米国が日本から輸入する品目に対する15%の一律関税が今週7日(木)から発動されます。関税率が15%で決着したことについては賛否両論あるようですが、ひとまず最悪の事態は避けられたようです。一方今回の教訓は、同盟国といえども容赦のない内容あったことも事実で、「良い経験」として今後の外交政策に生かしていくべきでしょう。今回の合意では、赤沢経済再生相が何度も口にしていましたが、「パッケージ」として提示したことが米国側を納得させたようです。日本は15%の関税に加えて5000億ドル(約82兆円)の対米投資を約束し、これが前例になったのか、韓国は「15%プラス3500億ドル」、EUも「15%プラス6000億ドル」で合意しています。トランプ大統領とすれば、関税という「大金(Big Money)」が入るだけではなく、対米投資でも巨額の資金を呼び込むことに成功し、「してやったり」といったところでしょう。
あとは執拗にパウエル議長に圧力をかけ続けている「政策金利の引き下げ」ですが、こちらも先週末の雇用統計を受け、次期FOMC会合ではまず間違いなく利下げを実施するはずです。労場市場の減速を踏まえてFRBが利下げを決断しますが、9月会合までには時間も相当あることから、労働市場が本当に減速し雇用の伸びが鈍化しているのかを確認する期間になります。9月会合での利下げが確実とすれば、トランプ氏はその下げ幅にも圧力をかけてくる可能性があります。通常は25bpという幅をもって金利を上下させますが、筆者は今後のデータ次第では50bpの可能性も排除できないと考えています。ただ、トランプ氏はその程度で満足するはずはありません。最低でも1ポイント(100bp)、あるいは3ポイント(300bp)下げろと言って来るかもしれません。株価の大幅高と大量に発行されている国債の金利負担軽減だけを望んでいるトランプ氏にとって、大幅利下げはまさに、「一石二鳥」になるわけです。
先週は週末に雇用統計の発表がありましたが、日米金融当局がいずれも金融政策の据え置きを決めた週でもありました。これがもし、雇用統計後のFOMC会合であったならば恐らくすんなりと利下げが決められていたと思います。日銀にとっても15%の関税が決まり、環境的には利上げを実施しやすい状況だったと思われますが、見送られました。その最大の要因に「政局の不安定」が挙げられます。石破首相は続投に意欲を見せていますが、政権は「風前の灯火」でしょう。自民党内の若手や旧安倍派の幹部らは揃って参院選大敗の責任を追及しており、辞任は不可避の状況です。その意味では、今週8日(金)に行われる自民党の両院議員総会が最大の山場になります。続投の芽があるのか、あるいは次期首相の名前も見えて来るのか注目です。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。