日米とも株式市場が好調です。米株式市場では主要3指数が揃って連日最高値を更新するとともに、「大台替え」も実現しています。日本でも日経平均株価が先週末には一時2万8000円の大台に乗せ、連休明けの火曜日には2万8200円台まで上昇する場面がありました。ただこれまで、株価の上昇はリスクオンからドル安に振れる傾向がありましたが、先週8日の米上院決選投票で民主党が2議席を確保し、「トリプルブルー」が実現した時から変化が出て来ました。長期金利の上昇がドル円を押し上げる展開に変わり、「リスクオンで低金利の円が売られる」流れになっています。このままこの傾向が定着するかは分かりませんが、米長期金利が1.14%を超えてきたことで、ドル円は今週104円台に半ばまで反発し、先週記録した102円59銭からは概ね2円のドル高です。昨年秋口からのドル下落局面ではかなりの「ドル反発」と言えるでしょう。
やや意外だったのは、先週金曜日に発表された12月の雇用統計発表後のドル円の動きでした。昨年12月には新型コロナ感染がさらに拡大した中、先に発表された「12月ADP雇用者数」はマイナスを記録していました。12月の雇用統計にもその影響が及ぶと予想していましたが、結果は予想通り、雇用者数は8カ月ぶりの減少に転じ、やはりコロナの影響を大きく受けていました。ドル円は発表直後ドル売りが先行しましたが、その後反発し104円台に乗せています。金利高に反応したものでしたが、雇用統計の悪化も、バイデン新政権の大規模財政出動観測には勝てなかったといったところです。もっとも雇用統計に対する評価も、「やや失望だが、前回部分が上方修正されたり、一時的なもの。製造業の雇用は順調に回復している」(ドイツ証券)といったように、概ね想定内との認識でした。
バイデン次期大統領が正式に就任するまであと1週間ほどです。1月20日にはオバマ前大統領やブッシュ元大統領も顔を揃えるようですが、渦中のトランプ氏はどうやら欠席するようです。それもそのはず、トランプ氏はいまだに正式な「敗北宣言」は行っていないばかりか、議会で同氏の弾劾決議案が提出され、米政治史上初の「2度弾劾裁判を受けた大統領」になる可能性が高いようです。まさに最後の最後まで「混乱と失望の4年間」だったと言えましょう。
本日のデイリーコメントでも触れましたが、ドル円の動きにやや変化が出て来ました。米長期金利の上昇に引き寄せられる格好でドルが買い戻されています。今後のドル円を見る上で、これまでやや蚊帳の外に置かれていた米長期金利でしたが、ようやく表舞台に出で、注目を浴びる存在になって来ました。米長期金利がさらに上昇するようだと、ドル円は105円を目指す動きが予想されますが、米金利の上昇についてクラリダFRB副議長は「ワクチンや経済成長期待などプラスの期待を織り込んで金利が上昇しているのであれば、それは懸念すべきでない」と述べ、景気回復に伴う金利上昇を容認する姿勢を見せています。今後、米長期金利に対する注目度は各段に高まって行きます。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。