先週と異なり上値を徐々に重くしてきたドル円は、週明け19日には再び大きく売られる動きを見せています。午前中は147円台半ばから後半で推移していたドル円は午後12時半、東京株式市場の後場寄り付きから株価が大きく下げる動きに呼応したのか、147円を割り込み、午後には145円20銭辺りまで急落する動きとなりました。特に目立った材料は出ていないようですが、今週はジャクソンホール会合でのパウエル議長の講演も予定されていることから神経質な展開は予想されましたが、ドル円も株価も再び下向き方向に変わってきた可能性があります。
先週発表されたシカゴIMMの通貨先物市場の建玉には正直驚きました。記録的な「円売りポジション」の解消に伴い円高が急速に進み、ネット売りポジションもほぼなくなる事は想定内でしたが、発表された8月13日時点での枚数は何とネットで「買いポジション」に変わっていました。「2万3104枚」の円買いでした。円の買い持ちは、2021年3月9日以来のことで、実に3年5カ月ぶりに「円買いドル売り」になっています。これだけを見ると、ヘッジファンドなどの投機筋は、今後円高ドル安がさらに進むと予想しているかに思えますが、筆者はこのポジションが今後増えることはあっても、円売りの時のように極端に積み上がることはないものと考えています。円とドルの金利差が逆転することがない以上、「ドル売り円買い」は長くキャリー出来ないからです。因みに、2021年3月9日に終わった「円買いポジション」の継続期間はちょうど1年です。またそれ以前の「円買いポジション」はわずか2カ月の短命に終わっています。キャリーコストを考えると「円買いドル売り」は、長く保有しにくいということです。
さて今週は23日にジャクソンホール会合でパウエル議長の講演があります。今後の利下げスタンスを探るには絶好のチャンスかと思われますが、議長の発言は言葉を選び、かなり慎重な物言いになると予想します。少なくとも「緊急に大幅な利下げが必要だ」といったハト派発言はないだろうと思います。
また偶然同じ日になりましたが、23日には植田総裁が衆院財務金融委員会で、利上げや株価の乱高下に関して意見を述べることになっています。わずか25bpの利上げが過去最大の株価下落の一因になったこともあり、今後の追加利上げにはこちらも慎重にならざるを得ません。筆者は他の理由も含めて、日銀による年内の追加利上げはなく、利上げは来年に持ち越されると予想しています。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。