今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

2019年6月11日(火) 「NY株さらに続伸」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場

  • ドル円はメキシコへの関税見送りを材料に108円67銭まで上昇。その後NYマンハッタンにヘリが墜落したとの報道に108円33銭まで下落し、108円台半ばで引ける。
  • ユーロドルは1.13を挟む展開となり小動き。
  • 株式市場は主要3指数とも揃って続伸。ダウは78ドル高と6日続伸し、2万6000ドルの大台を回復。
  • 債券相場は反落。長期金利は小幅に上昇し、2.14%台に。
  • 金は利益確定の売りに押され大幅安。原油も在庫増加観測から反落。
ドル/円 108.33 〜 108.67
ユーロ/ドル 1.1291 〜 1.1324
ユーロ/円 122.62 〜 122.85
NYダウ +78.74 → 26,062.68ドル
GOLD −16.80 → 1,329.30ドル
WTI −0.73 → 53.26ドル
米10年国債 +0.067 → 2.148%

本日の注目イベント

  • 英 英5月失業率
  • 米 5月生産者物価指数

米債券相場がやや下落したことで長期金利が小幅に上昇し、さらにメキシコに対する関税見送りの効果もあり、ドル円は堅調に推移しました。NYでは108円67銭までドル高が進みましたが、トランプ大統領が再び中国に対して圧力をかけたことでドルの上値は重い展開です。

トランプ氏は10日ホワイトハウスで、「中国の習近平国家主席がG20での会談に応じない場合、中国からの輸入品3000億ドル(約32兆5000億円)に対して直ちに25%の関税を課す可能性がある」と、これまでの主張を繰り返し「25%よりはるかに高い」可能性にも言及しました。また、CNBCとのインタビューでも、「習主席はG20に参加すると理解している。われわれは会談することになるだろう。それに、主席と私はすばらしい関係にある。実際のところ、驚くべき、偉大な人物だ。非常に強くて賢い。だが主席は中国のため、私は米国のために仕えている」とも述べています。そして最後に、「中国は取引せざるを得なくなるため、それに応じるだろう」と語っています。(ブルームバーグ)今回の発言はやや過激でしたが、一方で習主席に対して友好的な言葉も発していることから、現時点では市場への影響もほとんどないようでした。

トランプ氏はまた、FRBに対する批判も繰り返しています。今回は、中央銀行を支配下に置いている中国首脳と比較しながらの批判でした。「中国の金融当局を率いているのは習近平国家主席だ」と発言し、中国人民銀行は米金融当局と異なり、政治的に独立していないため、主要な政策決定において習主席や政府首脳部の承認を要すると述べ、米金融当局に対して、「米国にはその優位性はない。当局が利下げをしないからだ。当局は大きな誤りを犯し、私の言うことを聞かなかった。金利を大幅、かつ急速に上げすぎた」とし、「米国の金融当局はわれわれにとって、とても有害だ」と言い放っています。(ブルームバーグ)トランプ氏のFRB批判は今に始まったわけではありませんが、今回の発言内容には「有害」(Disruptive)といった言葉が含まれており、批判のボルテージを上げています。

今月28−29日に大阪で開催される「G20」は、上述のように、米中首脳会談が行われる予定ですが、まず実施されるのかどうかという点と、その内容に世界の注目が集まります。仮に会談が持たれない場合には、中国からの全輸入品に対して25%の関税、あるいはそれ以上の関税がかかることになります。先週末のメキシコとの例もあり、直前に回避されることも無いとは言えませんが、厳しい状況であることに変わりはありません。IMFは先週、米中貿易戦争が激化した場合、「2020年の世界経済は0.5ポイント、中国は1.0ポイント、米国でも0.2ポイント成長が下押しされる」との試算を発表しています。

このような状況の中でも、ドル円は108円台での推移です。107円台後半が底堅く、米長期金利の低下にもそれほど円高が進まないのは、急騰している米国株の影響によるものと機関投資家を中心に「外もの」への投資が高水準であることが要因だと考えています。ただそれにも限界があろうかと思います。その前に米中貿易戦争に収束する気配が見られることが望まれます。

