今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

2017年6月28日(水) 「ドル円1カ月半ぶりに112円台半ばへ」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場

  • ドル円は東京時間で112円台に乗せたがその後は上値が重く、111円台半ばまで反落した。しかしNYでは長期金利の上昇を材料に112円46銭まで上昇し、約1カ月半ぶりのドル高水準をつける。
  • ユーロドルは急伸。ドラギ総裁の発言から、金融緩和縮小が近いとの連想がユーロ買いにつながった。ユーロドル1.1350まで上昇し、約10カ月ぶりの高値を記録し、対円でも127円台半ばまでユーロ高が進行。
  • 株式市場は揃って下落。イエレン議長が講演で「一部資産が割高」と発言したことがきっかけとなり、ハイテク株が下げを主導。ダウは98ドル下げ2万1300ドル台に。
  • 債券相場も急落。イエレン発言から売り物が増え、長期金利は約7bp上昇し、2週間ぶりに2.2%台に乗せる。
  • 金はほぼ変わらず。原油価格は3日続伸し、44ドル台を回復。
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 4月ケース・シラ−住宅価格指数 → +5.67%
 6月消費者信頼感指数 → 118.9
 6月リッチモンド連銀製造業指数 → 7
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ドル/円 111.83 〜 112.46
ユーロ/ドル 1.1269 〜 1.1350
ユーロ/円 126.12 〜 127.48
NYダウ −98.89 → 21,310.66
GOLD +0.50 → 1,246.90ドル
WTI +0.86 → 44.24ドル
米10年国債 +0.068 → 2.205%

本日の注目イベント

  • 欧 ユーロ圏5月マネーサプライ
  • 米 5月中古住宅販売成約指数
  • 米 ウィリアムズ・サンフランシスコ連銀総裁講演(キャンベラ)

ロンドンで行われたイエレンFRB議長の講演と、ポルトガルのシントラで行われたドラギECB総裁の発言内容に、金融、証券、債券市場は大きく反応しました。特に為替市場では、ユーロが最強通貨になり、ついで米ドル、そして円が最も弱い通貨となった1日でした。

イエレン議長は講演で「金利は非常にゆっくりと引き上げるのが目標達で適切になるとの考えは、これまでに極めて明確にしている」と述べ、今後の利上げの基本方針は変わらないとの認識を示しました。ただ同時に、一部の資産については「高くみえるが、確信はない」とも語り、これが株価の重石となり、主要株価指数を沈めたようです。また基本的な利上げスタンスの維持が債券売りにつながり、長期金利を今月14日以来となる2.2%台まで押し上げ、これがドル円を112円台半ばまで一気に押し上げる原動力になりました。

ドラギ総裁はポルトガルで開いた年次総会で「今は全ての兆候がユーロ圏の回復の強さが増し、裾野が広がっていることを示している。デフレ圧力はリフレの力に置き換わった」(ブルームバーグ)と述べ、金融緩和縮小は近いことを示唆した格好となりました。この結果、ユーロドルではドル売りユーロ買いが大きく進み、ユーロドルは2016年8月23日以来となる1.1350まで急騰し、対円でも127円台半ばまでユーロ高が進みました。ユーロ対して売られたドルでしたが、そのドルに対しても円は大きく売られ、市場は「リスクオン」というよりも、低金利の円を改めて売り直したような印象です。

それにしても今月初めには、ユーロ圏は依然として政策面での支援が必要だとの認識を示したばかりのドラギ総裁でしたが、ここでユーロショートを作り維持していた投資家はまたも、「ドラギ・マジック」にしてやられたことになります。ドイツ連銀のバイトマン総裁などは早期の金融政策の変更を訴えていましたが、ECB理事会内でのこうした意見に押されたと観ることもできます。これで年内に金融緩和の縮小に踏み切れば、これで残るは日銀のみということになり、中央銀行の「金融政策の違い」が改めて注目されれば、円が大きく売られる状況も想定できなくはありません。

