今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

2018年12月21日(金) 「ドル円110円台に急落」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場

  • ドル円は約3カ月ぶりに110円台後半まで下落。株価の大幅下落や、軟調な経済指標に加え、米政府機関の一部が閉鎖される可能性が出てきたことが材料視され、110円82銭までドル安が進む。
  • 急速にドル安が進んだことで、ユーロドルも反発。1.1485までユーロ高が進行。
  • 株価は大幅に続落。米政府機関の一部が閉鎖される可能性が出てきたことで、下落傾向の株価に拍車がかかり、ダウは464ドル安で取引を終える。
  • 債券祖相場は急ピッチの上昇に警戒感が出て4日ぶりに反落。長期金利は2.80%台を回復。
  • 金は続伸し1267ドル台に。荒っぽい値動きが続いている原油価格は大幅に反落し45ドル台に。
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 新規失業保険申請件数 → 21.4万件
 12月フィラデルフィア連銀景況指数 → 9.4
 11月景気先行指標総合指数 → 0.2%
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ドル/円 110.82 〜 111.79
ユーロ/ドル 1.1403 〜 1.1485
ユーロ/円 127.22 〜 128.03
NYダウ −464.06 → 22,859.60ドル
GOLD +11.50 → 1,267.90ドル
WTI −2.29 → 45.88ドル
米10年国債 +0.052 → 2.807%

本日の注目イベント

  • 日 11月消費者物価指数
  • 独 独1月GFK消費者信頼感
  • 欧 ユーロ圏12月消費者信頼感(速報値)
  • 英 英7−9月期GDP(確定値)
  • 米 7−9月GDP(確定値)
  • 米 11月耐久財受注
  • 米 11月個人所得
  • 米 11月個人支出
  • 米 11月PCEコアデフレータ
  • 米 12月ミシガン大学消費者マインド(確定値)
  • 加 カナダ10月小売売上高

米国発の世界同時株安の流れが止まりません。前日の米国株の大幅安を受け、昨日の日経平均株価は一時700円も下落する場面があり、引けにかけてはやや反発したものの、595円安で取引を終え年初来安値を記録しました。この流れは再びNY市場にも波及し、NYダウは464ドル安と、「負の連鎖」は止まるどころか、むしろ加速した形です。

株価だけではなく、原油価格も大幅に下げ、金は買われ、市場では急速に「リスク回避」の流れが強まってきました。緩やかな動きが続いていたドル円もさすがに昨日は値動きが大きく、昨日のドルの高値からは1円80銭ものドル安円高が進み、久しぶりに値幅の大きな1日となりました。

今回も震源地はホワイトハウスで、ここでも「トランプリスク」が顕在化した格好です。今週末の政府機関閉鎖を回避するために上院が19日遅くに可決し下院に送付された暫定予算案に、トランプ大統領が署名しない意向だと伝わり、一部政府機関が閉鎖される懸念が広がったことでドルが売られ、株価が大幅に下落しました。暫定予算案には、トランプ氏が要求するメキシコ国境の壁を建設する予算や、警備費用の予算などが含まれていないことで大統領が署名を拒否したようです。ブルームバーグは、21日深夜までに暫定予算が成立しない場合、国土安全保障省を含む9つの政府機関がクリスマス休暇直前に閉鎖することになると伝えています。

ドルが主要通貨に対し売られ、ドル円は110円82銭まで下落しました。110円80銭台は9月以来、約3カ月ぶりの円高水準ですが、今年は値動きが乏しく、緩やかな市場の動きに慣らされていた投資家にとっては、やや驚きの展開でした。大幅に下落したドル円は「日足」でも、雲を下抜けしており、「200日移動平均線」と、「週足」の「120週移動平均線」でサポートされた形にはなっていますが、上昇トレンドの終わりの『始まり』を意識させる動きと見ることができそうです。まだ110円という重要な節目を割り込んでいないため、完全に目線を下方に向けるとまではいきませんが、この雰囲気が年末から来年に続くようだと、110円割れも視野に入れる必要が出てきそうです。

それにしても米国の株安の流れは止まりません。19日のFOMCでは、市場が期待したほどハト派的な政策は示されず利上げを決めたFRBでしたが、前NY連銀総裁だったダドリー氏はブルームバーグとのインタビューで「景気が軟化した場合は金融当局は利上げを休止するだろう」と述べています。日米の株式市場で「負の連鎖」が続いている今の状況下では、FRBによる利上げ休止といったメッセージが必要かもしれません。

米景気の減速を示す指標もわずかながら出てくるようになりました。今週月曜日に発表された12月のNY連銀製造業景況指数は1年半ぶりの低水準でしたが、昨日発表されたフィラデルフィア連銀製造業景況指数も同様でした。市場予想の「15.0」に対して結果は「9.4」と大きく下回り、これは2016年8月以来となる低水準でした。仮にこの状態で米中貿易戦争がさらに拡大した場合には、好調だった米経済も失速し、同時に世界景気が急速に悪化する可能性も出てきました。FRBによる「利上げ休止」が、予想より早まることも考えられます。

本稿執筆時、ドル円は111円台に戻っていますが、本日も株価次第では110円台への下落もあり、日経平均株価の2万円の大台割れが意識されるようだと、110円台半ば程度までの下落もないとは言えません。予想レンジは110円60銭〜111円60銭程度と見ます。


