2019年6月6日(木) 「ドル円108円台半ばまで反発」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
- 予想外のADP雇用者数の下振れに、ドル円は107円81銭まで売られる。ただその後は利下げ観測がさらに高まり、ISM非製造業指数が良好だったことで108円台を回復。メキシコとの関税問題が好転するとの期待もあり、108円48銭までドル高が進む。
- ユーロドルも朝方は1.1306まで上昇し、4月17日以来となるユーロ高を記録したものの、その後は軟調な展開に。1.1220まで押し戻され、この日の底値圏で引ける。
- 株式市場は大幅に続伸。メキシコとの関税回避への楽観的な見方と、利下げ観測が相場を押し上げる。ダウは207ドル上昇し、連日の大幅高となり、他の主要指数も揃って続伸。
- 債券相場はほぼ変わらず。長期金利は2.13%台で小幅に上昇。
- 金は6日続伸し、1333ドル台に。原油価格は大幅に反落し51ドル台半ばに。
5月ADP雇用者数 → 2.7万件
5月ISM非製造業景況指数 → 56.9
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| ドル/円 | 107.81 〜 108.48 |
|---|---|
| ユーロ/ドル | 1.1220 〜 1.1306 |
| ユーロ/円 | 121.55 〜 122.26 |
| NYダウ | +207.39 → 25,539.57ドル |
| GOLD | +4.90 → 1,333.60ドル |
| WTI | −1.80 → 51.68ドル |
| 米10年国債 | +0.005 → 2.135% |
本日の注目イベント
- 日 黒田日銀総裁講演
- 欧 ユーロ圏1−3月期GDP(速報値)
- 欧 ECB政策金利発表
- 欧 ドラギ・ECB総裁記者会見
- 英 カーニー・BOE総裁講演
- 米 4月貿易収支
- 米 労働生産性(1−3月)
- 米 新規失業保険申請件数
- 米 カプラン・ダラス連銀総裁講演
- 米 ウィリアムズ・NY連銀総裁講演
- 加 カナダ4月貿易収支
5月のADP雇用者数には驚きました。市場予想の「18.5万人」に対して「2.7万人」と、大きく下振れしていました。この結果を受けてドル円は再び108円を割り込み、107円81銭まで売られましたが、その後は再び108円台を回復し、108円48銭までドル高が進む展開でした。
ドルを押し上げたのはナバロ国家通商会議(NTC)委員長が、10日に発動が計画されているメキシコへの5%の関税措置について、「メキシコ当局者が回避する時間はまだある」と発言し方法としては、亡命希望者の受け入れや国境に配備している要員の増加などに合意することを挙げたと、ブルームバーグは伝えています。また、その後に発表された5月ISM製造業景況指数が予想以上に良好だったこともドル円を押し上げていますが、前日のパウエルFRB議長の発言を契機に、利下げ期待がさらに高まったことで株価が連日の大幅高を演じたことも、投資家のリスク・センチメント好転につながったようです。もっとも、本稿執筆時には米CNBCが、米国とメキシコの当局者は5日ワシントンでの会談で、関税回避で合意できなかったと報じ、ドル円を20銭ほど下押しする場面もあり、依然として関税問題に相場が振り回される状況が続いています。
NY株式市場では株価が連日の大幅高を演じています。前日のパウエルFRB議長の講演内容が、利下げを示唆したものと受け止め、今後FRBは金融緩和に転じるとの観測が相場を押し上げています。個人的には、市場が「やや前のめり」だといった印象は拭えませんが、貿易戦争で今後米景気の後退を示す兆候があれば適切に行動するといった状況で、市場はそれを「利下げ」へのフォワードガイダンスだと受け止めたようです。昨日もその流れが続き、7月会合での利下げ確率は70%まで上昇しています。
そんな中、ダラス連銀のカプラン総裁は昨日ブルームバーグとのインタビューで、「(政策金利を引き下げるという)その判断を下すには時期尚早だ」との認識を示しています。総裁は、「貿易を巡る緊張の高まりを把握すべく強く警戒していく。そうした緊張が経済に影響を及ぼすのか、そしてこれは最も重要なことだが、緊張が根強く続くのかどうかを注視していく」と語っています。カプラン総裁は今年のFOMCでの議決権は持っていませんが、議長、副議長が「ハト派」的な姿勢に傾いている中、シカゴ連銀総裁ほど「タカ派」的な姿勢ではなく、やや中立的な立場を取っているようです。
FOMCメンバーによるこれら一連の発言から読み取れることは、FOMC内部でも今後の金融政策に対する意見は明確に分かれているということです。今後の経済指標次第では「利下げ」、「ニュートラル」の、どちらにも振れるということで、発表される経済指標も昨日のように、強弱まちまちです。昨日はベージュブック(地区連銀報告書)も公表されましたが、ここでもフィラデルフィア地区と、ダラス地区では貿易問題の不透明さが企業のセンチメントを圧迫していると報告された一方、多くの地区で、「経済活動は緩慢なペースではあるが拡大している」としていました。明日は5月の雇用統計が発表されます。予想外のADP雇用者数の結果を受けて、今回の雇用統計はその内容がより注目されることになります。
ドル円はまだ下値リスクの方が高いと見ていますが、107円80−85銭レベルは3度試して押し戻される展開が続いており、底堅さも見せています。以前に比べようやくドル円にも動きが出てきました。伝わって来る報道には、強弱どちらの情報も含まれている状況です。ここは、「根っこ」の部分はキャリーしても、それ以外のポジションは深追いせず、ある程度利益が見込める段階で閉じることも必要かと思います。本日の予想レンジは107円80銭〜108円60銭程度と見ています。
