日本に対する相互関税は日米双方の認識の違いがあり、気を持たせましたが、先週末赤沢経済再生相とベッセント財務長官およびラトニック商務長官が話し合った結果、日本側の主張が通り合意に達しました。実施時期に関しては依然として不明な点もありますが、これで晴れて米国へ輸出する際の関税が決まり、輸出企業としても厳しい状況ではありますが、ある程度採算をはじき出すことが出来、安心感が広がりました。これを好感したのか、先週末と連休明けの日経平均株価は連日の高騰を見せ、昨年7月に記録した日中の最高値である4万2849円を超える動きを示しています。ドル円はドルの上値が重い中でも株価の上昇からリスク選好が進み、148円44銭辺りまで円安が進みましたが、大きな動きにはなっていません。今夜発表される「米7月の消費者物価指数(CPI)」を見極めたいとする雰囲気が優勢となっています。
ベッセント財務長官は日本経済新聞社との単独インタビューに応じ、同社は11日付けの朝刊でその内容を報じていました。長官が為替に関してどのような認識を持っているのか、興味のあるところであると同時に、今後の相場展開を予想する上でも極めて重要な点になります。ベッセント氏は「強いドルを支持する」と述べていましたが、そもそも「強いドル」とはどのような定義であるのかとの問いに、「強いドルとは画面上の相場のことではない。他の通貨との相対価格である市場レートではなく、『強いドル』とは米ドルを基軸通貨として維持し続ける政策を指す。良い経済政策が実行されれば、ドルは自然と強くなる」と述べ、対円や対ユーロでドルが上昇することではないと答えていました。また次期FRB議長に求める資質についても述べていました。ベッセント氏は自身の議長就任についてはすでにトランプ大統領に、その意志がないことを伝えていますが、候補者として名前が挙がっている人物に加え、ダラス連銀のローガン総裁やブラード前セントルイス連銀総裁の名前を挙げています。その上で、ベッセント氏は、「市場の信認を得られる人物であり、複雑な経済データを分析できる人物でなければならない。FOMCで投票権を持つ委員は12人で、コンセンサスを得るためにそれを管理できる能力も必要だ。過去のデータに頼るのではなく、鋭敏に先行きを予測できる人物であることも条件となる」と、極めて正論的な意見を述べていました。少なくとも、トランプ大統領がパウエル議長に「遅い!利下げしろ!」と執拗に圧力をかけている姿勢とは異なり、この点ではやや安心できそうです。
今週の焦点は今夜発表の米CPIですが、予想より上振れたしたとしても、149円台、150円台ではドル売り注文が待ち構えているものと思われます。恐らく今月21日〜23日に開催予定の、夏恒例の「ジャクソンホール」シンポジュウムではパウエル議長から利下げに関わるヒントが出るものと予想しています。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。