今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

2019年5月29日(水) 「米長期金利2.2%台に低下」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場

  • ドル円は朝方、経済指標の上振れを好感し109円61銭までドルが買われたものの、長期金利の低下と株価の下落に伴ってジリジリと値を下げ、109円33銭まで売られた。
  • イタリアの財政懸念が重石となりユーロドルは1.11台半ばまで売られる。ユーロは対円でも1月3日急落時以来となる122円前後まで売られる。
  • 株式市場は大幅に反落。米中貿易問題が長引くとの見方からダウは237ドル安と、この日の安値近辺で取引を終える。
  • 安全資産の債券は続伸。長期金利は2017年10月以来の低水準となる2.2%台まで低下。
  • 金は続落し、原油は続伸。
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3月FHFA住宅価格指数    → 1.1%
3月ケース・シラ−住宅価格指数 → 2.7%
5月消費者信頼感指数      → 134.1
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ドル/円 109.33 〜 109.61
ユーロ/ドル 1.1159 〜 1.1195
ユーロ/円 122.00 〜 122、62
NYダウ −237.92  → 25,347.77ドル
GOLD −6.50 → 1,277.10ドル
WTI +0.51 → 59.14ドル
米10年国債 −0.054 → 2.266%

本日の注目イベント

  • 日 黒田日銀総裁講演
  • 独 独5月雇用統計
  • 米 5月リッチモンド連銀製造景気指数
  • 加 カナダ中銀政策金利発表

注目されていたトランプ大統領の来日でしたが、一部で期待されていたような日米貿易問題や米中貿易問題を巡る解決の糸口は見つからず、米中貿易問題ではむしろ中国の強硬な姿勢に手を焼いているトランプ政権の姿が浮き彫りになった印象もあります。また、日米の貿易を巡ってはお互いの意図している着地点が異なっていることが明らかになった会合でした。結局今回の一連の会合を終えて、政治的背景もあり貿易問題は長期化することが確認された形でした。特に2020年の大統領選を控えているトランプ大統領にとっては、時間との問題もあり、早い段階で目に見える成果をあげたいといった思惑もあり、そのためには中国との関税問題で合意に達することが、国民にアピールできる最大の成果となっているようです。

連休明けのNY市場ではこのように、米中貿易問題は簡単には合意に達しないとの見方が広がり、株価が大きく下落。資金が株式から債券に流れ米国債は大幅に上昇し、長期金利が低下しました。昨年11月には3.2%台まで上昇した米長期金利が昨日は、2.2%台まで低下し、2017年10月以来の低水準を記録しています。市場が将来の貿易問題の激化によるリスクを織り込んでいるということと、その結果、世界景気が鈍化し、低金利が続くといった見立てが債券買いに拍車をかけていると考えられます。また日本の機関投資家など、自国の低金利政策を受け資金運用に苦慮している投資家が、低下したとはいえ、相対的に金利の高い米国債を買っているとの観測もあります。米長期金利の低下はドル売り材料と考えられますが、昨日のように金利が急低下した割にはドル円がそれほど下げないことと整合します。

昨日のNY市場では「ドル安円高」が進む一方、ユーロドルでは「ドル高ユーロ安」が進み、3通貨で言えば、円が最強、ユーロが最弱通貨になっています。ユーロ円は今年1月3日早朝のあの異常値以来の安値ということになり、もしこの異常値がなかったとしたら、2017年5月以来2年ぶりの「円高ユーロ安」ということになります。リスク回避の円買いと、欧州委員会がイタリアに対し、財政規律違反の手続きを検討するとの報道でユーロが売られたことが背景です

米10年債利回りが2.2%台まで低下したことで、米3カ月物Tビル(財務省短期証券)との金利が逆転し、「逆イールド」が加速してきました。「逆イールド」は3月にも発生し、その後は「順イールド」に戻りましたが、再び「逆イールド」が見られ、昨日のNY市場の引け値ベースでは、3カ月物Tビルは2.30%近辺で取引を終えており、その差は3.4bpと、さらに拡大しています。「逆イールド」の発生は将来のリセッションの前兆との見方があり、好調だった米景気の先行きにも暗雲が立ち込めてきたといった見方も出ています。もっとも、市場が注目しているのは2年債と10年債との「逆イールド」であって、今回の現象から即米景気がリセッションに陥ると考えるのは早計です。昨日発表された5月の消費者マインドは市場予想を大きく超えるものでした。米中貿易問題が行き詰る中でも消費者心理はそれほど悪化していないということになります。引き続き経済指標と金利の推移には目を凝らしておきたいと思います。

