日経新聞は13日(土)の朝刊一面で、「日銀0.75%に利上げへ」と、今週の決定会合で利上げを決めると報じていました。記事では「日銀は18〜19日に開く金融政策決定会合で政策金利を現在の0.5%から引き上げる最終調整に入る。0.25%引き上げて0.75%とする案が有力で、1995年以来30年ぶりの金利水準に達することになる」と、利上げが確実であるとの報道内容でした。筆者も先週の早い段階で利上げはほぼ間違いないと予想しましたが、ここまで利上げの確度が高まれば、最早それ自体材料にはならない可能性が高く、反対に、植田日銀総裁が今後の利上げペースが緩やかになるといった印象を与えるような発言を行うようだと、円が売られることもあり得るかもしれません。焦点は2026年度では何回利上げがあるのかという点に尽きます。ターミナルレートを、仮に「1.5%」と見れば、あと3回。「1.25%」と見れば、あと2回ということになります。筆者は、最大でも2回、状況によっては2026年度で利上げはわずか1回という可能性もあるのではないかと予想しています。
同じように、FOMCでは2026年度に何回利下げを行うのかも、もう一方の重要な課題になります。先週、FRBは3会合連続となる利下げを決め、FF金利の誘導目標レートは3.5―3.75%になりました。今朝の「今日のアナリストレポート」でも触れましたが、来年5月で任期を終えるパウエル議長の後任には、国家経済委員会(NEC)のハセット委員長が指名されると予想していますが、同氏はトランプ大統領の意向を受け、大幅利下げに積極的です。先週行われたFOMC会合でも唯一人、0.5%の大幅利下げを主張していました。「利下げの余地は十分ある、それも今がそのタイミングだ」と述べているハセット氏がFRB議長に就任すれば、当然利下げのスピードは早まると予想されますが、果たしてそうでしょうか?
10日のFOMC会合を終え、ブラックアウト期間も解除になりました。当局者らが自らの考えを述べた結果、今後の政策金利運営を巡り強く対立する見解も示されました。2026年にFOMCの投票権を得る2人も発言しており、意見の対立は年明け以降も続く見通しです。ブルームバーグによると、「当局者のうち3人はインフレリスクに焦点を当てたが、このうち1人は、物価上昇が鈍化していることを確認するために一時的に利下げ を停止するよう主張した。これに対し、2人の当局者は労働市場へのリスクを強調した」とのことです。米シカゴ連銀のグールズビー総裁は10日のFOMC会合で政策金利の据え置きを主張し、0.25%の利下げ決定に反対票を投じています。また、カンザスシティー連銀のシュミッド総裁も先週、金利据え置きが必要との判断から反対票を投じました。同総裁は10月の会合でも反対票を投じましたが、反対票を投じた理由について、「インフレ率が米金融当局の目標を半年にわたって上回っており、ここ数カ月は一段の改善が停滞している。管轄区で最近話を聞いた企業関係者と消費者のほぼ全員が物価を主な懸念要素に挙げている。こうした状況を踏まえると、さらなる情報を待つことがより賢明であろうと考えた」と説明していました。
このように、FRB議長にハセット氏が就任し大幅な利下げを主張したとしても、インフレと労働市場のデータをさらに確認する必要はあり、「26年にどの程度の利下げが妥当かを巡って、一定の駆け引きが生じるだろう」(ブルームバーグ)との声が一般的と見られています。
今週は16日(火)に「11月の雇用統計」、18日(木)に「11月の消費者物価指数」、そして19日(金)には、今年最後の「日銀金融政策決定会合」が予定されており、サプライズがあれば今年最後の主戦場になりそうです。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
