今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

2019年5月14日(火) 「中国の対抗措置に反応しドル円109円前後まで下落」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場

  • ドル円は中国が米国製品600億ドルに対する関税引き上げを発表したことで円買いが加速し、109円02銭まで下落。その後トランプ大統領が6月のG20で中国の習主席と会談する可能性に言及したことで、ややドルが買い戻される。
  • ユーロドルでもドル安が進んだものの1.12台半ばまでの上昇でユーロ買いは限定的。円は対ユーロでも買われ、ユーロ円は122円台半ばまで下落。
  • 株式市場は大幅安に。中国が対抗措置を発表したことで、ボーイングやアップルなど中国関連銘柄が急落。ダウは617ドル下げ、ナスダックは3%を超える下げを記録。
  • 債券相場は大幅に上昇。長期金利は2.40%台まで低下。
  • 金は大きく買われ1300ドル台を回復。原油は3日続落。
ドル/円 109.02 〜 109.63
ユーロ/ドル 1.1221 〜 1.1264
ユーロ/円 122.56 〜 123.14
NYダウ −617.38 → 25,324.99ドル
GOLD +14.40 → 1,301.80ドル
WTI −0.62 → 61.04ドル
米10年国債 −0.066 → 2.402%

本日の注目イベント

  • 日 3月国際収支
  • 日 4月景気ウオッチャー調査
  • 独 独4月消費者物価指数(改定値)
  • 独 独5月ZEW景況感指数
  • 欧 ユーロ圏3月鉱工業生産
  • 英 英3月失業率
  • 米 4月輸入物価指数
  • 米 ウィリアムズ・NY連銀総裁講演
  • 米 ジョージ・カンザスシティー連銀総裁講演

米中貿易戦争が一段と激化し、懸念していた「関税引き上げ合戦」が現実化しています。10日、米国が中国製品2000億ドル(約21兆8千億円)に対して25%の関税引き上げを決めたことに対抗して中国は、公言していた通り対抗措置を発表しました。600億ドル(約6兆5400億円)分の米国製品に6月1日より5〜25%の関税をかけるという内容でした。さらに予定通りUSTR(米通商代表部)も13日、中国製品3000億ドル相当に対する最高25%の関税提案の詳細を公表しました。

この発表を受けてドル円は、2度の下落でも反発していた109円台半ばを大きく割り込み、109円02銭まで売られています。かろうじて109円割れは回避されましたが、109円割れは「時間の問題」と見られます。円は独歩高の展開を見せ、対ユーロでも122円56銭前後まで円高が進み、1月4日以来となる円高ユーロ安を記録しました。豪ドル円も同様に、1月4日以来の安値を付けています。

行く所まで行くしかないように見える「関税引き上げ合戦」ですが、少なくとも解決の糸口を見つけるには米中トップが直接会って話し合うことが必要です。トランプ大統領は昨日ホワイトハウスで、中国が米国の関税引き上げに報復措置を講じることは予想していたとした上で、「ある程度の報復はかまわないが、極めて大規模な報復であってはならない」と述べています。同時に、6月下旬に大阪で開催される「G20」で、中国の習近平主席と会談する計画を明らかにしています。(ブルームバーグ)またこれに先立ってムニューシン財務長官は、米中協議は継続中であり、自分は再度の訪中計画の詳細を検討しているところだと発言しています。

本日も日経平均株価の下げは避けられない状況でしょう。今日下げると、これで、7日連続で下げたことになり、米中貿易戦争の影響をもろに受けた形になります。個人的には、もしかしたら10月からの消費税率引き上げは急遽「凍結」される可能性が出てきたのではないかと予想しています。貿易戦争がどこまで繰り返されるのか終わりは見えません。日本株の下落は続き消費を抑制します。さらに円高も進み、輸出企業を中心に業績の下振れも懸念されます。また、昨日内閣府は3月の景気動向指数で、国内の景気判断を6年2カ月ぶりに「悪化」と判断しました。昨日の米国株式市場では、ボーイングやアップル株が大きく売られ、下落幅を拡大させていますが、さらに貿易摩擦が激化するようだと、この欄でも何度も述べているように、それは米中だけの問題ではありません。ボーイングの最新鋭機ではその3分の1は日本が製造を担っています。またアップルの「iphone」にしても、多くの日本の精密部品が中国に送られ、そこで完成品を作り世界中に輸出している状況です。米中貿易戦争は「対岸の火事」ではないということです。

