今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

2019年6月10日(月) 「米5月雇用統計 大幅に悪化」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場

  • ドル円は5月の雇用統計で、予想を大きく下回る雇用者数が発表されたことで107円88銭まで下落。ただその後はメキシコとの関税を巡る問題が好転したことで108円台を回復し、108円20−25銭近辺で越週。
  • ユーロドルでもドル安が進み、1.1348までユーロが買われる。
  • 株式市場は利下げ観測と、トランプ大統領がメキシコに対する関税を見送ると発表したことで大きく上昇。ダウは5日続伸し、S&P500なども4日続伸。
  • 債券相場は続伸し、長期金利は一時2.05%台まで低下。引けにかけては2.08%台まで反発。
  • 金は8日続伸。原油価格も続伸し、54ドル近辺まで上昇。
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◆5月失業率        →  3.6%
◆5月非農業部門雇用者数  →  7.5万人
◆5月平均時給 (前月比) →  0.2%
◆5月平均時給 (前年比) →  3.1%
◆5月労働参加率      → 62.8%
◆4月消費者信用残高    → 17.497
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ドル/円 107.88 〜 108.50
ユーロ/ドル 1.1269 〜 1.1348
ユーロ/円 122.08 〜 122.71
NYダウ +263.28 → 25,983.94ドル
GOLD +3.40 → 1,346.10ドル
WTI +1.40 → 53.99ドル
米10年国債 −0.036 → 2.081%

本日の注目イベント

  • 日 4月貿易収支
  • 日 5月景気ウオッチャー調査
  • 中 中国5月貿易収支
  • 中 中国5月マネーサプライ
  • 英 英4月貿易収支
  • 英 英4月鉱工業生産
  • 英 英4月月次GDP
  • 加 カナダ5月住宅着工件数
  • 加 カナダ4月建設許可件数

5月の雇用統計はサプライズでした。非農業部門雇用者数が、予想の17.5万人に対して、7.5万人と、大きく下振れしていました。民間の雇用統計である「ADP雇用者数」でも大きく予想を下振れしていたことから、「ひょっとしたら・・・?」との観測もありましたが、この両者は必ずしも連動していないことから、楽観視していただけに驚きでした。今回の内容は5月分が予想を下回っただけではなく、4月分、3月分もともに大きく下方修正され、むしろこちらの方がより驚きが大きいかもしれません。

ここから読み取れることは、米労働市場は今年の春先からすでに後退局面入りしていた可能性が高いということです。米経済指標に関しては、昨年ほどの好調さは見られず、それでも今年は強弱まちまちで、相対的には日本や欧州など、他の主要国と比べ優位性を維持していました。これが、米中貿易戦争が激化したにも関わらずドルが堅調に推移していた理由の一つでした。今後この労働市場が縮小に向かうとすれば、当然金融当局が金融政策の舵を再度切り直すことは想像に難くありません。事実、雇用統計が発表された先週金曜日の債券市場では、FRBが年内に2〜3回の利下げに動くといった観測から長期債が買われ、長期金利は一時2.05%台まで低下する場面もありました。FRBの使命は「物価の安定」ということに加え、日銀やECBにはないもう一つの使命である「雇用の最大化」という使命が法律で課せられています。2015年末にリーマンショック後初めて利上げに踏み切って以来、政策金利に連動する形で雇用は順調に拡大してきました。その雇用にも、そろそろ暗雲が立ち込めてきたということですが、今後米中貿易戦争が激化するようなら、労働市場はさらに縮小ペースを速める可能性もあり、「雇用統計」が再び市場の注目を大きく集める日が来そうです。

トランプ大統領は7日、メキシコからの輸入品への関税発動を見送ると発表しました。メキシコが移民を食い止める強硬な措置を取ることで合意したことが、その理由になっています。トランプ氏はまた、「メキシコが大量の農産品を購入することで合意した」とも述べ、メキシコとの「ディール」が成功したことをアピールしています。NY株式市場はこの報道を好感し、ダウは263ドル高で取引を終えました。ダウはこの結果、先週5日間を通じて全て上昇し、この間の上昇幅は1168ドルと、4.7%の上昇率を記録しています。上記メキシコとの関税問題が解消したことに加え、FRBが利下げを行うとの見通しが急速に高まり、足元ではFRBが年内に利下げを行う確率は「97.9%」まで上昇しています。早ければ今月の会合でその議論を行い、7月の会合での利下げといった見方が有力です。さらに年内に2回利下げを行う確率も、34%程度まで高まっています。「米中貿易問題の不透明さ」と、「雇用の悪化」が利下げ観測を高めたという、やや皮肉な結果になっています。

ドル円は先週末にも107円台後半を試しましたが、押し戻されています。これで107円80−90銭の水準を4回ほど試しましたが、全て押し戻されており、この水準がかなりしっかりしたサポートレベルと見られています。一目均衡表ではまだ下落基調を維持していますが、「MACD」では、8時間までの足でゴールデンクロスを示現してます。まだドルの上値は重いものの、何かのきっけでは109円に向かう可能性もあるかもしれません。「戻り売り」のスタンスを維持しながらも、「日足」のゴールデンクロスには注意したいところです。

