今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

2019年6月5日(水) 「パウエル発言を受けNYダウ500ドルを超える急騰」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場

  • 東京時間に107円85銭前後まで売られたドル円は反発。中国が貿易交渉に前向きな姿勢を見せたことからドル円は108円35銭まで上昇。その後パウエル議長の講演で利下げの可能性が高まったことでやや軟調な動きを見せたものの、108円台はキープ。
  • ユーロドルは小幅に続伸。1.1267まで買われ、この日は終始1.12台での取引きに。
  • パウエル議長が利下げの可能性に言及したことで、株価は大幅に反発。ダウは512ドル上昇しほぼ全面高。前日大きく売られたナスダックも194ポイント上昇。
  • 債券相場は小幅に下落。長期金利は2.13%台に上昇。
  • 金は5日続伸。原油価格も5日ぶりに反発。
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4月耐久財受注 → −2.1%
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ドル/円 107.98 〜 108.35
ユーロ/ドル 1.1227 〜 1.1267
ユーロ/円 121.47 〜 121.78
NYダウ +512.40 → 25,332.18ドル
GOLD +0.80 → 1,328.70ドル
WTI +0.23 → 53.48ドル
米10年国債 +0.059 → 2.130%

本日の注目イベント

  • 豪 豪1−3月期GDP
  • 中 中国5月財新サービス業PMI
  • 中 中国5月財新コンポジットPMI
  • 独 独5月サービス業PMI(改定値)
  • 欧 ユーロ圏5月総合PMI
  • 欧 ユーロ圏5月サービス業PMI
  • 欧 ユーロ圏4月小売売上高
  • 欧 ユーロ圏4月生産者物価指数
  • 米 ベージュブック(地区連銀経済報告)
  • 米 5月ADP雇用者数
  • 米 5月ISM非製造業景況指数
  • 米 クラリダ・FRB副議長挨拶
  • 米 ボスティック・アトランタ連銀総裁講演

ドル円は昨日の東京時間に107円85銭前後まで下げ、1月7日以来の円高水準をつけましたが、その後の海外市場ではやや反発しています。NY株式市場ではこのところ軟調な株価がパウエルFRB議長の講演をきっかけに急騰しましたが、FRBが今後利下げに動く可能性が高まったことでドル円の反発は限られています。

パウエル議長はシカゴ連銀の会議で講演し、貿易交渉などの問題に関して、「どのように、またいつ解決するのか分からない」と指摘した上で、「そうした状況が米経済の行方に与える影響を注意深く観察し、これまでと同様、景気拡大を維持するためわれわれは適切な行動を取る。労働市場は力強く、インフレ率は当局の対称的な2%の目標付近にある」と語っています。前日のブラード・セントルイス連銀総裁や、クラリダ副議長に続き、「本命のパウエル議長」も条件つきながら利下げの可能性に触れたことで、利下げが現実的になってきました。年内利下げの確率は、現時点で、「98.2%」まで上昇し、6月会合での利下げ確率も「19.7%」まで高まっています。さらに年内に2回の利下げを行う確率も「32.9%」と、金利先物市場では徐々に利下げを織り込む動きになってきました。ただこのような状況の中でも、「タカ派」の代表格であるエバンス・シカゴ連銀総裁は利下げ圧力を一蹴しています。総裁は、「インフレがやや低めのため必要に応じて政策を調整する余地はあるが、経済のファンダメンタルズは引き続き底堅い。個人消費も底堅い。これが実際に何を意味するのかわれわれは熟慮する必要がある」と、CNBCとのインタビューで述べています。(ブルームバーグ)

FRBが最後の「利上げ」を実施したのが昨年12月の会合でした。仮に今月のFOMCで利下げに踏み切れば、わずか半年で金融政策を変更することになり、異例なことと言えます。言い換えれば、それほど「貿易戦争の影響が大きい」ということと、「トランプ・リスクの先行きが読めない」ということを示していると理解できます。今月の会合での利下げは個人的にはないだろうと見ていますが、今週末に発表される5月の雇用統計が予想を大きく下回る結果になれば、その可能性が五分五分になるかもしれません。米中の貿易戦争の影響が本格的に出てくるのはこれからだと予想されます。FOMCは今月18−19日に開催されます。続いて7月と9月にも開催され、9月の会合までには利下げは実施されると予想しますが、引き続き米経済指標がどのような内容を示すのかを見極める必要があります。穿った見方かもしれませんが、今後の経済指標が下振れするようなら、FRBとしても利下げの理由が明確になり、「正々堂々と」利下げを実施でき、少なくともトランプ大統領の「圧力による利下げ」ではないことを、内外に示すことができます。

株式市場は利下げの可能性を好感し、ほぼ全面高の様相を見せましたが、利下げは日米金利差の縮小につながることで、ドル円の伸びは限定的でした。もちろんドル円の方向性が金利差だけで決まるものではありませんが、金利差がドル円の上昇にとっては重要なファクターの一つであることは間違いありません。今後株価が底入れし、徐々に上昇に転じていけば「リスクオン」の流れが広がり、円が売られる展開も十分考えられます。いずれにしても今後数カ月以内には利下げが実施されることを念頭に置きながら、貿易戦争の行方を見守る他ありません。本日は日経平均株価もさすがに買われ、250―400円程度の上昇もあるでしょう。ドル円のレンジは107円80銭〜108円50程度と予想します。

