今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円リスク回避で売られるも底堅い」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は日本時間夕方に153円39銭まで買われたが、NYでは朝方からリスク回避の円買いが加速。一時152円60銭まで売られたが、その後は153円台前半まで反発。
  • ユーロドルは続落。1.0623近辺まで売られ、昨年11月3日以来となる安値に沈む。
  • 株式市場では3指数が大幅安。イランがイスラエルを攻撃したことで、中東情勢が一段と緊張するとの見方からダウは475ドル売られ、およそ3カ月ぶりに3万8000ドルの大台を割り込む。
  • 債券は反発。長期金利は4.52%台に低下。
  • 金は小幅に続伸。原油も買われたが、現時点では中東情勢の影響は限定的。
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3月輸入物価指数 → 0.4%
3月輸出物価指数 → 0.3%
4月ミシガン大学消費者マインド(速報値) → 77.9
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ドル/円 152.60 〜 153.33
ユーロ/ドル 1.0623 〜 1.0655
ユーロ/円 162.27 〜 163.11
NYダウ −475.84 → 37,983.24ドル
GOLD +1.40 → 2,374.10ドル
WTI +0.64 → 85.66ドル
米10年国債 −0.065 → 4.522%

本日の注目イベント

  • 欧 ユーロ圏2月鉱工業生産
  • 米 4月NY連銀製造業景況指数
  • 米 3月小売売上高
  • 米 4月NAHB住宅市場指数
  • 米 ローガン・ダラス連銀総裁、パネル討論会に参加(東京)
  • 米 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁講演
  • 米 企業決算 → ゴールドマン

本日のコメント

中東情勢が一段と不透明さを増してきました。予想されてはいましたが、イランがミサイルと無人機を使ってイスラエルを攻撃しました。イラン国内からは1000キロも離れているイスラエルを攻撃したのは初めてですが、その多くは迎撃され、死亡者は出ていない模様です。

中東での緊張の高まりを背景にドル円はNY時間朝方には152円60銭まで売られ、株価の大幅下落もあり「リスク回避の円買い」が進みましたが、その後は再び153円台前半まで反発しています。ドル円はその前には東京時間夕方に153円39銭まで上昇する場面もあったことから、週末の海外市場でもしかしたら「実弾介入」もあるのではないかと予想していましたが、杞憂に終わったようです。「リスク回避の円買い」が一時的なものなのかどうか、注意深く見て行く必要があります。中東情勢がさらに混迷を増すようだと、「金と原油」が買われそうですが、原油高が続くようだと、むしろ円売り材料と見られるかことから、それほど円買いが進むとは考えにくいと思われますが、どうでしょう。

G7首脳は14日、緊急のテレビ会議を行い、イスラエルに対する直接的かつ前例のない攻撃を「最も強い言葉で」非難しています。G7は共同声明で、「イスラエルに対する全面的な連帯と支援」を表明しましたが、直近まで欧米からは「ネタニヤフ氏の独裁」と、強い口調でパレスチナ自治区ガザにおける非人道的行為を非難していましたが、やや風向きが変わってきたのかもしれません。そもそも今回のイランの攻撃は、今月1日にシリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館を攻撃し、イラン軍将校が死亡したことに対する報復です。依然としてガザ地区への攻撃を続けるイスラエルに対するG7諸国の対応にもやや疑問を感じます。ハマスは、米国がエジプト、カタールが仲介する停戦案について「最新の戦闘休止案を拒否した」と発表しています。一方イスラエルでも、「米政府から数週間にわたって非人道的行為を批判されてきたが、イスラエル国民は再び一体感を取り戻した」(ブルームバーグ)との見方もあります。

今週18日(木)からワシントンで「G20」が開催されます。昨日の日経新聞は、この会合で「ドル高」が議題になるのではないかと報じていました。「ドル一強」が続く中、円はもとより、トルコリラ、インドネシアルピー、フィリピンペソなどが大きく売られています。とりわけ新興国では通貨安によるインフレを懸念する声が高まっていると報じられています。今回の機会を利用して鈴木財務相が、ドル売り介入に理解を求める可能性も指摘されています。もしそうだとしたらそれまでは、政府日銀の「実弾介入」は控えられることも想定されます。ただ、インフレ再燃に直面している米国にとって、「ドル高」はインフレ抑制には、金利引き上げに相当する効果もあり、そう簡単に首を縦に振ることは出来ない相談かとは思います。少なくとも米国も巻き込んだ「協調介入」といったことにはならないでしょう。

