年明け1月4日の東京時間に再び103円を割り込んできたドル円は、依然としてドルの上値が重く、ドル円は下落目線で観ておいた方がベターかと思います。
昨年には何度も観られ、ほぼ定着したかに思えた、「リスクオンのドル安傾向」でしたが、4日の東京時間には102円90銭近辺までドル売りが進んでいます。東京都を中心に都市部で新型コロナウイルス感染が拡大し、1都3県の知事が政府に緊急事態宣言の発出を要請し、政府も給付金と罰則を一体とした特措法改正案について通常国会に提出方針を固めたとの報道から、日経平均株価が一時400円を超える下落に見舞われる局面がありました。リスクオフでもドルが売られる場面になっており、ドル円と株価、あるいはリスクの高まりとドル円との関係が不安定になっています。個人投資家にとって、ドル円を売買する際の手掛かりが、ますます不透明になっていると言えます。
今週は月初めということもあり、重要なイベント、経済指標の発表があります。経済指標ではISM製造業、非製造業景況指数の発表があり、週末には12月の雇用統計が発表されます。米国ではコロナの感染拡大に歯止めがかからず、先週2日には1日の感染者数が30万人に迫り、過去最多を更新しています。ICUの使用率も高水準になっており、コロナワクチンの接種が始まった割には、感染が抑制されていません。ワクチン接種が想定通り進んでいないことが一因になっているようです。そのため、NY州などでは高水準の行動制限が続いており、12月の雇用統計にもサービス業などを中心に影響を与えそうです。すでに現時点でも、非農業部門雇用者数は11月の24万5千人から大幅減少の5万人と予想されています。今回は大きくぶれることも予想され、増加どころか、減少する可能性もないとは言えません。米労働市場の急速な悪化から、さらなる追加緩和の実施といった見方が台頭し、ドル円の売り材料につながるかもしれません。
5日には連邦議会上院の決選投票が行われます。現時点での上院の議席は共和党50、民主党48となっており、残りの2議席を共和党2人、民主党2人が争う形となっています。仮に民主党が2議席を取ると、50対50となり、その場合は副大統領が投票権を有することになり、副大統領は民主党のカマラハリス氏であることから、民主党が有利になると思われます。反対に共和党が1議席でも取れば、これまで通り「ねじれ議会」が継続されることになり、バイデン新大統領にとっても、厳しい船出となります。もっとも、今回のバイデン政権には、民主党の大統領候補選挙で争った、急進左派のバーニー・サンダース氏を支持する人物が重要閣僚に入っていないことから、サンダース氏が閣僚人事を非難していることもあり、民主党内部からも、造反者が出て来る可能性も排除出来ません。いずれにしてもこの決選投票の結果が、バイデン新政権の政策遂行に大きな影響が出るものと見られます。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。