貿易相手国に対する「トランプ関税の過激度」により、相場が上下する展開が続いています。対中の異常な関税率が収まり合意に達した際に、ドル円は148円台半ばまで買われましたが、その後はじり安となり、先週末EUに対して50%の関税賦課を示唆したことでドル円は142円台半ばまで売られる展開でした。今後も4月2日に発表した「相互関税」が、日本やEUも含めてどの程度に軽減されるのかによってドル円の水準も決まってきそうです。その結末はトラン大統領を除いては誰もわからないのが実情です。トランプ関税がどこで決着するのか不確実性は依然高い状況ですが、その結果、米国にインフレが再燃するのか、あるいは想定されるほど物価は上昇しないのかも焦点です。これについて先週末、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は、市場の不安を代弁するような発言を行っていました。
総裁はブルームバーグとのインタビューで、まず初めに「あらゆる可能性がある」と発言し、金融当局が9月までに動くかどうかは、「現時点ではわからない。データを見る必要がある。関税も交渉の進展も注視しなければならない。今後数ヵ月以内にまとまれば、われわれが求めている明確さの多くがもたらされるだろう」と述べ、米国の貿易・移民政策の大きな変化が、米金融当局の政策判断に多くの不確実性をもたらしているとの認識を示していました。先週までに示されたインフレ関連指標では、まだ関税の影響が及んでいないこともありますが、ほぼ全ての指標がインフレ懸念を後退させていました。
今週30日(金)には、FRBが最も重要視していると言われている「4月のPCE価格指数」の発表があります。市場予想は、変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数は前月比で「0.1%の上昇」が見込まれています。(3月は変わらず)PCE価格指数が引き続き安定していることから、FRBは政策金利の据え置きを示唆することになると思われます。カシュカリ総裁も述べていた様に、通商政策のデータが確認されるまで政策変更を待つことになりそうです。
ドル円は徐々に上値を重くしています。今朝も142円23銭近辺まで売られる場面がありましたが、目先の節目は4月29日に記録した141円97銭前後かと見ています。要は、142円前後を保てるのかどうかがポイントで、その水準を下回れば4月22日に付けた141円台半ばということになります。EUに対する関税の適用を7月9日まで延長したことについてトランプ大統領は「われわれは非常に良い会談を行った。私は延長することに同意した」と述べていましたが、その内容については明らかにされていません。対中国の時と同様に、「ポジティブ・サプライズ」であればドル円が急反転する可能性も意識しておきたいところです。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。