先週20日の日銀による、イールドカーブ・コントロール(YCC)長期金利の許容幅を0.25%から0.5%に倍増するという「ビッグ・サプライズ」に、ドル円は137円台から一気に130円58銭前後まで売られました。その後市場ではこの決定に対して、「早すぎたクリスマプレゼント」といった言葉や、「嬉しくないプレゼント」などと、揶揄されましたが、ドル円はその後下値を試すことなく、131円台〜133円台で一進一退の動きとなっています。発表される経済指標は、景気の鈍化を示すものの、想定を大きく下回るものではなく、FRBの利上げスタンスを完全に後退させるものではありません。FRBも、インフレ率はピークを付けた可能性が高いと認識しながらも、ブレイキから足を離そうとはしません。
今年最後のFOMC後の会見でパウエル議長は「インフレ率が持続的な形で2%へと低下していると委員会が確信するまで、利下げが検討されることはないとみている」とし、「物価安定を回復させるには、景気抑制的な政策スタンスをしばらく維持する必要がありそうだ」と述べ、さらに「まだ十分に景気抑制的なスタンスではないというのが、われわれが今日下した判断だ」と述べ、予想されていたよりも「タカ派的」な発言を行いました。消費者物価指数(CPI)は6月をピークに5カ月連続で上昇率を鈍化させてはいますが、一部の指標では「労働市場」に代表されるように、大幅利上げの影響を無視するかのように、堅調に推移しています。2023年は、この労働市場がいつ明確な鈍化傾向を見せるのかによって、相場予想も大きく異なります。市場のコンセンサスは春先まで小幅な利上げが続き、「それ以降は累積の利上げ効果を見極める意味も含めて、様子を見る」というものです。その様子見の期間が2023年末まで続くのか、あるいは秋までとなり、それ以降は利下げのタイミングを探ることになるのか、現時点ではなかなか判断できません。
今回のレポートが今年最後の「今週のレンジ予想」になります。2023年の相場予想については、来春1月13日(金)の「2023年相場展望セミナー」で詳しくお話することになります。ご興味のある方はHPより早めの参加予約をお願いいたします。とは言っても、今年の相場予想は大きく外してしまいました。ロシアのウクライナ侵攻という想定外の事態もありましたが、それを理由に「弁解」することは控えなければなりませんが、ドル高を予想するもせいぜい、125円前後かとみていました。ただ、その後のドル高基調の継続には、基本的には沿ったコメントを行い、11月以降は「ドル高の修正」を基本としています。その流れは来年1月以降も続くと思われます。従って、来年は早い段階で「ドル安円高」が進むと思われますが、それでも、米インフレの進行は「想定以上に手ごわい」ことを理由に、ドル安の限界にも直面すると考えています。
最後に、この1年、本レポートのご愛読に感謝申し上げます。来年も引き続きよろしくお願いいたします。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。