今週のレンジ予想[毎週月曜日 更新]

今週のレンジ予想
7月21日 〜 7月27日
ドル/円
145.00〜150.00
ユーロ/円
169.00〜174.00
豪ドル/円
94.00〜98.00

トランプ大統領が執拗にパウエル議長に利下げを求める発言を繰り返し、金融市場に新たな動揺をもたらしています。トランプ氏はかねてから、自身の利下げ要求を拒んできたパウエル氏を批判してきましたが、ブルームバーグは、そうした中トランプ氏が近くパウエル氏を解任させる可能性が高いと、ホワイトハウス高官の話として伝えています。

ただ実際に現職議長を解任させるのは簡単ではありまません。連邦準備制度法第10条では、FRBメンバーを解任できるのは「正当な理由」がある場合と規定しており、パウエル議長もそのメンバーの一人だからです。米調査会社「マーケットパルス」が今月17、18日に「パウエル議長の任期途中での解任について」行った最新の調査では、回答した146人のうち81%」が「パウエル氏は26年より前にFRBを去る可能性はない」と答えていました。そして「10%」が「9月のFOMC前に」、「9%」が「12月のFOMC前に去る」と回答しており、多くの専門家がパウエル氏は任期まで務めると予想していることが分かりました。当然の結果だと思います。また希望を持てるのは、トランプ政権の中で、「最も良識派」と見られているベッセント財務長官がパウエル氏の解任には反対している点です。ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は、ベッセント氏がトランプ氏にパウエル氏を解任すべきではないとの考えを、内々に伝えていると報じています。ベッセント氏はその理由として、1.景気や市場に与える影響、2.FOMCは既に年内の利下げに向けて動き出している、3.解任の場合、政治的・法的な障害に直面する公算が大きい、と説明している模様です。

トランプ政権の中でも、最もトランプ氏に近く、常に意見を求められるベッセント氏は、政権の中でも別格で、特に金融出身のベッセント氏がパウエル氏解任に反対するようだと、そう簡単に自身の好き嫌いだけでは押し切れそうもない気がします。ただ、筆者は調査結果よりもややネガティブです。それは、トランプ氏は第一次政権時代から自身に逆らう「敵」をことごとく更迭してきた「実績」があるからです。トランプ氏にとって、米財務省が発行する米国債の利払いを、できるだけ減らしたいのは「必須」です。大型減税・歳出法案を可決させたことで、今後10年間で財政赤字が3兆4000億ドル(約500兆円)増えると試算されています。そのため国債の利払いを減らしたいだけではなく、メディケイド(低所得者向け医療保険)のカットや公務員の大幅削減など、同法のコストを相殺し、赤字を削減るために複数の歳出削減策が盛りこまれています。

売り圧力に直面している日本の長期債利回りが22日午前中、節目の1.5%を超えました。財政赤字が拡大し、国債の増発懸念が債券売りにつながっています。午後には長期債は買い戻され再び1.5%を割り込みましたが、石破首相続投が決まった以上、減税実施は簡単ではないといった見方が広がりました。第一生命経済研究所の藤代宏一主席エコノミストは10日、日銀が発表した「桜リポート」を受け、「7月中に日米の通商政策が合意に近づくことを条件に、日銀が7月会合で利上げに動く可能性が十分にあるとみている。その点、今回のさくらレポートは利上げの根拠になり得るヒアリング情報が多数あったと判断している」と、先週末の顧客向けレポートで述べていました。日米関税協議が宙ぶらりんの中、筆者は利上げはないものと予想しています。

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来週の「今週のレンジ予想」は都合によりお休みとさせていただきます。ご愛読者の皆様にはご不便をおかけいたしますが、ご理解のほど宜しくお願い申し上げます。

今週の注目材料

  • 7/21(月)
    米 6月景気先行指標総合指数
    米 決算発表 → ベライゾン
  • 722(火)
    豪 RBA、金融政策会合議事要旨公表
    米 7月リッチモンド連銀製造業景況指数
    米 パウエル・FRB議長、会議冒頭挨拶
    米 決算発表 → コカ・コーラ、GM
  • 7/23(水)
    日 内田日銀副総裁、高知県金融経済懇談会で講演
    欧 ユーロ圏7月消費者信頼感指数(速報値)
    米 6月中古住宅販売件数
    米 トランプ大統領、AI政策を巡り演説
    米 決算発表 → AT&T、テスラ、アルファベット、IBM、
  • 7/24(木)
    独 独7月GFK消費者信頼調査
    独 独7月製造業PMI(速報値)
    独 独7月サービス業PMI(速報値)
    欧 ECB政策金利発表
    欧 ラガルド・ECB総裁記者会見
    欧 ユーロ圏7月製造業PMI(速報値)
    欧 ユーロ圏7月サービス業PMI(速報値)
    英 英7月製造業PMI(速報値)
    英 英7月サービス業PMI(速報値)
    米 新規失業保険申請件数
    米 7月新築住宅販売件数
    米 7月S&Pグローバル製造業PMI(速報値)
    米 7月S&Pグローバルサービス業PMI(速報値))
    米 7月S&Pグローバル総合PMI(速報値)
    米 決算発表 → インテル
  • 7/25(金)
    日 7月東京都区部消費者物価指数
    日 5月景気先行指数(CI)(改定値)
    独 独7月ifo景況感指数
    英 英6月小売売上高
    米 6月耐久財受注
  • 7/26(土)
  • 7/27(日)
 
※尚、このサイトは情報提供を目的としており、投資勧誘を目的とするものではございません。投資の最終判断はご自身でなさるようお願い致します。本サイトの情報により皆様に生じたいかなる損害については弊社及び執筆者には一切の責任を負いかねます。

外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和

邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。

・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。

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外為オンラインのシニアアナリスト 
佐藤正和

邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。