先週末に発表された4月の雇用統計は驚きでした。雇用者の増加は市場予想の100万人に対して26.6万人と大幅な下振れでした。さらに3月分と2月分がともに下方修正され、筆者も含め、多くの市場関係者が予想を大きく外した格好です。それもそのはず、それまでに発表された多くの経済指標は予想を上回り、先週水曜日のADP雇用者数も上振れしていました。速報値の雇用統計では時々このような「想定外」の結果が出て来る可能性はありますが、これで市場は米労働市場の先行きには慎重にならざるを得ません。ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が語っていたように、「今回のデータは米金融当局が刺激措置を継続している理由を正当化する」うえ、「この日の雇用統計はわれわれの道のりが長いことを示す一例だ」との言葉が、状況を言い得ているように思います。
ドル円は107円台半ばを付けてから109円70銭まで戻し、再び下落してきました。個人的にはドル高の基調は変わっていないと見ていますが、今回の雇用統計を経過してドルの上値はこれまで以上に重くなってくる可能性があります。先週末のNY市場でもそうでしたが、ドル円と米長期金利の動きが重なっているため、長期金利の一段の上昇が抑制される可能性があると言い換えてもいいのかもしれません。ただ一方でドルの下値の方も限られてくるでしょう。仮にドルが売られても、その際には円も売られ易いからです。週明け東京時間でのクロス円を見ると軒並み円安がさらに進んでいます。ユーロ円は2018年10月1日以来となる132円台半ばまで買われ、豪ドル円も再び85円台半ばまで上昇しています。これはコロナワクチン接種の状況に大きく影響していると考えられ、今後1カ月程で日本でもコロナワクチンの接種が急速に進めば話は別でしょうが、その可能性も低いと予想されます。まだしばらくは、クロス円での円安傾向は続くと予想しています。
今週は12日(水)に米CPIが発表されます。物価上昇が続いている中、米国では国内最大の石油パイプラインがサイバー攻撃を受けて操業を停止しています。この影響が長引けば全米のガソリン平均価格が2014年10月以来となる1ガロン=3ドル突破となる可能性もあると、専門家は指摘しています。米国ではこれから夏にかけて旅行シーズンが本格的に始まり、今年はコロナ禍による制限が緩和されることから、ガソリン需要が急速に伸びることが予想されています。車社会の米国では、ガソリン価格の上昇は消費者物価指数を直ちに押し上げる効果があります。また、今週はFOMCメンバーの講演も多く予定されています。今回の雇用統計の結果を受け、金融緩和の長期化を示唆するような発言が相次ぐと、ドル売りが再燃する可能性もあります。4月の雇用統計の結果を踏まえてどのように発言が出てくるのか、注目されます。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