先週末にも多くのFOMCメンバーが講演などで米金融政策の今後の在り方について触れていましたが、ほぼ全てのメンバーが「利下げを急がない」というスタンスで一致しています。これで6月会合での利下げは消滅したと思われますが、年内1回なのか2回なのか、あるいは年内はゼロなのか、今後のデータ次第であり、ドルの水準もこれで決まってきます。本日のドル円は152円50銭〜153円80銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
4/11 ラガルド・ECB総裁 「4月には幾つかの情報とデータが得られる。何人かの政策委員会メンバーはインフレ低下について既に十分な自信を持っている」、「しかし、6月には(新たな経済見通しなど)さらに多くのデータと情報が得られるだろう」 --------
4/11 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「インフレ率が横ばいで推移し、実際に低下しない時期が長いほど、われわれはインフレに打ち勝つ確信を得るまで無期限で一時停止する必要があると言わざるを得ないだろう」、「インフレ率が目標の2%へ順調に低下しているとの確認が持てれば、当局者は利下げに踏み切るが、最近のデータからその確信は得られない」 --------
4/11 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「われわれはまだ、望んでいる状況に達していない。より長期的な道筋は、われわれが正しい方向に向かっていることを示唆しているが、時間をかけることが賢明だろう」 --------
4/11 コリンズ・ボストン連銀総裁 「全体として、最近のデータは私の見通しを大きく変えるものではないが、時期に関する不確実性と忍耐の必要性を浮き彫りにしている。正当化され得る今年の政策緩和が従来考えられていたよりも少ないことを示唆している」 --------
4/11 ウィリアムズ・NY連銀総裁 「金融当局はインフレと雇用の目標におけるバランス改善に向け、極めて大きな進展を遂げた」、「ごく近い将来に政策を調整する明確 な必要性はない」 --------
4/11 神田・財務省財務官 「行き過ぎた動きに対してはあらゆる手段を排除せずに適切な対応を取る」、「必ずしも特定の水準を念頭に置いて判断しているわけではない」、「過度な変動は国民経済の悪影響を与える」 --------
4/10 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「われわれはかなり前進していると思うが、そこに至るのがいかに容易であるかについては謙虚である必要がある。3月のCPIはインフレ抑制に一定の時間がかかることを示唆している」 --------
4/10 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「今年最初の3カ月は間違いなく悪化している。まだ道のりはあるが、昨年よりも物価押し下げと高水準の雇用維持のトレードオフが多くなりそうな地点に至りつつある」 --------
4/10 サマーズ元財務長官 「次の政策金利の動きが下向きではなく、上向きになる可能性を真剣に考えるべきだ。その確率は15−25%のレンジと見ている」 --------
4/9 植田・日銀総裁 「基調的な物価の上昇率はまだ2%を下回っていて、緩和的な金融状態を維持することが大切だ」、「見通し通りに2%に向けて上がっていけば、金融緩和を少し緩める判断も可能だ」 --------
4/9 ポスティック・アトランタ連銀総裁 「リスクは均衡していると私は見ており、米経済が極めて堅調で力強く、強靭なことを考えると、利下げがさらに遠のく可能性も排除できない。しかし、労働市場に大きな痛みが生じることを示唆する別のシグナルが出始めたら、政策スタンスを変更し、おそらく利下げを始めることに私はオープンだ」 --------
4/8 ブラード・前セントルイス連銀総裁 「現状では恐らくFOMCとパウエル議長の発言を額面通り受け止めるべきだ。現時点で彼らの最も有力な予測は引き続き今年3回の利上げだ。それが基本シナリオだ」 --------
4/5 ローガン・ダラス連銀総裁 (インフレ率の上昇や、借り入れコストが以前考えられていたほど景気を抑制していない事実を理由に挙げ)、「こうしたリスクを踏まえると、利下げについて考えるのはあまりに早過ぎる」 --------
4/5 ボウマン・FRB理事 「インフレ率が当局の2%に向かって持続的に低下していることが今後のデータで引き続き示唆されれば、金融政策が過度に抑制的にならないよう政策金利を徐々に引き下げるのがいずれ適切になるだろう」、「しかし、政策金利を引き下げるのに適切な地点にはまだ至っていない。複数のインフレ上振れリスクが引き続き見られる」 --------
4/4 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「一段の明瞭さを得るべく利下げまでに時間をかけるのが賢明だ」 --------
4/4 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「年初に予想を上回るインフレ指標が示されたものの、物価の伸びが鈍化しているという全体像が変わることはないだろう」 --------
4/4 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 「現在の状況はあるべき姿ではない。インフレはなお高すぎる」 --------
4/4 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「インフレの横ばい推移が続くようであれば、利下げを実施する必要があるのかどうか疑問が生じる」、「特に、経済が堅調を維持する場合はなおさらだ」 NYダウ530ドル下落。ドル円はリスク回避から151円70銭台から151円13銭まで売られる。
4/3 クーグラー・FRB理事 「堅調な供給を背景に需要の伸びが鈍化しているため、失業率がかなり上昇することなく、さらなるディスインフレが実現するというのが私の基本的な予想だ」、「ディスインフレと労働市場の現状が私の予想通り進めば、今年中に政策金利をいくらか引き下げるのが適切だろう」 --------
