「相互関税」が90日間延期されたことや、スマートフォンなど一部電子機器が一時的かもしれませんが、適用除外になることなどから、週明けの東京市場では日経平均株価が一時700円程上昇するなど、リスク回避の流れがやや後退気味です。ただ、NYでは144円台まで上昇したドル円については、再び円高方向で推移し、午前中には142円25銭まで売られています。
今週は、赤沢経済財政・再生大臣が訪米し、17日(木)にはベッセント財務長官と日本に対する関税について協議することになっていることが、くすぶっているようです。ベッセント財務長官はすでに、日本に対しては楽観的な内容になると示唆していましたが、こればかりは蓋を明けて見なければわかりません。赤沢大臣は先週、為替に関して交渉するかを問われ、「相手方が持ち出すことについて、最初から頭ごなしにシャットアウトすることは出来ない」と答え、その上で、「そういう話題が米国側から出れば、もちろんそれについて議論に応じることになる」と話していました。
仮に為替が議題に上がるとすれば、現在の水準よりも円高方向で合意する公算が高く、市場もその辺りを意識し始めているといった状況です。もしそうだとすれば、ドル円は「議題に出た」というヘッドラインだけでも節目の140円を割り込む可能性がありそうです。日本に対する25%の相互関税はある程度軽減されると予想していますが、同時にそのために米国が何を求めてくるのかが焦点です。因みに、米商品先物取引委員会(CFTC)が発表した8日時点でのヘッジファンドなどが利用していると見られるポジションは、記録的な「円買い・ドル売り」である14万7千枚に膨らんでいました。投機筋は今後円高方向に振れると考え、ポジションを構築していると見られます。
トランプ大統領は、免税措置については、「14日にその答えを教えよう。14日にかなり詳しく説明する」と述べており、今夜にもその詳細が判明するかもしれませせん。多くの貿易相手国がトランプ政権に接触し、関税の減免措置を願い出ているようです。中にはベトナムのように、すでに互いが関税ゼロで合意に近い国もあるようです。トランプ氏が良く口にするのが、「米国では何百万台の日本車が走っているが、日本で米国車が走っているのは見たことがない」といったフレーズです。これはオバマ元大統領も述べていたことです。日本政府は、米国車には関税をかけていません。つまり、関税障壁はないことになります。それでも米国車が日本で売れないのは、その理由があるからに他なりません。まず、大きいことで燃費が悪い。さらに右ハンドルの車を製造していない。また、電気系統の故障が多い、そして極め付きは、米国車はデザイン等が魅力的ではないということです。上記欠点は、多少言い古されたことで、旧聞に属することかもしれませんが、要はドイツ車に比べ総合的に劣っているということです。米国で多くの日本車が走っているのは、米国人が選んだ結果で、日本で米国車が走っていなのも日本人が選んだ結果です。それを関税という「伝家の宝刀」を持ち出すトランプ氏こそ、フェアーではないと思いますが、どうでしょう。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。