今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

2017年9月12日(火) 「リスク後退でドル高株価が進む」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場

  • ドル円は大幅に続伸し、109円台半ばまでドルの買い戻しが進む。北朝鮮リスクがやや後退したことや、ハリケーン「イルマ」の被害が想定されたよりも軽いとの見方からドルの買戻しが活発になる。
  • ユーロドルでもドル買いユーロ売りが優勢となり、1.1948までユーロ安ドル高が進む。
  • 米国株は大幅に続伸。ハリケーン「イルマ」の被害が当初予想を下回ると見られ、北朝鮮リスクもやや後退したことを好感。ダウは前日比259ドル上げ、8月16日以来となる2万2千ドル台を回復。S&P500は最高値を更新。
  • 債券相場は大幅に下落。リスクオフが後退したことで利益を確定する売りが出た。長期金利は2.13%台へと大幅に上昇。
  • ドルが買われたことで金は15ドルを超える下落。原油は小幅に反発。
ドル/円 108.58 〜 109.51
ユーロ/ドル 1.1948 〜 1.2041
ユーロ/円 130.26 〜 130.91
NYダウ +259.58 → 22,057.37
GOLD −15.50 → 1,335.70ドル
WTI +0.59 → 48.07
米10年国債 +0.080 → 2.131%

本日の注目イベント

  • 英 英8月物価統計
  • OPEC月報

懸念されていた国連安保理での制裁決議案が、中国、ロシアの立場を配慮し制裁内容が事前に下方修正されていたことが判明。北朝鮮への石油全面禁輸を取り下げ、一定の上限を設ける内容に変更されていました。日本時間の本日午前中には採決される見通しですが、米国側の譲歩を好感して、リスク回避の動きが一気に巻き戻され、ドル円は109円51銭まで上昇しました。

昨日のNYでのドル急騰劇は、基本的にはドルのショートカバーであると思われ、新規のドル買いにはつながっていないと見ています。現時点では安保理の決議はまだ不透明で、議案の修正や、中国・ロシアが拒否権を行使することも考えられます。また、リスク回避が後退したもう一つの理由は、ハリケーン「イルマ」の存在でした。

「イルマ」はフロリダ半島に上陸し被害も出ていますが、当初21兆円程度に膨れると見られていた被害額が、想定よりも少なくなることを好感しています。シティグループは被害額が500億ドル(約5兆5000億円)程度になるとの試算を発表しています。これらを背景に、株式市場ではダウは前日比260ドルに迫る上昇を見せ、約4週間ぶりに2万2千ドルの大台を回復し、S&P500も最高値を更新しました。債券市場でも、リスクが後退したことで大きく売られ、長期金利は2.13%台へ上昇し、ドルを支えています。

北朝鮮への原油全面禁輸は避けられたようですが、経済制裁は強化され今後じわじわ影響がでることも予想されます。これに対して、北朝鮮は再度挑発的な言動を繰り返してくるものと思われます。本コメントを書いている間に、安保理での制裁決議が採択されたようです。制裁内容は当初のものから軽減されましたが、 米国のヘーリー国連大使は北朝鮮の核開発プログラムを阻止するためには米国が単独でも行動する用意があると、制裁決議後に述べています。(ブルームバーグ)

ドル円は先週末に107円32銭まで売られたものの、わずか1日で2円以上もの反発を見せています。前述したように、これは売ったドルの買い戻しが主因だと思われ、北朝鮮情勢とハリケーン「イルマ」に振り回された結果です。ここが落ち着けば、来週のFOMCでバランスシート縮小開始のヒントがあるのかどうかと、その先の利上げの有無がカギになります。

バランスシートの縮小開始に関してはメンバーの中でもそれほど意見が分かれていませんが、問題は今年3回目となる利上げです。仮に今後の経済データが軟調に推移し、インフレ率が上昇しないようだと利上げの可能性が後退することになり、ドルの上値は抑えられることになります。次期FRBの議長、副議長人事や、法人税減税の落ち着きどころ、さらには債務上限問題の早期解決などが焦点になりそうです。もちろん北朝鮮問題もまだ重要な波乱要因になります。本日のドル円は108円70銭〜109円70銭程度と予想します。

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時     発言者     内容   市場への影響   
8/2 ウイリアムズ・サンフランシスコ連銀総裁 「9月にバランスシート縮小開始を発表することはプランの変更はないだろう」講演後記者団に。 --------
8/2 ブラード・セントルイス連銀総裁 「インフレ見通しを考慮すれば、私は近い時期のさらなる行動は支持しない、インフレ見通しは2017年に悪化した」講演で。 ドル円下落。
8/2 メスター・クリーブランド連銀総裁 「インフレを誘発する失業率の想定値を引き下げた」講演で。 ドル円下落。
8/7 ブラード・セントルイス連銀総裁 「(バランスシート縮小開始について)9月に発表する用意ができている。他の当局者が同意するかどうかは分からない。政策金利を現行水準で維持するのが最も適切な金融政策だろう」講演で。 --------
8/8 トランプ・米大統領 「米国に危機が及べば、北朝鮮は、世界がこれまで経験したことがない怒りと炎に見舞われるだろう」 ドル円下落。
8/14 ダドリー・NY連銀総裁 「金融当局が9月にバランスシート縮小計画を発表するとの見方は不合理ではない。年内もう一度の利上げを支持するだろう」AP通信とのインタビューで。 ドル高が進む。
8/15 カプラン・ダラス連銀総裁 「バランスシートを縮小させるプロセスをまもなく開始すべきだ。今の情勢を考えれば、現時点では辛抱強くあることが適切だ」講演で。 --------
8/29 トランプ・米大統領 「全ての選択肢がテーブルの上にある」北朝鮮の度重なるミサイル発射に対して。 発言が穏健的だったことでドル円急反発108円台→109円台後半に
8/31 ムニューシン・財務長官 「貿易に関しては、一段と弱いドルがわれわれにとっては多少好ましい」 ドル円下落
9/3 マティス・国防長官 「大規模な軍事的対応、効果的かつ圧倒的な対応をとる。われわれには多くの軍事的選択肢がある。」北朝鮮の核実験を受け、大統領らとの会合後に。 円高、株安が進行
9/5 ブレーナ−ド・FRB理事 「インフレ率が当局の目標達成にむけた軌道にあるとわれわれが確信できるまで、追加の引き締めには慎重になるべきだというのが私の見解だ」講演で。 ドル円109円台から108円台半ばへ
9/7 ドラギ・ECB総裁 「決定の大きな部分は10月に下されるだろう。最近のボラティリティーは不透明感の源となっており、中期的な物価安定の見通しに影響を及ぼし得るという点で監視する必要がある」理事会後の記者会見で。 ユーロドルの一旦1.90台前半まで売られた後、1.2060前後まで上昇
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和