米長期金利が低下し株価も乱高下する中、ドル円は先週約1カ月半ぶりとなる107円台半ばまで下落しました。週を通じてドルの上値は重く、一部には3月まで続いていたドル高局面にも変化が出てきた可能性も浮上してきたとの観測もありますが、筆者としてはまだ「ドル高基調」を基本とするシナリオを維持しています。それは、ドル円の動きを左右するドライバーである米長期金利がこのまま低下する可能性が低いと見ているからです。
3月30日には1.77%まで急騰した米長期金利はその後緩やか低下に転じ、先週は一時1.53%近辺まで低下する場面がありました。米長期金利は債券価格と逆の動きをしますが、その債券の今後の需給を考えたら、大幅な価格の上昇は考えにくいということです。大規模な経済対策の財源としての国債の増発は避けられず、今後詳細が発表される2兆ドルを超えるインフラ投資計画も、規模の縮小を迫られる可能性はありますが、財源に国債が充てられることは変わりません。また、先週報道された富裕層に対するキャピタルゲイン税引き上げによる財源確保についても、報道されたような規模の増税は難しく増税率の軽減がなされるとの見方もあります。先週、富裕層に対する増税が報道されたことで株価が急落する場面があったように、増税幅が軽減されるようだと、株が買われ、債券が売られることにもつながります。株と債券がともに買われることも無いとは言えませんが、今後米国ではコロナワクチンの接種がさらに進み、経済指標が予想を上回る状況が続けば、いずれ市場はFRBによる債券購入の縮小を意識し始めることになると予想します。
今週の注目点は3点かと思います。まずは28日のFOMCです。政策変更はないと予想されますが、今後の政策スタンスに関するヒントが出て来る可能性があります。とりわけ、先週カナダ中銀が主要国の先陣を切って「テーパリング」に踏み切ったことで、どのような認識を示すのか、次回以降のFOMCを占う意味では重要になってきます。良好な経済指標が続く中、カナダ中銀のサプライズを受け、テーパリングに対するFRBのハードルもやや下がったと見ています。
2つ目は同日に行われるバイデン大統領の上下両院合同会議で演説です。ここでは先に報道された富裕層に対する増税がより詳細に判明すると見られるほか、トランプ前大統領が引き下げた法人税も元の水準に戻される可能性も指摘されています。
そして3つ目が、本格派する米企業決算の発表です。本日6日にもEV専門メーカーの「テスラ」が決算発表を行いますが、同社のEVは中国を中心に販売台数を大きく伸ばしており、決算の内容が注目されます。
「テスラ」以外にも今週は「アップル」、「アルファベット」など、GAFAの一角が決算発表を行うため、内容次第では株式市場全体のセンチメントに大きな影響を及ぼすことも想定され、為替、金利も影響を受ける可能性があります。言うまでもなく、好決算が相次ぐと、リスクオンが強まり米金利の上昇からドルが買われることにもつながります。逆にセンチメントを悪化させることになると、ドル円にとっても重石になりそうです。今週は日本企業の2021年3月期決算の発表も多く控えており、日米株式市場の動きが、為替、金利を動かすドライバーになるかもしれません。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
