トランプ大統領の暴挙などにより、思いもよらなかった混乱がありましたが、どうやら大統領就任式は今週20日に、無事執り行われることになりそうです。バイデン氏は就任式の当日、「パリ協定への復帰」を含む10以上の政策を発表する予定で、いよいよバイデン政権の第一歩が踏み出されることになります。それにしても何とも後味の悪い、歴史に汚点を残した新旧大統領の交代劇でした。
バイデン氏は就任に先立って先週14日に追加の経済対策を明らかにしました。家計への追加給付金1400ドル(約14万円)を含む総額1.9兆ドル(約197兆円)規模で、新型コロナウイルスの感染を抑え込む対策や、子育て世帯の減税、さらには最低賃金引き上げなども含んだ内容です。対策の規模は予想されたよりも大きなものでしたが、事前にある程度の内容が予想されていたこともあり、発表後はむしろ「材料出尽くし」のため、株式市場では利益確定の売りが先行し、債券が買い戻される展開となり、ややドル安が進みました。このような状況では、20日の就任式での政策発表でも、ある程度の「サプライズ」でもないと、同じように利益確定の売りに押される展開が予想されます。104円台半ばまで買われたドル円も、米金利との相関を強めており、その金利が再び1.0%台まで低下してきたことで、ドルの上値が重い展開に戻りつつあります。やはり105円台を回復しない限り、足元のドル先安観測は払拭できないのではないかと思います。一方で、102円台までドル安が進んだあの勢いも、やや後退していると見られます。米長期金利が徐々に低下しても1%台を維持しているのであれば、ドル円は短期的には「ニュートラル」と考えてもいいと思います。ドルの先安観は完全に払しょくできないものの、ドル売りを仕掛ける市場参加者に警戒感が出ていることも事実です。
今週は21日(木)に行われるECB理事会が注目です。欧州では新型コロナ感染抑制のためのロックダウンが各国で行われており、これに伴い景気の下振れ懸念も再び台頭しています。昨年12月のECB政策会議の議事録では、「新型コロナウイルス感染再燃の経済的影響、インフレ軌道予想の下方修正、その結果としてのインフレ期待の不安定化リスクを踏まえ、良好な金融環境の維持のためには追加支援が必要だと同意した」と記されていました。コロナ感染は当時よりも拡大、悪化しており、追加緩和に踏み切る可能性も十分あるのではないかと考えます。1.23台半ばまで上昇したユーロドルが再び1.20台半ばを割り込んだのも、その動きを織り込んでいる証かもしれません。ユーロドルの下落は、ドル円のサポート材料になる傾向があります。
中国の第4四半期GDPが発表されました。結果は市場予想を上回る「6.5%」でした。第1四半期こそ、「マイナス6.8%」と、コロナの影響をもろに受け、景気後退が大きく進みましたが、第2四半期以降はプラス成長が続いており、これで3四半期連続のプラス成長です。ただ、中国でも再びコロナ感染が拡大しており、今後高水準の成長を続けていけるかどうかは不透明になってきました。20日は「全人代常務委員会」も開催されることから、この辺りの政策内容も注目されます。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。