本日のドル円は108円〜108円70銭程度を予想します。

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時     発言者     内容   市場への影響   
5/5 トランプ・米大統領 中国との通商協議は続いているが、進展があまりに遅い。中国側が再交渉を企てている。ノー。10%の(関税)は金曜日(10日)に25%にあがるだろう。 ドル円111円台前半から110円29銭まで急落。
5/7 中国「環球時報」 「中国は協議の一時的な中断を含めて、他に想定される結果に十分備えている」 ドル円の下落を加速させ、株価は下落。
5/7 クラリダFRB副議長 (当局による利下げは)「現時点でその状況にあるとは考えていない。どちらの方向にも金利を動かす強い論拠は見られない」 --------
5/8 トランプ・米大統領 「中国の劉鶴副首相が取引をするため米国にやってくる。様子を見ているが、年1千億ドル超の関税が米国の金庫に入ってくるのにとても満足している」 --------
5/11 トランプ・米大統領 (中国は)「今、行動することが賢明だろう。最近の交渉で中国は手ひどく打ちのめされたので、次の選挙まで待った方が良さそうだと感じていると思う。だが唯一の問題は私が勝利するであろうことを彼らが知っていることだ」 --------
5/20 ブラード・セントルイス連銀総裁 PCEコア指数が前年同月比1.6%上昇という状況について、「この状況が長引くようであれば、利下げ、インフレ期待の中心を再び2%にするよう私はFOMCでより強く主張する」 --------
5/20 張明EU大使 中国には自国の正当な権利と利益を守るための揺るぎない決意がある。米国が闘うというなら、われわれは最後までそれに付き合い、真剣に闘う。言い換えるなら、ボールは米側のコートにある。 --------
5/20 ロウ・オーストラリア準備銀行総裁 雇用をより促進するため、来月の会合で政策金利引き上げの検討を行う。低いキャッシュレートは雇用の伸びを後押しし、インフレが目標と合致するタイミングを早める。 豪ドル円76銭台前半 → 75円80銭前後まで下落。
5/23 人民日報 1年余りにわたり米国は「乱暴者」のように振舞ってきた。関税を振りかざし、貿易戦争をあおり、ルールに基づく多国間貿易システムを攻撃した。大型関税を課すことで米国は自らのコミットメントとWTOルールを無視し、国際ルールより一方的な利益を意図的に優先させた。 ドル円110円台から109円46銭まで急落。株価も大幅安となり、長期金利は2.3%台を割り込む。
5/27 トランプ・米大統領 貿易に関して、われわれは恐らく8月に両国にとって非常に好ましい何かを発表するだろう。日本の対米ビジネスは米国の対日ビジネスよりがはるかに多いため、われわれは少し巻き返す必要がある。われわれは逆に対日ビジネスを増やしたい。 --------
5/29 人民日報 米国は貿易戦争で中国が応酬する能力を過小評価すべきでない。 ドル円109円15銭近辺まで円高が進む。米国株は連日の大幅安。
5/29 クラリダFRB副議長 イールドカーブに注目している。最近のフラット化の大部分は世界の金融情勢が原因であり、FEDが政策を検討する際、重要な意味を持つ。 ドル円下落。債券は買われ、株価のも上昇。
5/30 トランプ・米大統領 メキシコが米国への不法移民流入を止めるまで同国からの輸入品に5%の関税を課す。 ドル円109円台を割り込み、日経平均株価は300円以上の下落。
6/2 中国国防相 対話したいならドアは開いている。戦いたいなら戦う。準備はできている。 --------
6/2 王受分中国商務次官 米中貿易協議の中断について米国に全責任がある。今後いかなる議論も誠実さと相互尊重、平等を基礎におく必要がある。全てが合意されるまで、何も合意はない。 --------
6/3 ブラード・セントルイス連銀総裁 インフレ率とインフレ期待を目標に近づけるのを助け、予想より急激な景気減速に備えた保険を確保するためにも、政策金利に下方向の調整を加えることは近く正当化される可能性がある。貿易の抑制が米経済に直接及ぼす影響は比較的小さいが、世界の金融市場を通じて広がる影響はより大きくなる可能性がある。 ドル円108円台前半から107円台後半に。
6/4 パウエルFRB議長 これまでと同様、景気拡大を維持するためわれわれは適切な行動を取る。労働市場は力強く、インフレ率は当局の対称的な2%の目標付近にある。 NYダウが512ドル急騰するなど、米国株はほぼ前面高の展開に。
6/4 エバンス・シカゴ連銀総裁 インフレがやや低めのため必要に応じて政策を調整する余地はあるが、経済のファンダメンタルズは引き続き底堅い。個人消費も底堅い。これが実際に何を意味するのかわれわれは熟慮する必要がある。 --------
6/5 カプラン・ダラス連銀総裁 (政策金利を引き下げるという)その判断を下すには時期尚早だ。 --------
6/6 ドラギ・ECB総裁 最新の経済指標は世界的な向かい風がユーロ圏経済の見通しを圧迫していることを示している。理事会は不測の事態には行動し、あらゆる措置を取る準備ができている。 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和