ソフトバンク株のIPOが新聞、テレビで話題を呼んでいます。もともとタイミングが悪いとは思っていましたが、売り出し価格(1500円)を一度も上回ることもなく、昨日は1176円まで売られました。この株価を基に計算すると、投資家は5400億円も損したことになります。売り出し価格そのものが高過ぎたとの意見も出ており、全額とは言いませんが、その損の大部分が孫正義氏に所得移転したことになります。今回のIPOで大成功したのが孫氏で、大失敗したのが個人投資家ということです。以前この欄でも使いましたが、孫氏は日本で最も優れた投資家です。投資に関する目利きは抜きん出ています。(損)正義氏ではなく、(得)正義氏ということでしょう。良い週末を・・・・・。

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時     発言者     内容   市場への影響   
11/3 トランプ・米大統領 「米国と中国が貿易摩擦解消するための合意に達すると考えており、そうなれば両国に有益だろう」ホワイトハウスで。 株価のマイナス幅が縮小
11/14 パウエル・FRB議長 「あとどれくらい利上げをするのか、今後の利上げのぺースについてわれわれは考えなければならない」ダラスでの公開討論会で。 --------
11/15 ポスティック・アトランタ連銀総裁 「政策の過ちが経済の過熱や不況の引き金になりかねない領域に近づいているため、当局は追加利上げを慎重に進めるべきだ」マドリードの会合で。 --------
11/16 クラリダ・FRB副議長 「米金融当局は、政策決定に際して世界の経済成長を考慮に入れるべき必要があるだろう」CNNとのインタビューで。 ドル円113円台前半から112円台半ばまで下落
11/19 ウィリアムズ・NY連銀総裁 「われわれはあらかじめ設定されたコースを進んでいるわけではない。低インフレの下で力強い米経済を維持することに最善を尽くすため、金融政策のやり方を調整する」NYのイベントで。 --------
11/20 クドロー・米国経済会議(NEC) 米中首脳会談に関して「米国の利益に合致しない限り、合意はない」FOXとのインタビューで。 --------
11/21 マーケット・ニュース・インターナショナル(MNI) 「米金融当局は段階的な金融引き締めについて少なくとも休止する検討を開始しつつあり、来年春にも利上げサイクルを終了させる可能性がある」 市場はドル安・株高で反応
11/26 トランプ・米大統領 「われわれが取引しなければ、私は2670億ドル相当にも10%から25%の関税を課すことになる」WSJ紙とのインタビュ−で。 --------
11/28 パウエル・FRB議長 「経済にとって中立、すなわち成長を加速も減速もさせない水準に関する幅広い予想レンジをわずかに下回っている」Economic Club NYで。 ドル円114円台から113円半ばへ。NYダウ617ドルの急騰
12/1 トランプ・米大統領 「首脳同士によるすばらしい取引だ」米中首脳会談を終えて。 --------
12/3 クドロー・米国経済会議(NEC) 「現時点で私はこれを(公約)と呼ぼう。公約は必ずしも貿易合意ではないが、中国側が検討し、恐らく実行するものだ」ホワイトハウスの公式ブリーフィングで。 --------
12/4 ウィリアムズ・NY連銀総裁 「パウエル議長が述べたことと完全に一致していると思うが、米経済は強いが地平線上に(ある程度の)リスクは確実に存在するというのが私の見解だ」記者会見で。 --------
12/5 トランプ・米大統領 中国からとても強いシグナルが送られている」米中首脳会談を終え数日後に。 ドル円は小幅に上昇
12/11 トランプ・米大統領 FRBが利上げをすれば「それは愚かなことだと思うが、私に何が言えよう」ホワイトハウスでロイター通信とのインタビューで。 ドル円は小幅に下落したが限定的
12/12 ドラギ・ECB総裁 「リスクは依然としておおむね均衡しているものの、下方向に向かいつつある」(金利は)「少なくとも2019年夏の終わりまで据え置く」理事会後の記者会見で。 ユーロドル下落
12/17 トランプ・米大統領 「ドルはとても強く、インフレは事実上存在せず、米国以外の世界は荒れている。パリは燃え、中国は急降下だ。米金融当局がまた金利を上げようと検討しているだけでも、信じがたい。勝利をつかめ!」FOMCを前に。 --------
12/18 トランプ・米大統領 「FOMCの出席者はまた誤りを犯す前に、本日のウォール・ストリート・ジャーナル社説を読んだ方がいいだろう」「市場の流動性をこれ以上引き締めるべきではない。500億ドルなどやめろ。相場を感じ、意味のない数字にとらわれるな。幸運を祈る」FOMCを前に。 --------
12/18 ムニューシン・米財務長官 「ドルが強い理由の一部は人々の米国経済への見解や、世界の他の国々の成長と比較した米経済の成長にある」ブルームバーグとのインタビューで。 --------
12/19 FOMC声明文 「連邦準備法に定める責務に従い、委員会は最大限の雇用確保と物価安定の促進を目指す。委員会は、FF金利目標レンジを漸進的にさらに幾分か引き上げることが、経済活動の持続的拡大、力強い労働市場環境、およびインフレ率が中期的に委員会の対称的な2%目標付近で推移することと合致すると判断している」 予想より「ハト派的ではない」と受け止められて大幅な株安に
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和