What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
| 日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
|---|---|---|---|
| 5/5 | トランプ・米大統領 | 中国との通商協議は続いているが、進展があまりに遅い。中国側が再交渉を企てている。ノー。10%の(関税)は金曜日(10日)に25%にあがるだろう。 | ドル円111円台前半から110円29銭まで急落。 |
| 5/7 | 中国「環球時報」 | 「中国は協議の一時的な中断を含めて、他に想定される結果に十分備えている」 | ドル円の下落を加速させ、株価は下落。 |
| 5/7 | クラリダFRB副議長 | (当局による利下げは)「現時点でその状況にあるとは考えていない。どちらの方向にも金利を動かす強い論拠は見られない」 | -------- |
| 5/8 | トランプ・米大統領 | 「中国の劉鶴副首相が取引をするため米国にやってくる。様子を見ているが、年1千億ドル超の関税が米国の金庫に入ってくるのにとても満足している」 | -------- |
| 5/11 | トランプ・米大統領 | (中国は)「今、行動することが賢明だろう。最近の交渉で中国は手ひどく打ちのめされたので、次の選挙まで待った方が良さそうだと感じていると思う。だが唯一の問題は私が勝利するであろうことを彼らが知っていることだ」 | -------- |
| 5/20 | ブラード・セントルイス連銀総裁 | PCEコア指数が前年同月比1.6%上昇という状況について、「この状況が長引くようであれば、利下げ、インフレ期待の中心を再び2%にするよう私はFOMCでより強く主張する」 | -------- |
| 5/20 | 張明EU大使 | 中国には自国の正当な権利と利益を守るための揺るぎない決意がある。米国が闘うというなら、われわれは最後までそれに付き合い、真剣に闘う。言い換えるなら、ボールは米側のコートにある。 | -------- |
| 5/20 | ロウ・オーストラリア準備銀行総裁 | 雇用をより促進するため、来月の会合で政策金利引き上げの検討を行う。低いキャッシュレートは雇用の伸びを後押しし、インフレが目標と合致するタイミングを早める。 | 豪ドル円76銭台前半 → 75円80銭前後まで下落。 |
| 5/23 | 人民日報 | 1年余りにわたり米国は「乱暴者」のように振舞ってきた。関税を振りかざし、貿易戦争をあおり、ルールに基づく多国間貿易システムを攻撃した。大型関税を課すことで米国は自らのコミットメントとWTOルールを無視し、国際ルールより一方的な利益を意図的に優先させた。 | ドル円110円台から109円46銭まで急落。株価も大幅安となり、長期金利は2.3%台を割り込む。 |
| 5/27 | トランプ・米大統領 | 貿易に関して、われわれは恐らく8月に両国にとって非常に好ましい何かを発表するだろう。日本の対米ビジネスは米国の対日ビジネスよりがはるかに多いため、われわれは少し巻き返す必要がある。われわれは逆に対日ビジネスを増やしたい。 | -------- |
| 5/29 | 人民日報 | 米国は貿易戦争で中国が応酬する能力を過小評価すべきでない。 | ドル円109円15銭近辺まで円高が進む。米国株は連日の大幅安。 |
| 5/29 | クラリダFRB副議長 | イールドカーブに注目している。最近のフラット化の大部分は世界の金融情勢が原因であり、FEDが政策を検討する際、重要な意味を持つ。 | ドル円下落。債券は買われ、株価のも上昇。 |
| 5/30 | トランプ・米大統領 | メキシコが米国への不法移民流入を止めるまで同国からの輸入品に5%の関税を課す。 | ドル円109円台を割り込み、日経平均株価は300円以上の下落。 |
| 6/2 | 中国国防相 | 対話したいならドアは開いている。戦いたいなら戦う。準備はできている。 | -------- |
| 6/2 | 王受分中国商務次官 | 米中貿易協議の中断について米国に全責任がある。今後いかなる議論も誠実さと相互尊重、平等を基礎におく必要がある。全てが合意されるまで、何も合意はない。 | -------- |
| 6/3 | ブラード・セントルイス連銀総裁 | インフレ率とインフレ期待を目標に近づけるのを助け、予想より急激な景気減速に備えた保険を確保するためにも、政策金利に下方向の調整を加えることは近く正当化される可能性がある。貿易の抑制が米経済に直接及ぼす影響は比較的小さいが、世界の金融市場を通じて広がる影響はより大きくなる可能性がある。 | ドル円108円台前半から107円台後半に。 |
| 6/4 | パウエルFRB議長 | これまでと同様、景気拡大を維持するためわれわれは適切な行動を取る。労働市場は力強く、インフレ率は当局の対称的な2%の目標付近にある。 | NYダウが512ドル急騰するなど、米国株はほぼ前面高の展開に。 |
| 6/4 | エバンス・シカゴ連銀総裁 | インフレがやや低めのため必要に応じて政策を調整する余地はあるが、経済のファンダメンタルズは引き続き底堅い。個人消費も底堅い。これが実際に何を意味するのかわれわれは熟慮する必要がある。 | -------- |
| 6/5 | カプラン・ダラス連銀総裁 | (政策金利を引き下げるという)その判断を下すには時期尚早だ。 | -------- |



