先週のFOMC会合では、大方の予想通り0.25ポイントの利下げを決め、声明文でも、さらにパウエル議長自身も「労働市場の良い時代は終わった」と宣言し、政策の軸足をインフレから雇用に移す姿勢を鮮明にしました。FOMCメンバーが予想する政策金利の推移であるドットチャートでも、年内残り2回の会合全てで0.25ポイントの利下げが示唆されていました。ただ、翌日の失業保険申請件数でそれを打ち消すような数字が示されたのは気になるところですが・・・・。この決定にサマーズ元財務長官は、FRBの政策は緩和的過ぎる方向に傾いているとの考えを示し、米経済にとって最大のリスクは「雇用ではなくインフレにある」と、異議を唱えています。サマーズ氏はブルームバーグ・テレビジョンで「すべての金融情勢を踏まえると、現時点の政策は一般に見なされているよりもやや緩めだとみている」と述べ、「リスクのバランスは、失業よりもインフレの方にやや傾いている」と語っていました。FOMC声明文やパウエル議長が「リスクはインフレよりも雇用にある」と判断したこととは全く逆の見方です。サマーズ氏は「この状況で最大のリスクは、2%のインフレ目標とのつながりを失い、インフレ心理が根付いた国になることだ」と述べ、さらに「金融政策とその発信という点で、やや緩めの姿勢にあると思う」とした上で、「ただし、あくまで程度の問題だ」と付け加えていました。また、サマーズ氏は「もし自分がパウエル議長の立場にいるなら、最も大きな懸念はインフレの側にある」と話していました。
今日9月22日は「プラザ合意40周年」にあたります。筆者も当時は現役の為替トレーダーでしたので、その時の状況は今でも鮮明に記憶に残っています。日本では当時の大蔵大臣は後に首相となる竹下氏でしたが、竹下氏はマスコミに気づかれないようにと、ゴルフに出かけるラフな格好で羽田から飛び立ったことは有名な話です。NYのプラザホテルに、日米に加え、独英仏の財務相・中央銀行総裁が極秘に集まり、「ドル高修正で合意」したのが「プラザ合意」で、これがのちの「G7」、「G20」に発展しました。当時のドル円は242円台でしたし、まだユーロも誕生していません。日経平均株価は1万2000円台でした。「プラザ合意」以降、世界で最初に開いた主要市場である東京市場ではドル売りが殺到し、世界中の市場参加者がドル売りに走りました。ドル円は棒下げし、短期間で200円を割り込み、さらに190円も割り込み、「円高不況」といった文字が新聞紙面の一面を飾ることになります。こうして見ると、やはり40年というのは長い年月であり、この間様々な事件が起きていることに気が付きます。今度FOMCメンバーに入った米経済諮問委員会(CEA)のミラン氏は、トランプ大統領に「マールアラーゴ合意」の必要性を説明した人物だとされており、再び「第二のプラザ合意」があるのか気になるところです。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