このような状況の中で、10月から消費税率を引き上げたら「火に油を注ぐ」ことにもなり、景気が急速に落ち込む可能性が高いと予想されます。菅官房長官は「リーマンショック級の出来事が起こらない限り、予定通り引き上げる」と何度も繰り返していますが、むしろ「リーマンショック後に起きた景気悪化を避けるために」消費税率引き上げを回避すべきではないでしょうか。来週には日本の1−3月期のGDPも発表されます。政府はこの数値も確認したということかもしれませんが、小売店の混乱を避ける意味でも残された時間は多くはないと思われます。可能性は低いかもしれませんが、「サプライズ」はないとは言えません。

本日は日本株がどこまで下げるのかが焦点です。日経平均が2万700円を割り込むようだと、ドル円も108円台に突入することが予想されます。一時は2.61%台まで上昇した米長期金利は1カ月半ぶりに2.40%台まで低下し、日米金利差はじわじわと縮小しています。冷静に考えれば米経済の優位性は現時点でも損なわれておらず、中長期的にはドルを買う材料になりうるはずですが、その材料も貿易戦争の嵐の中では存在感が薄れています。当面はドルの下値を探る展開を意識せざるを得ません。予想レンジは108円70銭〜109円70銭といったところでしょうか。

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時     発言者     内容   市場への影響   
4/5 ククドロー・国家経済会議(NEC)委員長 (多くの電話会議を通じて通商合意に)「一段と近づいている」 --------
4/9 IMF・世界経済見通し 「世界的な成長の勢いが衰え不況に対応する政策的余地が限られる中、経済活動を害しかねない政策ミスを回避することを主な優勢事項にする必要がある」 ドル円111円台前半から111円割れ。株価も大きく下落。
4/9 ラガルド・IMF専務理事 「世界経済は、微妙な瞬間に直面している」 --------
4/10 FOMC議事録 フェデラルファンド(FF)金利誘導目標の適切なレンジに対する見解は、今後のデータや他の動向に基づいてどちらの方向にも変わり得るとの考えを幾人かの参加者が示した。 公表後、ややドルが上昇。
4/11 クラリダ/FRB副議長 「現在の景気拡大局面が今年半ばに米史上の最長記録を更新する可能性は非常に高い」 --------
4/12 ムニューシン・米財務長官 「為替も議題となり、協定には通貨切り下げを自制する為替条項を含めることになる」 --------
4/13 黒田・日銀総裁 「金融政策の余地がないと決め付けることはできない。わが国についてもまだ必要があれば、さらなる追加緩和ということを考える余地はある」 --------
4/13 ドラギ・ECB総裁 「中銀の独立性に関し、確かに懸念している・・・・。世界で最も重要な地域においてだ」IMFの会合で、FRBに利下げ圧力をかけているトランプ大統領を暗に批判したと思える発言を。 --------
4/14 トランプ・米大統領 「FRBは適切に仕事をしていなかった。もしそうしていれば米株価はさらに5000−10000ポイント上昇していただろう。量的引き締めは破壊的だ。真逆のことをすべきだった」あらためてFRBを批判。 --------
4/23 トランプ・米大統領 「ハーレーは現在31%のEUの関税に苦しんでいる。この関税の一部を相殺するため、ハーレーは製造拠点を海外に移転せざるを得なかった。EUの関税率は2021年6月に66%に引き上げられる。米国に対し、非常に不当だ。われわれは報復する!」 --------
4/25 日銀金融政策決定会合 「当分の間、少なくとも2020年春ごろまで現在の極めて低い長短金利の水準を維持する」 ドル円111円台後半から売られる。
4/30 トランプ・米大統領 「中国が金融緩和で大規模な景気刺激策と取っている。われわれのFRBは低インフレにも関わらず、絶え間なく利上げを実施した」「FOMCが1ポイントの利下げを実施すれば、米経済はロケットのように上昇する」 --------
5/5 トランプ・米大統領 中国との通商協議は続いているが、進展があまりに遅い。中国側が再交渉を企てている。ノー。10%の(関税)は金曜日(10日)に25%にあがるだろう。 ドル円111円台前半から110円29銭まで急落。
5/7 中国「環球時報」 「中国は協議の一時的な中断を含めて、他に想定される結果に十分備えている」 ドル円の下落を加速させ、株価は下落。
5/7 クラリダFRB副議長 (当局による利下げは)「現時点でその状況にあるとは考えていない。どちらの方向にも金利を動かす強い論拠は見られない」 --------
5/8 トランプ・米大統領 「中国の劉鶴副首相が取引をするため米国にやってくる。様子を見ているが、年1千億ドル超の関税が米国の金庫に入ってくるのにとても満足している」 --------
5/11 トランプ・米大統領 (中国は)「今、行動することが賢明だろう。最近の交渉で中国は手ひどく打ちのめされたので、次の選挙まで待った方が良さそうだと感じていると思う。だが唯一の問題は私が勝利するであろうことを彼らが知っていることだ」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和