本日のドル円は107円80銭〜108円60銭程度を予想します。

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時     発言者     内容   市場への影響   
5/5 トランプ・米大統領 中国との通商協議は続いているが、進展があまりに遅い。中国側が再交渉を企てている。ノー。10%の(関税)は金曜日(10日)に25%にあがるだろう。 ドル円111円台前半から110円29銭まで急落。
5/7 中国「環球時報」 「中国は協議の一時的な中断を含めて、他に想定される結果に十分備えている」 ドル円の下落を加速させ、株価は下落。
5/7 クラリダFRB副議長 (当局による利下げは)「現時点でその状況にあるとは考えていない。どちらの方向にも金利を動かす強い論拠は見られない」 --------
5/8 トランプ・米大統領 「中国の劉鶴副首相が取引をするため米国にやってくる。様子を見ているが、年1千億ドル超の関税が米国の金庫に入ってくるのにとても満足している」 --------
5/11 トランプ・米大統領 (中国は)「今、行動することが賢明だろう。最近の交渉で中国は手ひどく打ちのめされたので、次の選挙まで待った方が良さそうだと感じていると思う。だが唯一の問題は私が勝利するであろうことを彼らが知っていることだ」 --------
5/20 ブラード・セントルイス連銀総裁 PCEコア指数が前年同月比1.6%上昇という状況について、「この状況が長引くようであれば、利下げ、インフレ期待の中心を再び2%にするよう私はFOMCでより強く主張する」 --------
5/20 張明EU大使 中国には自国の正当な権利と利益を守るための揺るぎない決意がある。米国が闘うというなら、われわれは最後までそれに付き合い、真剣に闘う。言い換えるなら、ボールは米側のコートにある。 --------
5/20 ロウ・オーストラリア準備銀行総裁 雇用をより促進するため、来月の会合で政策金利引き上げの検討を行う。低いキャッシュレートは雇用の伸びを後押しし、インフレが目標と合致するタイミングを早める。 豪ドル円76銭台前半 → 75円80銭前後まで下落。
5/23 人民日報 1年余りにわたり米国は「乱暴者」のように振舞ってきた。関税を振りかざし、貿易戦争をあおり、ルールに基づく多国間貿易システムを攻撃した。大型関税を課すことで米国は自らのコミットメントとWTOルールを無視し、国際ルールより一方的な利益を意図的に優先させた。 ドル円110円台から109円46銭まで急落。株価も大幅安となり、長期金利は2.3%台を割り込む。
5/27 トランプ・米大統領 貿易に関して、われわれは恐らく8月に両国にとって非常に好ましい何かを発表するだろう。日本の対米ビジネスは米国の対日ビジネスよりがはるかに多いため、われわれは少し巻き返す必要がある。われわれは逆に対日ビジネスを増やしたい。 --------
5/29 人民日報 米国は貿易戦争で中国が応酬する能力を過小評価すべきでない。 ドル円109円15銭近辺まで円高が進む。米国株は連日の大幅安。
5/29 クラリダFRB副議長 イールドカーブに注目している。最近のフラット化の大部分は世界の金融情勢が原因であり、FEDが政策を検討する際、重要な意味を持つ。 ドル円下落。債券は買われ、株価のも上昇。
5/30 トランプ・米大統領 メキシコが米国への不法移民流入を止めるまで同国からの輸入品に5%の関税を課す。 ドル円109円台を割り込み、日経平均株価は300円以上の下落。
6/2 中国国防相 対話したいならドアは開いている。戦いたいなら戦う。準備はできている。 --------
6/2 王受分中国商務次官 米中貿易協議の中断について米国に全責任がある。今後いかなる議論も誠実さと相互尊重、平等を基礎におく必要がある。全てが合意されるまで、何も合意はない。 --------
6/3 ブラード・セントルイス連銀総裁 インフレ率とインフレ期待を目標に近づけるのを助け、予想より急激な景気減速に備えた保険を確保するためにも、政策金利に下方向の調整を加えることは近く正当化される可能性がある。貿易の抑制が米経済に直接及ぼす影響は比較的小さいが、世界の金融市場を通じて広がる影響はより大きくなる可能性がある。 ドル円108円台前半から107円台後半に。
6/4 パウエルFRB議長 これまでと同様、景気拡大を維持するためわれわれは適切な行動を取る。労働市場は力強く、インフレ率は当局の対称的な2%の目標付近にある。 NYダウが512ドル急騰するなど、米国株はほぼ前面高の展開に。
6/4 エバンス・シカゴ連銀総裁 インフレがやや低めのため必要に応じて政策を調整する余地はあるが、経済のファンダメンタルズは引き続き底堅い。個人消費も底堅い。これが実際に何を意味するのかわれわれは熟慮する必要がある。 --------
6/5 カプラン・ダラス連銀総裁 (政策金利を引き下げるという)その判断を下すには時期尚早だ。 --------
6/6 ドラギ・ECB総裁 最新の経済指標は世界的な向かい風がユーロ圏経済の見通しを圧迫していることを示している。理事会は不測の事態には行動し、あらゆる措置を取る準備ができている。 --------
6/10 トランプ大統領 中国の習近平国家主席がG20での会談に応じない場合、中国からの輸入品3000億ドル(約32兆5000億円)に対して直ちに25%の関税を課す可能性がある。 --------
6/10 トランプ大統領 当局は大きな誤りを犯し、私の言うことを聞かなかった。金利を大幅、かつ急速に上げすぎた。米国の金融当局はわれわれにとって、とても有害だ。 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和