ご存知のように、米の価格が急騰しています。政府は急遽「備蓄米21万トン」の放出を決めましたが、多くの専門家からは、「これで米の価格が下がるかどうかは分からない」という意見が多いようです。われわれの主食でもある米の価格は、1月27日時点のスーパーの店頭では、前年同期比で82%も上昇しているそうです。(農水省がPOSデータを基に集計)これは明らかに農水省の政策がお粗末だからです。かつて、1970年代には、豊作が続き米の値段が大きく下がった時に、農水省は価格安定のため農家に「減反」を迫りました。農家を守るために、「減反」政策を採った同省が、今度は価格が急騰して国民が困っているのに、価格を下げる政策を採らなかったことは、政策ミスと言われても仕方ありません。「備蓄米21万トン」の放出も、遅すぎた感があります。
今週は21日(金)には、日本の「1月の消費者物価指数(CPI)」が発表されますが、上記米の価格上昇の影響は数カ月のタイムラグをもって財やサービス価格の上昇に波及するとみられています。市場予想は、「総合」で4.0%(12月は3.6%)、生鮮食品を除く「コア指数」では3.1%(12月は3.0%)、さらに生鮮食品とエネルギーを除いた「コアコア」では2.5%(12月は2.4%)と、いずれも前月を上回ると見られています。米国の直近CPIは「総合」で3.0%でした。日米の実質金利を見ると、米国は長期金利が4.47%ですから「1.47%のプラス」です。(4.47−3.0)一方、日本は「2.63%のマイナス」です。(1.37−4.0)一般的に、実質金利がマイナスの通貨は売られ易いと言われていますが、足もとのドル円はやや円高気味の動きを見せています。先月日銀は半年ぶりに政策金利を0.5%に引き上げました。今週発表の1月のCPIが予想を上回るようだと、個人的は次回の追加利上げは7月と予想していますが、これが早まる可能性も浮上します。そうなると、日米金利差縮小と、政策金利引き上げを嫌う株価の下落が、リスク回避の円買いを誘い、150円を割り込む可能性が高いと予想されます。米国ではインフレ再燃の可能性が高いと思われますが、その割には円が徐々に買われる動きが続いています。これは偏に、トランプ政策の不確実性がなせる技かと思います。先週、トランプ氏は「相互関税」を例外なく各国に当てはめていくと宣言しました。自動車や半導体などの関税が引き上げられ、日本も今後厳しい局面に立たされる可能性が高まっています。為替、株式など金融市場は、「トランプ大統領が次に何を仕掛けてくるのか、戦々恐々としている状況」です。大統領就任から2カ月が経ち、就任前から公言していた公約は大方実行に移したと思われますが、まだ手の内を全て見せたわけではありません。「相互関税」は4月に発動するのではないかと言われていますが、ここは推移を見守るしかありません。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。