今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

2018年7月23日(月) 「“トランプリスク”でドル円111円台前半に」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場

  • ドル円は大幅に下落し、一時は111円38銭まで円高が進む。トランプ大統領が、中国とEUは通貨を操作してきたとツイートしたことや、米利上げを懸念していると発言したことが材料に。
  • ドルが下落したことでユーロドルも上昇。1.1739まで上昇したが、ユーロ円の売りが重石となり、勢いは限定的。
  • 株式市場は続落したが、3市場とも下落幅は小幅に。ダウは6ドル下落したが、2万5000ドルの大台はキープ。
  • 債券は大幅に売られる。長期金利も2.89%台へと上昇し、約1カ月ぶりの高水準に。
  • ドル安が進み金は反発。原油も続伸し70ドル台を回復。
ドル/円 111.38 〜 112.29
ユーロ/ドル 1.1662 〜 1.1739
ユーロ/円 130.55 〜 131.04
NYダウ −6.38 → 25,058.12ドル
GOLD +7.10 → 1,231.10ドル
WTI +1.00 → 70.46ドル
米10年国債 +0.055 → 2.893%

本日の注目イベント

  • 欧 ユーロ圏7月消費者信頼感(速報値)
  • 米 6月中古住宅販売件数
  • 米 企業決算 → アルファベット

金融市場は再びトランプ大統領の自由奔放な発言に揺れています。前日の「利上げはうれしくない」発言に続いて、今度は「中国やEUや他の国々は通貨を操作し、金利上昇を抑えている」とツイートし、さらに「米国は不正な通貨操作や不利な貿易協定で失われたものを奪還していいはずだ」と批判しました。ドル円はこのツイートを受けて、112円台前半から111円38銭まで円高が進み、113円18銭まで上昇した分を僅か2日で吐き出した格好になっています。まさに「トランプリスク」です。

また、トランプ氏は「米国は金利を上げ、ドルは強くなり、われわれの偉大な競争力を奪う。引き締めはわれわれが成し遂げたすべてを傷つける」と、FRBの政策に対しても批判した形になりました。これまで市場はトランプ氏が「金利高やドル高を望まない」ことは理解していましたが、それを簡単には口にしないだろうと考えていましたが、ここにきて貿易戦争を仕掛けただけではなく、金融政策や通貨の水準にまで「介入」してきました。残り4カ月を切った、11月の中間選挙を意識しての行動かと思われますが、FRBの独立性にも波紋を広げることになってきました。そのFRBは、自らが選んだパウエル議長がけん引しています。

貿易問題もまだ解決の糸口が見つかりません。米商務省は19日、トランプ政権が検討している自動車の関税引き上げを巡って公聴会を開きました。この公聴会には、国内外の企業や外国政府代表者が招かれたようですが、日本からも在米日本大使館の相川特命全権公使が出席し、「日本からの輸入は米国の自動車産業を損なってはいない」と述べ、「日本からの輸入は米国の安全保障を脅かしていないし、今後もそうならない」と説明しました。自動車の輸入制限に関しては、メキシコや韓国などの外国政府も反対を表明した他、米自動車業界も反対を表明しています。またロス商務長官は、「調査結果が最終的に(輸入制限の)提案につながるか、現時点で言うのは時期尚早だ」と述べるに留まっています。

カギを握るのは、やはり米中貿易問題です。2000億ドル(約22兆4000億円)規模の中国製品に対する関税引き上げが今回の公聴会の主題ですが、トランプ氏は先のCNBCとのインタビューでは、米国に輸入される中国製品5000億ドル相当に追加関税をかける「用意がある」とも発言しており、「われわれはいいように利用されており、私はそれが気に入らない」とも語っていました。(ブルームバーグ)中国から米国への年間輸出額が約5000億ドルですから、中国からの輸入全てに対して関税をかけるという意味合いになります。