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時     発言者     内容   市場への影響   
5/5 トランプ・米大統領 中国との通商協議は続いているが、進展があまりに遅い。中国側が再交渉を企てている。ノー。10%の(関税)は金曜日(10日)に25%にあがるだろう。 ドル円111円台前半から110円29銭まで急落。
5/7 中国「環球時報」 「中国は協議の一時的な中断を含めて、他に想定される結果に十分備えている」 ドル円の下落を加速させ、株価は下落。
5/7 クラリダFRB副議長 (当局による利下げは)「現時点でその状況にあるとは考えていない。どちらの方向にも金利を動かす強い論拠は見られない」 --------
5/8 トランプ・米大統領 「中国の劉鶴副首相が取引をするため米国にやってくる。様子を見ているが、年1千億ドル超の関税が米国の金庫に入ってくるのにとても満足している」 --------
5/11 トランプ・米大統領 (中国は)「今、行動することが賢明だろう。最近の交渉で中国は手ひどく打ちのめされたので、次の選挙まで待った方が良さそうだと感じていると思う。だが唯一の問題は私が勝利するであろうことを彼らが知っていることだ」 --------
5/20 ブラード・セントルイス連銀総裁 PCEコア指数が前年同月比1.6%上昇という状況について、「この状況が長引くようであれば、利下げ、インフレ期待の中心を再び2%にするよう私はFOMCでより強く主張する」 --------
5/20 張明EU大使 中国には自国の正当な権利と利益を守るための揺るぎない決意がある。米国が闘うというなら、われわれは最後までそれに付き合い、真剣に闘う。言い換えるなら、ボールは米側のコートにある。 --------
5/20 ロウ・オーストラリア準備銀行総裁 雇用をより促進するため、来月の会合で政策金利引き上げの検討を行う。低いキャッシュレートは雇用の伸びを後押しし、インフレが目標と合致するタイミングを早める。 豪ドル円76銭台前半 → 75円80銭前後まで下落。
5/23 人民日報 1年余りにわたり米国は「乱暴者」のように振舞ってきた。関税を振りかざし、貿易戦争をあおり、ルールに基づく多国間貿易システムを攻撃した。大型関税を課すことで米国は自らのコミットメントとWTOルールを無視し、国際ルールより一方的な利益を意図的に優先させた。 ドル円110円台から109円46銭まで急落。株価も大幅安となり、長期金利は2.3%台を割り込む。
5/27 トランプ・米大統領 貿易に関して、われわれは恐らく8月に両国にとって非常に好ましい何かを発表するだろう。日本の対米ビジネスは米国の対日ビジネスよりがはるかに多いため、われわれは少し巻き返す必要がある。われわれは逆に対日ビジネスを増やしたい。 --------
5/29 人民日報 米国は貿易戦争で中国が応酬する能力を過小評価すべきでない。 ドル円109円15銭近辺まで円高が進む。米国株は連日の大幅安。
5/29 クラリダFRB副議長 イールドカーブに注目している。最近のフラット化の大部分は世界の金融情勢が原因であり、FEDが政策を検討する際、重要な意味を持つ。 ドル円下落。債券は買われ、株価のも上昇。
5/30 トランプ・米大統領 メキシコが米国への不法移民流入を止めるまで同国からの輸入品に5%の関税を課す。 ドル円109円台を割り込み、日経平均株価は300円以上の下落。
6/2 中国国防相 対話したいならドアは開いている。戦いたいなら戦う。準備はできている。 --------
6/2 王受分中国商務次官 米中貿易協議の中断について米国に全責任がある。今後いかなる議論も誠実さと相互尊重、平等を基礎におく必要がある。全てが合意されるまで、何も合意はない。 --------
6/3 ブラード・セントルイス連銀総裁 インフレ率とインフレ期待を目標に近づけるのを助け、予想より急激な景気減速に備えた保険を確保するためにも、政策金利に下方向の調整を加えることは近く正当化される可能性がある。貿易の抑制が米経済に直接及ぼす影響は比較的小さいが、世界の金融市場を通じて広がる影響はより大きくなる可能性がある。 ドル円108円台前半から107円台後半に。
6/4 パウエルFRB議長 これまでと同様、景気拡大を維持するためわれわれは適切な行動を取る。労働市場は力強く、インフレ率は当局の対称的な2%の目標付近にある。 NYダウが512ドル急騰するなど、米国株はほぼ前面高の展開に。
6/4 エバンス・シカゴ連銀総裁 インフレがやや低めのため必要に応じて政策を調整する余地はあるが、経済のファンダメンタルズは引き続き底堅い。個人消費も底堅い。これが実際に何を意味するのかわれわれは熟慮する必要がある。 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和