4/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「今年末、つまり第4四半期の利下げを開始するのが適切になると思う」、「インフレの軌道が鈍化すれば、多くの人が予想している以上に辛抱強くなる必要があるだろう」 --------
4/3 パウエル・FRB議長 最近のインフレデータは予想を上回ったものの、全体像を有意に変えるものではなかった」、「年内どこかの時点で利下げを開始するのが適切になる可能性が高い」、「経済の強さと、インフレ面でのこれまでの進展を踏まえれば、今後発表されるデータに政策判断を導いてもらう時間はある」 --------
4/2 デーリー・SF連銀総裁 「成長は好調なので、金利を調整する緊急性はない。これは非常に合理的な基本シナリオだと思う」 --------
4/2 メスター・クリーブランド連銀総裁 「利下げを開始する前にインフレが鈍化しているというさらなる証拠を目にしたい。今年は3回の利下げが適切になる可能性が高いが、それより少ない回数が必要になるのかどうかは五分五分だ」 --------
3/29 パウエル・FRB議長 「米経済が非常に堅調なペースで成長し、労働市場も極めて強いという事実は、われわれが利下げという重要な一歩を踏み出す前にインフレ率の低下についてもう少し確信を強める機会を与えてくれる」、「早過ぎる利下げがインフレの再燃を招く一方、遅すぎる対応は、不必要ダメージを経済に与えることになり、慎重な対応が必要だ」、「利上げを急ぐ必要はない」 --------
3/27 ウォラー・FRB理事 利下げに踏み切る前に、少なくとも数カ月分の良い内容のインフレデータを目にしたい」、「最近の経済データでは年内に予想される利下げを遅らせるか、利下げ回数を減らすことが裏付けられる。金利引き下げを急ぐことはないと」 --------
3/27 神田・財務省財務官 「最近の円安の進展はファンダメンタルズに沿ったものとは到底言えず、背景に投機的な動きがあることは明らかだ。行き過ぎた動きに対してはあらゆる手段を排除せずに適切な対応を取る」、「最近の円安傾向はなだらかなものとは到底言えない」 介入警戒感が強まり、151円97銭まで買われたドル円は、その後151円03銭前後まで下落。
3/25 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「これに関して私の予想は中央値だった」(3回の利下げを見込んでいた) --------
3/25 クック・FRB理事 「雇用とインフレの2大責務はより良いバランスになりつつある」、「しかしながら物価の安定を完全に回復するためには、時間をかけて金融政策を緩和する慎重なアプローチが必要になるだろう」 --------
3/25 ボスティック・アトランタ連銀総裁 (年内の利下げは1回にとどまるとの見方を改めて示し)、「自身の見通しに沿って経済が推移すれば、忍耐強くいられると思う」 --------
3/22 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「インフレの軌道について昨年12月時点よりも確信がない。主要な数字の陰には厄介なことがいくつかある」、「今年の利下げは1回に留まると現時点では予想している」 --------
3/20 パウエル・FRB議長 「インフレ率が目標の2%に向う全体的なストーリーは変わっていない。たとえ労働市場が堅調であっても、利下げ開始を止められないだろう」 ドル円は151円台半ばから150円74銭まで下落。株価は大幅高。債券も小幅に買われる。
3/20 FOMC議事録 「最近の複数の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大していることを示唆している。雇用の伸びは強さを維持しており、失業率は低いままだ。インフレはこの1年で緩和したが、依然として高い水準にある」、「委員会は目標実現を支えるため、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標レンジを5.25−5.5%に据え置くことを決めた。FF金利誘導目標レンジに対するいかなる調整も、委員会はそれを検討する上で、今後入手するデータや変化する見通し、リスクのバランスを慎重に見極める。委員会はインフレ率が持続的に2%に向っているとの確信を強めるまで、誘導目標レンジの引き下げが適切になるとは見ていない」 --------
3/18 ウォーレン・サンダース議員などからの書簡 「利下げに向けた明確かつ迅速なタイムテーブルを提示するよう」、(利下げは)「理想的には5月のFOMCから開始するのが望ましい」 --------
3/9 バイデン大統領 「保証はできないが、金利はもっと下がるのは間違いない」、「金利を決定する小さな組織が今後引き下げに動くと確信するからだ」 --------
3/7 パウエル・FRB議長(議会証言) 「インフレ率が持続的に2%に向かっているとの確信が強まるのを待っている」、「その確信を得た時点で、今から遠くないその時点で、景気抑制の度合いを巻き戻し始めるのが適切になるだろう」 株と債券が買われ、ドル円は147円52銭まで下落。
3/7 中川・日銀審議委員 「2%の物価安定目標の実現に向けて、着実に歩みを進めている」 ドル円は148円台後半から148円台半ばまで売られる。プラス圏で推移していた日経平均株価も大きく下落。
3/6 パウエル・FRB議長(議会証言) 「インフレとの闘いで勝利したとの確信を得るまでは性急に利下げに動く考えはない」、「年内いずれかの時点で、利下げを開始するのが適切になる可能性が高い」、「当局としてはまだその用意はない」 株と債券が買われ、ドル円は149円10銭まで下落。
3/4 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「7−9月に1回利下げを始めるのが適切だ」、「利下げが連続したものになることは恐らくないだろう」、「不確実性を考えると、行動を起こした後に市場参加者や企業幹部、および家計がそえにどう反応するかを見ることがある程度望ましいのではないかと思う」 株と債券が売られドルが買われる。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和