ドル円は111円台まで売られてきました。ドルが下落する時のいつものパターンですが、上昇は緩やかですが、下落時は一気に落ちてきます。ドル円は現時点ではまだ上昇傾向が崩れたとは言い切れません。もちろん今後のトランプ氏のつぶやき次第というところですが、3月の104円台から引くことの出来るサポートラインは、110円86銭前後にあり、ここが目先の重要な下値となりそうです。また、その他にも日足の「200日線」や「雲の上限」などのサポートが110円から、110円台前半にあることから、「110円が維持できるかどうか」が極めて重要なポイントになろうかと思います。本日は急激な円高から、日経平均株価は輸出株を中心に売られそうです。予想レンジは110円60銭〜111円60銭程度とします。

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時     発言者     内容   市場への影響   
6/6 プラート・ECB理事 「資産買い入れ策の緩やかな巻き戻しを正当化できるだけの十分な進展がこれまでにあったかどうか、この判断を来週の政策委員会で下す必要があるのは明らかだ」ベルリンでの講演で。 ユーロドル1.17台前半から後半へ上昇
6/12 トランプ・米大統領 「金委員長は非常に才能のある人物。」「金委員長と多く会うことになるだろう」米朝会談後に。 ドル円、日経平均株価上昇
6/13 パウエル・FRB議長 「インフレが上振れするとわれわれが考えれば、当然ながら金利を引き上げることになるが、金融当局はそうなると考えていない」FOMC後の記者会見で。 --------
6/19 ドラギ・ECB総裁 「初回利上げ時期の決定について辛抱強い姿勢を維持し、その後の政策調整は段階的に行う」年次フォーラムでの講演で。 ユーロドル1.16台から1.1534まで下落
6/20 パウエル・FRB議長 「失業率が低く、さらなる低下が見込まれ、インフレ率は当局の目標付近にあり、見通しへのリスクはおおよそ均衡していることを踏まええると、FF金利の漸進的な引き上げえお継続する根拠は強い」ECB主催のフォーラムで。 市場はドル買いで反応
6/25 ナバロ・国家通商会議(NTC)委員長 「トランプ政権の通商政策は誤解されており、投資を制限する計画はない」 下落していたドルと株が買い戻される
6/26 ライアン・下院議長 不公平な貿易慣行に対抗する上で、「関税引き上げよりも良い手段がある」 ドル円109円台後半から110円20銭台に
6/29 クドロー・国家経済会議(NEC)委員長 「われわれは経済の潜在成長力を拡大している。従ってインフレ的ではない」 ドル円小幅に下落
7/6 クーレ・ECB理事 「(米国の保護主義を受けて)これまでのところ、われわれが見てきたことが景気回復を妨げる恐れはない」ブルームバーグとのインタビューで。 --------
7/8 ルメール・仏経済・財務相 「(トランプ政権に対して)仮に、あなた方がわれわれを再び攻撃し、自動車メーカーに関税を課すようなことがあれば、われわれは報復すると警告しておく」経済フォーラムで。 --------
7/11 中国商務省 「国家と人民の利益を守るため、中国は必要な反撃をせざるを得ない」米国の2000億ドルの追加関税発表に対して。 --------
7/16 共和党・マケイン上院議員 「記憶にある限りで、米大統領として最も恥ずべき行為の一つだ」米ロ首脳会談について。 --------
7/17 パウエル・FRB議長 「当面は、フェデラルファンド(FF)金利の漸進的な引き上げ継続が最善策だと考えている」議会証言で。 ドル高、株高が進む
7/19 トランプ・米大統領 「(金融当局の利上げに関して)うれしくない。景気は上向いている。上向くたびに、彼らはまた金利を引き上げたいと考える。それに関して私は不満だ。だが同時に、彼らが最善と考える行動を私は容認している」」CNBCとのインタビューで。 ドル円113円から112円06銭前後まで急落
7/20 トランプ・米大統領 「(中国人民元)石のように落ちている」「米国の通貨は上昇している、これにより、われわれが不利な立場に置かれているといわざるを得ない」CNBCとのインタビューで。 ドル円112円60銭付近からから112円28銭まで急落。日経平均プラス100円からマイナス204円に
7/20 トランプ・米大統領 「中国やEUや他の国々は通貨を操作し、金利上昇を抑えている」「米国は金利を上げ、ドルは強くなり、われわれの偉大な競争力を奪う。引き締めはわれわれが成し遂げたすべてを傷つける」ツイッターで。 ドル円112円30銭付近からから111円38銭まで急落。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和