに反落した格好でしたが、もう一つのテクニカルである「MACD」ではゴールデンクロスを見せたものの、「マイナス圏」での買いサインであるため、まだ本格的な上昇にはつながりにくいといったところもありました。今朝の「アナリストレポート」でも述べましたが、ドル円がここからもう一段上昇するには、米長期金利の1%超といった「援軍」が必要です。出遅れ気味の米S&P500が7月以来となる最高値を更新するなど、NY株式市場では株高の流れが続いており、「リスクオン」になるとドルが売られる傾向が強まっています。ただ株式市場への資金流入が継続されるとみれば、米債券が急騰して金利が低下する可能性もそれほど高くはないと見られ、金利面からドル安が急激に進むリスクは小さいのではないかと思われます。
むしろ、警戒すべきは先の大統領選で勝利したバイデン氏が新しい大統領に就任するタイミングが大きく遅れるリスクだと思います。新政権への移行の遅れが、経済対策の遅れや、新年度の予算計画の遅れにつながり、コロナ感染の拡大の影響から景気が悪化するケースです。ワクチン開発にも前進が見られたことで、不確実性がやや減ったと思われますが、コロナ感染の危機が長引けば企業の倒産や失業者数が加速して、景気の悪化が一気に進む可能性もあると、パウエルFRB議長は先週開催されたECBフォーラムの席で指摘していました。米英欧の3中銀トップが声を揃えて新型コロナウイルス感染「第2波」に警戒感を強めていたのが、印象的でした。
今朝の情報では、バイデン次期大統領とハリス次期副大統領は日本時間17日午前3時45分から、新型コロナウイルの感染拡大後の景気回復と、より長期の経済成長に関する計画を公表すると、政権移行チームが発表しています。ブルームバーグによると、バイデン氏は新型コロナのパンデミックに伴う景気下降の長期化に苦しむ米国民の支援のため、財政出動による景気対対策の必要性に言及しており、先週の共同声明によると、追加経済対策を巡る協議の行き詰まりに関し、ペロシ下院議長および民主党のシューマー上院院内総務とも話合いを持ったと報じています。トランプ氏が断固として敗北を認めない一方、勝利を確実にしたバイデン氏は新大統領としての政策作りを着々と進め、「既成事実」を積み上げるようです。
まだ上値の重い展開が続くドル円は、今週は104円を割り込むのかが焦点の一つと見ています。104円を割り込むようだと、先週記録した103円台前半が意識される展開かと思われます。またドル円が103円台に沈むようだと、ユーロドルもレジスタンスゾーンである、1.18台半ばから1.19台前半をテストする可能性が高いと予想されます。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。