今朝書いた「今日のアナリストレポート」に続き、トランプ次期大統領についての考察です。あれだけ「大接戦」と騒がれた今回の米大統領選。終わって見れば激戦7州も全てトランプ氏の勝利でした。一時はこの7州全体でわずかですが「ハリス氏がリード」との調査結果もありましたが、7州全てで敗北とは正直驚きでした。「隠れトランプ」も多くいたと思われますが、端的に言って、バイデン氏が民主党の大統領候補で、初めてのテレビ討論会で覇気がなく、一気にバイデン氏の年齢を国民に改めて知らしめた時点ではすでに遅く、もっと早くからポストバイデンを画策すべきだったと思われます。遅まきながらもハリスを候補に立てて巻き返しを図った民主党でしたが、ハリス旋風も最初だけでした。最終的にトランプ氏は「312人」の選挙人を獲得し、ハリス氏は「226人」と、トランプ氏の圧勝でした。これは2016年にトランプ氏が最初に大統領に勝利した「304人」を上回っています。
議会ではすでに上院で共和党が過半数を確保しており、下院はまだ決着がついていませんが、共和党が勝利する可能性があります。仮にそうなると、いわゆる「トリプル・レッド」となり、政権だけではなく、上院下院も共和党が支配することになり、トランプ氏が政策を実行しやすくなります。選挙中の公約の中でも、特に米国のインフレを押し上げ、米金利の上昇圧力になるのが、トランプ減税の延長と法人税の引き下げになります。
前者については2017年に成立した減税で2025年末に期限が切れますが、これを「恒久的に延長する」というものです。延長には議会の承認が必要ですが、上でも述べたように、上下院を共和党が支配すれば議会通過は極めて容易になります。「単純に延長すれば景気へのマイナスは避けられるが、米議会予算局は財政赤字が今後10年間で4.6兆ドル(約706兆円)拡大する要因になるとはじいている。」(日経新聞)、そうなると格付け会社は米国の格付けを引き下げる可能性も出てきます。もっとも、すでに米国債の格付けは唯一、ムーディーズだけが最上級の「Aaa」を維持していますが、他の大手、スタンダード&プアーズと、フィッチは上から2番目に格付けにしているため、それほど影響はないかもしれませんが、いずれにしてもドル安要因になることと思われます。
足元のドル高・株高は、米金利上昇と、減税・法人税引き下げなどを先取りした「トランプトレード」を反映していますが、このままドル高が進むかどうかは未知数です。そもそも、トランプ氏の過去の発言からすると、ドル高は米国にとってマイナスとの考えがあると思われ、いつ何時、「ドル高は行き過ぎ」との発言が飛び出すかわかりません。今回大統領に返り咲いたトランプ氏は、これが最後の任期です。それだけに歯に衣着せぬ発言は前回よりもより多く発せられるのではないでしょうか。「やりたい放題」とまでは言いませんが、「怖い者なし」のトランプ氏が、市場のかく乱要因になるのは、まず間違いないと考えます。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。