本日は再びドルの底値を探る展開を予想しています。レンジは108円90銭〜109円70銭程度といったところでしょうか。

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時     発言者     内容   市場への影響   
4/5 ククドロー・国家経済会議(NEC)委員長 (多くの電話会議を通じて通商合意に)「一段と近づいている」 --------
4/9 IMF・世界経済見通し 「世界的な成長の勢いが衰え不況に対応する政策的余地が限られる中、経済活動を害しかねない政策ミスを回避することを主な優勢事項にする必要がある」 ドル円111円台前半から111円割れ。株価も大きく下落。
4/9 ラガルド・IMF専務理事 「世界経済は、微妙な瞬間に直面している」 --------
4/10 FOMC議事録 フェデラルファンド(FF)金利誘導目標の適切なレンジに対する見解は、今後のデータや他の動向に基づいてどちらの方向にも変わり得るとの考えを幾人かの参加者が示した。 公表後、ややドルが上昇。
4/11 クラリダ/FRB副議長 「現在の景気拡大局面が今年半ばに米史上の最長記録を更新する可能性は非常に高い」 --------
4/12 ムニューシン・米財務長官 「為替も議題となり、協定には通貨切り下げを自制する為替条項を含めることになる」 --------
4/13 黒田・日銀総裁 「金融政策の余地がないと決め付けることはできない。わが国についてもまだ必要があれば、さらなる追加緩和ということを考える余地はある」 --------
4/13 ドラギ・ECB総裁 「中銀の独立性に関し、確かに懸念している・・・・。世界で最も重要な地域においてだ」IMFの会合で、FRBに利下げ圧力をかけているトランプ大統領を暗に批判したと思える発言を。 --------
4/14 トランプ・米大統領 「FRBは適切に仕事をしていなかった。もしそうしていれば米株価はさらに5000−10000ポイント上昇していただろう。量的引き締めは破壊的だ。真逆のことをすべきだった」あらためてFRBを批判。 --------
4/23 トランプ・米大統領 「ハーレーは現在31%のEUの関税に苦しんでいる。この関税の一部を相殺するため、ハーレーは製造拠点を海外に移転せざるを得なかった。EUの関税率は2021年6月に66%に引き上げられる。米国に対し、非常に不当だ。われわれは報復する!」 --------
4/25 日銀金融政策決定会合 「当分の間、少なくとも2020年春ごろまで現在の極めて低い長短金利の水準を維持する」 ドル円111円台後半から売られる。
4/30 トランプ・米大統領 「中国が金融緩和で大規模な景気刺激策と取っている。われわれのFRBは低インフレにも関わらず、絶え間なく利上げを実施した」「FOMCが1ポイントの利下げを実施すれば、米経済はロケットのように上昇する」 --------
5/5 トランプ・米大統領 中国との通商協議は続いているが、進展があまりに遅い。中国側が再交渉を企てている。ノー。10%の(関税)は金曜日(10日)に25%にあがるだろう。 ドル円111円台前半から110円29銭まで急落。
5/7 中国「環球時報」 「中国は協議の一時的な中断を含めて、他に想定される結果に十分備えている」 ドル円の下落を加速させ、株価は下落。
5/7 クラリダFRB副議長 (当局による利下げは)「現時点でその状況にあるとは考えていない。どちらの方向にも金利を動かす強い論拠は見られない」 --------
5/8 トランプ・米大統領 「中国の劉鶴副首相が取引をするため米国にやってくる。様子を見ているが、年1千億ドル超の関税が米国の金庫に入ってくるのにとても満足している」 --------
5/11 トランプ・米大統領 (中国は)「今、行動することが賢明だろう。最近の交渉で中国は手ひどく打ちのめされたので、次の選挙まで待った方が良さそうだと感じていると思う。だが唯一の問題は私が勝利するであろうことを彼らが知っていることだ」 --------
5/20 ブラード・セントルイス連銀総裁 PCEコア指数が前年同月比1.6%上昇という状況について、「この状況が長引くようであれば、利下げ、インフレ期待の中心を再び2%にするよう私はFOMCでより強く主張する」 --------
5/20 張明EU大使 中国には自国の正当な権利と利益を守るための揺るぎない決意がある。米国が闘うというなら、われわれは最後までそれに付き合い、真剣に闘う。言い換えるなら、ボールは米側のコートにある。 --------
5/20 ロウ・オーストラリア準備銀行総裁 雇用をより促進するため、来月の会合で政策金利引き上げの検討を行う。低いキャッシュレートは雇用の伸びを後押しし、インフレが目標と合致するタイミングを早める。 豪ドル円76銭台前半 → 75円80銭前後まで下落。
5/23 人民日報 1年余りにわたり米国は「乱暴者」のように振舞ってきた。関税を振りかざし、貿易戦争をあおり、ルールに基づく多国間貿易システムを攻撃した。大型関税を課すことで米国は自らのコミットメントとWTOルールを無視し、国際ルールより一方的な利益を意図的に優先させた。 ドル円110円台から109円46銭まで急落。株価も大幅安となり、長期金利は2.3%台を割り込む。
5/27 トランプ・米大統領 貿易に関して、われわれは恐らく8月に両国にとって非常に好ましい何かを発表するだろう。日本の対米ビジネスは米国の対日ビジネスよりがはるかに多いため、われわれは少し巻き返す必要がある。われわれは逆に対日ビジネスを増やしたい。 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和