今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

2018年10月10日(水) 「米長期金利低下しドル円上値が重い」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場

  • 前日112円台に下落したドル円は朝方には、米長期金利の上昇にドル買いが先行し、113円33銭まで上昇。その後金利が徐々に低下したことでドルも下落し、113円を割り込む水準で取引を終える。
  • ユーロドルは小幅に続落。EUとイタリアの交渉が長引くとの見方がユーロの重石に。ユーロドルは一時1.1433まで売られ、約2カ月ぶりのユーロ安を付ける。
  • 株式市場は下落。貿易を巡る不透明感や世界経済見通しを受けダウは56ドル安。ナスダックは4日ぶりに反発したが小幅に留まる。
  • 債券相場は軟調に始まり金利は上昇したが、その後ジリジリと買い戻しが入り、結局反発。長期金利は3.20%台まで低下。
  • 金と原油はともに反発。
ドル/円 112.87 〜 113.33
ユーロ/ドル 1.1433 〜 1.1503
ユーロ/円 129.34 〜 130.17
NYダウ −56.21 → 26,430.57ドル
GOLD +2.90 → 1,191.50ドル
WTI +0.67 → 74.96ドル
米10年国債 −0.026 → 3.206%

本日の注目イベント

  • 英 英8月貿易収支
  • 英 英8月鉱工業生産
  • 米 9月生産者物価指数
  • 米 エバンス・シカゴ連銀総裁講演
  • 米 ボスティック・アトランタ連銀総裁講演
  • 米 ウィリアムズ・NY連銀総裁講演
  • 加 カナダ8月建設許可件数

ドル円は112円80銭台では底堅い動きを見せたものの、上値が重い展開です。昨日の海外市場での戻り高値も113円39銭で、現時点では方向感も乏しく、次の展開を待っている状況です。

IMFは9日、世界経済見通し(WEO)を発表しました。貿易戦争を背景に2018年の経済成長率の予測を「3.7%」とし、7月の時点からは「0.3%」引き下げました。世界経済見通しの下方修正は2016年7月以来2年ぶりですが、IMFは、トランプ政権が仕掛けた貿易戦争がさらに激しくなれば、2019年以降さらに景気が下振れし、最大で「0.8%」落ち込むとの見方を示しました。

特に貿易問題で激しさの増している米中両国の成長率は、現状でも2019年には「0.6%」下振れするが、金融不安につながれば成長率が「6.0%」を割り込む可能性もあると指摘しています。仮に中国の成長率が「6.0%」を下回れば、1990年以来の低成長ということになります。一方米国もその影響は避けられず、最大で「1.0%」低下すると予想されており、大型減税の効果を相殺してしまうとの見方が出ています。そうなると、その影響は米中だけではなく、日本や欧州にも及ぶことからIMFのオブストフェルド主席エコノミストは、世界経済の先行きに強い警戒感を示しています。

米中関係はここ数年で最悪の状態であることはこの欄でも述べてきましたが、このままの状況では、米中の次官レベルでの貿易協議も先行きが見えません。さらに、トランプ大統領がもう一段の追加関税の発動を言い出す可能性すらあります貿易戦争がこれ以上激化しないことを祈るばかりですが、当初から懸念されたように、この問題が為替や株式市場にもじわりと影響を与えてくる可能性も徐々に強まっているように思います。

トランプ大統領は再びFRBの金融政策に不満を表しています。大統領は9日、景気過熱の回避を意図したFRBの利上げについて、「私は気に入らない」とホワイトハウスで発言し、「そう急ぐ必要はないと思う」と語り、さらに、「私は低金利が好きだ」とも述べています。(ブルームバーグ)FRBは先月の会合で、今年3回目となる政策金利の引き上げを決め、現在FF金利は、2−2.25%になっています。

113円前後で戻ってきたドル円は、もうしばらく調整が続くのか、あるいは再び上昇の波に乗って114円台を回復するのか、現時点では判断できません。市場全体の見方は、為替だけではなく、再び軟調な地合いを見せている株式市場も含めて、「当然の調整局面だ」と受け止めているようです。引き続き貿易戦争は大きな懸念材料ですが、目先は米金利と株価の動きがドル円の方向を決めると見られます。本日の予想レンジは112円60銭〜113円50銭程度を見ています。

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時     発言者     内容   市場への影響   
9/3 トルコ中銀 「使い得るあらゆる手段を駆使し、13日の政策会合で金融政策のスタンスを調整する」予想を超えた消費者物価指数発表後の声明で。 トルコリラ下げ幅を縮小
9/6 トランプ・米大統領 「もちろん私が彼らに対し、彼らがどれだけ支払う必要があるか告げた途端に終わるだろう」日米の貿易問題に関して、WSJが伝える。 ドル円111円40銭レベルから110円台半ばへ
9/7 トランプ・米大統領 「(中国に)新たに2670億ドル(約29兆円)分の関税を課す準備はできている」報道陣に。 ドル円111円台から110円74銭へ
9/7 トランプ・米大統領 「(日米貿易協議が)合意に達しなければ日本は大変な問題になる」 --------
9/19 李克強・中国首相 「輸出競争力の向上を目的に人民元を切り下げることはない」天津での世界経済フォーラムでの講演で。 新興国通貨、豪ドルなどが上昇
9/24 ドラギ・ECB総裁 「ひっ迫しつつある労働市場が賃金の伸びを加速させる中で、向こう数カ月に基調的なインフレ率はさらに上昇する見込みだ」「域内の価格圧力は強まりつつあり、裾野を広げている」講演で。 ユーロドル1.1750〜1.1815まで上昇
9/25 王受文・中国商務次官 「中国はナイフをのどに突き付けられての交渉を行うことはできない」米中貿協議に関して。 --------
9/26 パウエル・FRB議長 「米企業からの貿易懸念の『声の高まり』を耳にしている。FRBは貿易政策に責任がないが、長期間にわたる広範囲な関税は米国にとってよくないだろう」FOMC後の会見で。 --------
9/26 トランプ・米大統領 「残念ながら、FRBが今しがた利上げをした。私はそれに不満だ。私は彼らが利上げを好んでいる様子だという事実を懸念している」FOMCでの利上げに関して。 --------
10/1 ローゼングレン・ボストン連銀総裁 「警報が鳴り響いているとは思わないが、かなり多くの黄信号が点滅していると思う」金融安定に関する質問に答えて。 --------
10/3 パウエル・FRB議長 「金利は依然緩和的だ。中立的な水準へとわれわれは徐々に向かっている。われわれは中立を超えるかもしれない。しかし、現時点では恐らく、中立金利まで長い道のりがある」講演で。 --------
10/4 クドロー・国家経済会議(NEC)委員長 「個人的な見方としてドルは安定しており、着実かつ信頼できる。ムニューシン財務長官も、同じ見解だ」ホワイトハウスで。 --------
10/4 ラガルド・IMF専務理事 「貿易戦争は(経済成長の)機会損出だ。世界経済は引き続き安定的に成長しているが、半年前よりリスクは高まっている」。日経新聞とのインタビューで。 --------
10/9 トランプ・米大統領 「(FRBの利上げに)私は気に入らない。そう急ぐ必要はないと思う」「私は低金利が好きだ」ホワイトハウスで。 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和