先週も非常に多くのFOMCのメンバーによる講演など、発言機会がありました。市場予想を超える力強い経済指標の上振れに、それらの発言の多くは結果的に利下げ開始の時期を遅らせるという方向に収斂しましたが、中にはミネアポリス連銀のカシュカリ総裁のように、「われわれはインフレに打ち勝つ確信を得るまで無期限で一時停止する必要があると言わざるを得ないだろう」と語り、「インフレ率が目標の2%へ順調に低下しているとの確認が持てない」と述べるメンバーが出るなど、足元では再び上昇傾向を示してきたインフレに「危機感」を表す発言まで出てきました。(参照:What’s going on ?)米金融当局者にとっては、かなり厳しい現実を突き付けられたという印象です。経済指標の上振れを受けて、英バークレイズ証券はこれまでの見通しを、今年度末のフェデラルファンド(FF)金利の目標レンジを5.00−5.25%と、年内に1回で0.25ポイントの利下げに見通しに修正すると、顧客向けのレポートで発表しました。バークレイズ以外にも、米ゴールドマンなども同様に、利下げ回数を下方修正する動きが相次いでいます。
利下げ回数の下方修正やFOMCメンバーの利下げ開始を急がないとする見通しは、ドル円を一段と押し上げ、週明け月曜日の午前中にはドル円は153円74銭まで続伸しています。153円台に入っても「実弾介入」が見られなかったことでドルの買い方にもやや安心感が広がり、鈴木財務大臣は「しっかりと注視しており、万全の対応を取りたいと考えている」と財務省内で記者団にけん制球を投げてはいますが、最早、何の効き目もありません。この状況で円高方向に振れる材料としては「実弾介入」しかないと言える雰囲気になっています。個人的には、足元ではさらに介入の可能性が高まっていると考えます。特に今日は、東京時間でドル円が急伸する場面もあり、まさにこのような時こそ「投機的な動きだ」として、実施すべきだと思います。逆に言えば、ここで介入に踏み切らないと、今夜のNYで154円台に乗せる可能性もあり、155円が視野に入ってくる水準になります。「安心させておいて、一気に介入する」といった戦略も理解できますが、その間水準が切り上がってしまえば、今度は145円以下に押し下げるのが難しくなります。それとも、「今日のアナリストレポート」でも触れましたが、今週18日(木)のG20での会合が終わるまでは介入しにくいのかもしれません。今週はその意味では、非常に重要な週で、注目に値すると思われます。本稿執筆中にも、ドル円は153円85銭まで上昇しています。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。