今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

2018年1月12日(金) 「ドル円111円割れを試す」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場

  • ドル円は続落。米経済指標が予想を下回ったことや、ユーロ高に引っ張られる形で、111円05銭前後まで下落。
  • ユーロドルはECB議事録の公表を手がかりに急伸。1. 1936近辺から1.2059前後まで上昇する荒っぽい動きに。議事録の内容が予想されたよりもタカ派的であったことが材料に。
  • 株式市場は大幅に反発。原油価格が一時64ドル台に乗せたことで、エネルギー株を中心に買われた。ダウは前日比205ドル上昇し、最高値を更新。
  • 債券相場は反発。連日大きく売られたことで、値ごろ感からの買い戻しも入り、長期金利は2.53%台へと低下。
  • 金は続伸。原油価格は4日続伸し、一時は64ドル台半ばを超える水準まで上昇。今後もOPECの減産が続くとの報道が手掛かり。その後は押し戻されて63ドル80セントで引ける。
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 12月生産者物価指数 → −0.1%
 新規失業保険申請件数 → 26.1万件
 12月財政収支 → −232億ドル
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ドル/円 111.05 〜 111.77
ユーロ/ドル 1.1936 〜 1.2059
ユーロ/円 133.66 〜 134.35
NYダウ +205.60 → 25,574.73ドル
GOLD +3.20 → 1,322.50ドル
WTI +0.23 → 63.80ドル
米10年国債 −0.022 → 2.535%

本日の注目イベント

  • 日 12月景気ウオッチャー調査
  • 日 11月国際収支
  • 中 中国 12月貿易収支
  • 米 12月消費者物価指数
  • 米 12月小売売上高
  • 米 ローゼングレン・ボストン連銀総裁講演
  • 米 企業決算 → ブラックロック、JPモルガン、ウェルズ・ファーゴ

ドル円は昨日の東京時間では、株価が予想されたよりも下げなかったこともあり111台半ばから後半まで反発しましたが、NY市場では再び下値を試す展開となりました。111円台は割り込まなかったものの、111円05銭前後までドル安が進んでいます。昨日の動きはどちらかといえば、ユーロドルでドル安ユーロ高が急速に進んだことで、円も連れ高した側面が大きかったと思われます。

もっとも、ドル円は日足チャートでも雲抜けを完成させ、下落を示唆する形状を見せていることから、目先上値の重い展開が予想されます。昨日は米長期金利の上昇も一服し、株価が再び最高値を更新するなど、リスクオンに傾きそうな状況でしたが、ユーロの強さが全体のモメンタムを決定したような1日でした。

昨日公表された昨年12月のECB議事録では、「景気拡大が続きインフレが当局の目指す水準に向けてさらに収れんすれば、政策委員会のコミュニケーションが、順序は変更しない形で、徐々に進化していく必要があるとの見解が、幅広く支持された」と記され、さらに「金融政策姿勢とフォワードガイダンスのさまざまな側面に関する言い回しは2018年の早い時期に再検討される必要がある」と述べられていました。(ブルームバーグ)

ECBは今月から債券購入額をこれまでの600億ユーロから300億ユーロに減額し、これを9月まで実施することを昨秋に決めています。ただ同時に、「必要ならば再び増額することも期限を延期することもある」との文言も残しており、市場はこの部分に反応し、ユーロが大きく売られた経緯があります。今回の議事録は今年の早い段階で、条件さえ合えばテーパリングを行う可能性が高いことが示唆され、その先には「利上げ」が意識される段階に入っていることを匂わせていると理解できます。米国からは周回遅れで走ってはいますが、ようやく米国の背中が前方にかすかに見えてきたといった状況です。

米国株は再び上昇傾向を強めています。ダウは先週木曜日に初めて2万5000ドルの大台に乗せましたが、昨日の引けは2万5574ドルです。ちょうど1週間で574ドル上昇したことになります。武者リサーチの調査によれば、米国の個人資産のうち、52.1%が「株式・出資金」に向けられており、日本の14.0%を大きく引き離しています。そのため株価の上昇による資産効果は強烈で、個人消費がさらに拡大することも容易に想定されます。

一方で、昨日発表された経済指標に「かげり」が見られないわけでもありません。生産者物指数は予想を下回る「−0.1%」でした。また週間失業保険申請件数は前の週よりも1万1000件増えて「26.1万件」と、昨年9月にハリケーンの影響で申請件数が増加した時以来の高水準でした。この数字がさらに拡大すると、いずれ失業率にも影響を与えることになります。一時的な現象だとは思いますが、今後も注意深くウォッチしていく必要があるでしょう。好調な米景気にとって「死角」は賃金とインフレ率です。この2つが依然として上昇傾向を見せないことで、FRBが想定する利上げ回数と市場が予想する回数に溝を作っているわけです。

本日のドル円は昨日と同じような展開になりそうですが、やや水準が円高方向です。111円割れを試す可能性もありそうですが、本格的な動きは海外市場が入ってからでしょう。引き続きユーロドルの動きには注意が必要です。予想レンジは昨日と同じ、110円80銭〜111円80銭程度とします。


今年2月にはFRB議長がイエレン氏からパウエル氏に替わる。4月には黒田日銀総裁も任期満了を迎える。こちらはまだ後任人事は決まっていませんが、黒田氏の続投が濃厚とか。実はECBも来年にはドラギ総裁が任期を迎え、そろそろ後任人事が関心を集めています。第四代総裁になるわけですが、これまで欧州の大国ドイツはまだ総裁を輩出していません。初代総裁はオランダで二代目はフランス、そしてドラギ氏はイタリア出身です。これまでは欧州最強の国としての「配慮」もあり、ECB総裁を他国に譲っていた面もあったと思われますが、いつまでも遠慮しているわけにはいきません。「次はブンデスバンク(ドイツ連銀)から」という考えもあるでしょう。次期総裁がドイツから出るのかどうかで、ECBの金融政策にも大きな影響が出るものと思われます。良い週末を・・・・・・。

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時     発言者     内容   市場への影響   
12/6 トランプ・米大統領 「減税が実現すれば米国の成長率が14年ぶり高水準に達することもあり得る。4%、5%、さらに6%に届かない理由は見当たらない」閣僚らに。 --------
12/14 ドラギ・ECB総裁 「インフレが中期的に自立的な軌道に収れんしていくことへの自身の深まりを反映した」「域内物価圧力は全体として依然弱く、持続的な上向きトレンドを確信させる兆候はまだ見られない」理事会後の記者会見で。 ユーロドル1.18台から1.17台へと下落
12/18 ウィリアムズ・SF連銀総裁 「来年は3回くらい利上げ、2019年には2−3回の利上げが妥当な見方のようだ」WSJ紙とのインタビューで。 --------
12/21 黒田・日銀総裁 「リバーサルレートの学術的な分析を取り上げたからといって、昨年9月以来の長短金利操作付き量的・質的金融緩和について何か見直しや変更が必要だという事は全く意味しない」決定会合後の記者会見で。 ドル円上昇のきっけかに
1/8 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「ゆっくりとした政策緩和解除を継続することに違和感はない。ただし、それが年3、4回の利上げだということは必ずしも意味していない」アトランタでの講演で。 --------
1/9 ビル・グロス・ジャナスヘンダーソングループ運用者 「債券の弱気相場が確認された」 債券相場が急落し、長期金利がは2.55%台に上昇
1/11 ECB議事録 「金融政策姿勢とフォワードガイダンスのさまざまな側面に関する言い回しは2018年の早い時期に再検討される必要がある」 ユーロドル1.1936 → 1.2058前後まで急騰
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和