ドル円は112円46銭まで上昇したことで、これまでの110−112円のレンジが上抜けした可能性が高くなりました。昨日この欄でも指摘した112円10−15銭レジスタンスゾーンも抜けましたが、注意したいのは、このまま「120日線」を上回った水準を維持できるかどうかという点です。市場関係者の「相場観」はまだそれほどドル高には傾いていません。そのため、この水準から上値では輸出企業などは確実に予約を入れてくることが想定されます。テクニカルでは113円台を超える辺りまでは、これと言ってレジスタンスはありません。昨日のNY市場での動きがドル高トレンドへの「始まりの始まり」だったのかどうか、今後一(ひと)月ほどかければ確認できるかと思います。因みに、個人的には現時点ではまだその段階ではないと考えています。

本日はNYのドルの高値からは若干下げていますが、東京ではどこまでドルが買われるかが焦点です。112円40−50銭辺りでは相当なドル売りが控えていると思われますが、それをこなして上昇できるかどうかです。その水準を超えるとしても、東京時間ではやや無理な気もしますが、海外市場では全く別物です。予想レンジは111円60銭〜112円60銭程度とします。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時     発言者     内容   市場への影響   
5/4 FOMC声明文 「1−3月の減速は一時的な可能性が高い」 ドル円112円台から113円台に
5/8 メスター・クリーブランド連銀総裁 「当局が目標に向かって前進し続けている今の環境では、金利を引き上げる必要がある。そうしなければ後れをとることになり、その結果は決して良いとはいえないものとなる」ブルームバーグとのインタビューで。 --------
5/10 ローゼングレン・ボストン連銀総裁 「経済が私の予測通りに進展するとの想定で、バランスシートの規模は緩やかな縮小とともに、年内残り3回政策金利を引き上げるのはなお妥当だ」講演で。 ドル円上昇し、114円台に
5/11 コンスタンシオ・ECB副総裁 「拙速な金融緩和の縮小よりも、緩和的な政策を長く続ける方がリスクが少ない」インタビューで。 --------
5/22 メルケル・独首相 「ユーロは弱すぎる。これはECBの政策が理由だ。これによってドイツ製品が相対的に安くなっている。従って、ドイツ製品はよく売れている」 ユーロドル1.11台後半から1.1264まで上昇
5/29 ドラギ・ECB総裁 「ユーロ圏はフォワードガイダンスを含め金融政策による異例な規模の支援がなお必要だ」 --------
5/30 ブレーナード・FRB理事 「インフレ率の進展不足が続けば、私としては将来のFF金利に関して予想される道筋を見直すことになる可能性があるが、現時点でその判断を下すのは時期尚早だ」 --------
5/31 バイトマン・ドイツ連銀総裁 「現在の景気見通しとリスクバランスの改善は、ECBのフォワードガイダンスを調整すべきなのかどうか、その時期はいつかについて政策委員会で議論が始まることを示唆している」 ユーロドル1.11台から1.1252まで上昇
6/8 ドラギ・ECB総裁 「忍耐が必要だ。引き続き、われわれの金融政策で回復を支えていかなければならない」理事会後の記者会見で。 ユーロドル1.125近辺から1.12割れに
6/14 FOMC声明文 「委員会は現在、経済が概ね予想通りに進展するとの想定で、バランスシート正常化プログラムの年内開始を見込んでいる」 ドル円108円台から109円台に
6/14 イエレン・FRB議長 「経済が予想通り進展すれば、年内のプロセス開始に向けた環境は整うはずだ」利上げ後の記者会見で。 ドル円108円台から109円台に
6/19 ダドリー・NY連銀総裁 「(米景気は)実際のところまだ長く継続すると強く確信している」講演で。 ドル円111円から111円台半ばまで上昇
6/20 ローゼングレン・ボストン連銀総裁 「長期にわたる低金利は将来の金融ショックやリセッションへの金融政策の対応能力を低下させる」講演で。 --------
6/27 イエレン・FRB議長 「金利は非常にゆっくりと引き上げるのが目標達で適切になるとの考えは、これまでに極めて明確にしている。(一部の資産については)高くみえるが、確信はない」ロンドンでの講演で。 ドル円111円台後半からから112円台半ばへ。株価は急落。
6/27 ドラギ・ECB総裁 「今は全ての兆候がユーロ圏の回復の強さ増し、裾野が広がっていることを示している。デフレ圧力はリフレの力に置き換わった」年次総会で。 ユーロドル1.12台から1.1350に。米独の債券は急落。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和